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業火の覚醒

「龍殺しが動いています」


「たかが人間風情に私たちの龍化者は敗れはしまい。ましてや私直々に調整した男だ。魂も残さず粉々にされるだろう」


「(どこまでも下衆な奴だ…)」

僕は主に接近戦で戦う。対するソロモンは遠距離だ。無理やりにでも接近戦に持ち込めばいいのだろうが、相手もそう簡単に接近を許してはくれない。ささすが無駄に年くったおっさんだけはある。砂を蹴り上げて目晦ましをしようとするが、瞬間移動で避けられる。移動先さえ見破れればいいのだが…



「失礼なことを思ったようだな…私はまだ20代だ!!」



「知るか。それを知ったところで何だってんだよ」



「年上に対する礼儀というものを教えてやるとしようか!!」



「その年上が年不相応のことしかやってこないのでお前は僕に年上と認識されてない」



「おぉのれぇぇえええ!!」



読心術まで身に付けているか。まったく、面倒くさいったらありゃしない。茶倉しかり、卑怯だろ。速さに身を任せ、パンチを打ち込むが、近接対策としてカウンターも上手いようだ。合気道に通ずるものがある。相手の攻撃を受け流し、なおかつその力を利用して自分の攻撃を叩き込む。銃の底の部分で首の後ろをぶっ叩かれる。危うく意識が飛びそうになった。それでも意識が飛ばないのは龍の丈夫さのおかげだろうか。





精錬された技、戦闘経験、圧倒的に僕が不利ということに変わりはなかった。




「青年よ、もうあきらめろ!もうお前の身体は限界を超えて動いているはずだ!喩え私を打ち倒したとしても、その身体ではもうもたん!」



「……ゲホッ…分かってんだよ…それくらい分かってんだよ…それでも…おっさんみたいな不憫なやつと戦って全力以上の力を出さないとか失礼だろ?ここで止めたらおっさんに対して失礼だろ…ここまでせっかく戦ったのに…!」



薄々感じていた。こいつは純粋なる悪党の類ではない。自分から必要悪へと姿を変えざるをえなかった不幸な男なのだ。







体内の気の巡りが悪くなってきた。枯渇寸前、ましてや制御さえ危うくなってくる。龍の怒りを放とうと拳に気を込めたら、手が焼けるように痛んだ。



「ぐああぁぁぁぁ?!!!?」



痛みが拳だけでなく、身体中に広がり、駆け巡る。痛い。逃げたい。死にたい。この苦しみから逃れられるのなら死んでもいいと思ったそのとき。













「(そいつは困るな)」



?!



「(お前に死なれたら俺が生きれねぇ。甘えなんか捨てちまえ、後は俺が片付けてやる)」



やめろ!お呼びじゃねぇ!



「(お呼びじゃねぇのはテメェなんだよ!くきひゃははははは!!!)」







ソロモンは感じた。青年の雰囲気が変わるのを。多重人格者がもうひとつの人格を覚醒させたときのように。そこに佇んでいたのは先ほどの青年ではなかった。ゆっくりと顔を上げた青年の顔には狂気の笑顔が浮かんでいた



「さ~あ始めようぜおっさん…第2ラウンドってやつだ…モノホンの龍の力ってもんを見せてやるよ」

















「龍が目覚めたか?!」



ソロモンの考える最悪の出来事が起きてしまった。龍の覚醒である






「やっぱ実体があるってのはいいもんだよなぁ…そうはおもわねぇか?おっさんよぉ?くきひゃはははは!!」



龍化者は深層意識にもう一つの人格を形成することが多い。それは己の体に宿った龍そのものであり、力の使い方は彼らのほうがよく解っている。精神が弱いものはそのまま体をのっとられ、代わりに龍がその体を支配することとなる。青年も乗っ取られてしまったか…



「まぁ俺もここで殺される気なんかねぇしな。悪いがとっとと死んでくれや」



スピードは上がっていない。ソロモンが十分に反応できる速度だ。とはいっても常人には目で追えない速度なのだが。一つ違うのが、振り上げられたその拳に炎が燃え上がっていたこと。その拳がソロモンの銃の銃身をひしゃげさせ、その体に食い込んだ



「ぐぉおおぉ?!?!」



すさまじい勢いで砂山に叩きつけられる。今の一撃で愛用の銃一丁が駄目になってしまった。事前に用意していた対龍化者用の耐火霊装がなければ蒸発していただろう。




炎獄拳ナパームナックルだ。技名を考えるのもめんどくさいよなぁ!」



ふわりと宙に浮いた青年の両の拳から尋常ではない温度の炎がメラメラと燃え盛っている。どのくらい尋常ではないかというと、青年の真下に当たる部分の地面がその温度で溶解し、溶岩溜りを作るほどに。青年の着ていた服の袖の部分が燃えてなくなってしまっていた



「(ここまで差があると嫌になってしまうな…)」



龍に呑まれた相手とは幾度となく戦ってきた。そのどれもが力に呑まれ、自分の体を自ら滅ぼしていくのがほとんどだった。だが解る。こいつは今までのものとレベルが違いすぎるのだ。



「俺をその辺の低俗なトカゲどもと一緒にしてもらっちゃ困る。俺の炎はゼッ○ン並だ。さすがに地球を蒸発させる気はねぇけど」



冗談を言えるほど余裕らしい。まったく。私も不幸な星の元に産まれたものだ。

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