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穿たれた心

一回くらいヘタレたっていいじゃん!心は人間なんだもの…

僕は一人江流弩荘の屋根の上に寝転がっていた。青い空を見つめ、自分に突きつけられた現実というものを思い知っていた。あのときの傷は、自分でも気持ちが悪くなるくらい早く治った。全治1週間ほど。病院の医者がなにか気持ちの悪いものを見るような目で見てきた。吐き気がする。



「くそっ!!」



やり場のないフラストレーションは声にすべて乗せて空へと吐き出した。その声とともに火花が空へと向かって飛んでいく。その火花は線香花火のように儚く、空へと消えていった。強まっていく力とともに自分が化け物という現実を突きつけられる。少し前に偉そうにヒイロに説教した自分が恥ずかしくなった。黒歴史がどんどんうず高く積まれていく。



これでは三下雑魚となんら変わりは無い





「(ふぁ~あよく寝た!)」



「?!」




頭の中に響く声。今一番聞きたくない声だった。



「(よう相棒。どうだ?自分が正真正銘のクソッタレにとり憑かれた気分はよ?)」



「うせやがれ、一人になりたい気分なんだよ」



「(ほー、まぁどうしようもないってことくらいは馬鹿でもわかるか。くきひゃははは!!俺とお前は一心同体だー!!なんてな!)」



「やめろ、腐った連中が寄ってくるぞ。いろんな意味で」



「(くきひゃははは!ずいぶんと余裕だな!いつ俺がお前の体を乗っ取ってもおかしくないってんのによ?)」



「……あのとき僕は殺されなければならなかったんだ。どうしてあいつらは僕を生かしたんだろうか。ソロモンも…僕が気絶している間ならいつでも殺せたはずなのに」



「(…あーーーもう!!辛気臭せーーな!!お前があいつらに必要とされてるからあいつらはお前を生かしたんだろうが!!…ったく、俺の株が無駄に上昇しちまうじゃねぇか!!


お前がヘタレたら俺が迷惑なんだよ!!龍化者の能力はメンタル面に強く影響してるって自分なりに考察立ててたじゃねぇか)」



「ヘタレは生き残れないってか」



僕のそんな様子にあきれたのか、こんなことをほざく。



「(なんなら俺がしばらく変わってやろうか?)」



「……………結構だ。だが、いつでも乗っ取れるというならなぜそれをお前はしないんだ?いつでも乗っ取れるんじゃないのか?」



「(お前が弱ってるときが一番乗っ取りやすいんだよ)」



「あ、そ」



強くなりたい。龍さえも蹂躙できるほどに。なぜ?そういやなんで僕は強くなりたいんだろうか?守るべきものも、誇りも、何もない。強くなってどうするんだ?襲い掛かってくる同族やソロモンのような自分たちを疎ましく思う連中たちをを片っ端からぶち殺していくため?…おそらくそうなのだろう



江流弩荘の皆は……いってみればいつでも切り捨てられる。ほんの一時の、心の休息と思えばいい。化け物と人間は生来相容れぬもの。誰にも迷惑をかけずに、どこかで一人で暮らせばいい。いつかこの化け物を淘汰できるようになる、その時まで



「(冷徹な考えだねぇ…まぁ俺はお前が死なないでくれればまったくモウマンタイなんだがな)」



「そうだな…家出すっか」




龍は彼の決断に半ば呆れ、半ば言いようのない寂しさを感じていた。




「(ニンゲンってのは…脆いもんだねぇ…)」










「りゅーとさーん、今日の晩御飯は~ってあれ?」



今の大きな机の上に一枚のメモ。見慣れない、ちょっと汚い文字だ。誰のメモだろうか?



(ちょっと用事で出てきます。しばらく家を空けるので後のことはお願いします 龍斗)



「何の用事だろ?まぁいっか、今日は誰が当番だっけ…(しばらく家を空けます)……ってえええーーーーーー!!!!」




大家さんの絶叫が江流弩荘に響き渡った。その夜、緊急のミーティングが開かれる。そこで彼女たちは気づくのだろうか。彼の、自分たちが思っているよりずっと弱かった、赤羽龍斗の孤独なる決断に




やっぱこうなるでしょ、自分が化け物になったって言うんだったらww



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