特務機関・龍殺し
いよいよそれっぽい戦闘シーンに挑戦するよ!!マジでアドバイスが欲しいですハイ
公園にその男はいた。全身黒いコートに黒い帽子、サングラス。この時代にこんな格好。必然的に注目の的になる。だが男はそれをなんとも思っていないらしい。しばらくその辺を歩き、公園のベンチを見つけ、腰掛けると、帽子を脱いでこう一言。
「クッソあちぃなぁ~~…何でこうも暑いんだよ…」
お前のその格好のせいだ。帽子を団扇のように扇いでいる。晴天、その格好では体感温度は炎天下にもなるだろう。倒れたりしないよな?そのとき、男の懐から携帯電話の着信音4が流れ出す。めんどくさそうな様子で電話にでる男。いくつかの言葉を交わし、携帯を切る
「さ~て、お仕事お仕事」
再び帽子を被り、携帯をしまい、ゆっくりと立ち上がる。気だるさそうに彼は手元のメモに目を通す。
「いけ好かないねぇ…自分でも思うよ。なぁんでこんなとこに所属してんだろうなぁ…とっとと自由の身になりたいもんだ」
サングラスの奥に虚無感を滲ませながら、男は立ち去った。
最近茶倉の僕に対する態度がおかしい。絡み方に力技が混ぜられ始めている。いきなり後ろから背中に思い切りビンタとか、ドロップキックとか、クロスチョップとか。それのせいで僕の感覚は人よりかなり研ぎ澄まされたと思う。
後ろに誰がいるか分かるようになってしまった。普通の人なら死んでるような一撃を執拗に放ってくるのだから、僕だって対応しなければならないだろう。今現在も僕の後ろに茶倉の気配。
「喰らえ龍斗!!雷パンチ!!」
「スィーツ!!(甘い)!」
振り向き、カウンターでも食らわせてやろうかと思ったが、予想以上に茶倉の動きが速く、構えをとる前に懐に飛び込んできた!右パンチだったので左にサイドステップで横に回避!!
「ちょっと待てそっちは…ぶっ!!」
「ぐほぉ?!」
雷パンチは回避できた。だがその後迫ってきた茶倉の頭が僕のどてっぱらに直撃する。一瞬中身が出てしまいそうになった。そして勢いを殺しきれず、茶倉が僕を押し倒す形で床に倒れこむ。
「いって…」
「むぐ…?!?!?!?!////////////」
今茶倉は僕の腹に顔をうずめるような感じの状態。顔を上げたと思うといきなり顔を真っ赤にして無言でどこかに走り去って行ってしまった。
「って……自分からぶつかってきといてなんなんだよ…」
この江流弩荘に来て数ヶ月。女性に対する耐性がついてきたので、あれくらいの接触など日常茶飯事なのだが、茶倉にとっては大層刺激的だったらい。ちょっといい気味。
ピンポーン
玄関からチャイムの音。誰か訪ねてきたらしい、誰だろうか?
「はいは~い」
とりあえず引き戸を開ける。
「こんにちは、赤羽龍斗くん。君と戦いに来た」
「失礼、間違えました」
「ち、ちょっとまちんしゃいよ!!訪ねて来たのこっちだよ?!若干引いたような目で見ながら引き戸閉めないでよ!!」
「やだなぁ…若干じゃなくてドン引きしながら、ですよ」
「なんだ…なお酷いわ!!…ごほん!私の名はソロモン。特務機関、龍殺し(ドラゴンキラー)の万年係長だ。以後、お見知りおきを」
「そうかそれではさようなら」
「おおっとぉそうはい神無月!!」
よく押し売り勧誘員がするような、ドアの間に足を挟んでドアを閉めるのを阻止するやつだ。まじで鬱陶しい。
「寒っ…何そのギャグ流行ると思ってんすか…?」
「君初対面の大人に失礼すぎるだろ!!話が進まないじゃないか!!」
ここは街から少し離れたところにある荒地。元は山だったのだが、ゴルフ場を作るためにとある会社が山ひとつをつぶした。その直後その会社は倒産、今となっては大きい岩や砂利が散乱しているだけの荒地である。
「あんたらの目的はおそらく僕、そうだろう?」
「そうだ。私達龍殺しは君たち龍化者の観察、および管理をしている。龍殺しには龍化者リストなるものがあってな。その中でも君はかなり有名だ。業火竜・赤羽」
「まったく嬉しくないね。人間の考えそうなことだ。姿は似ていても本質は違うとか言って自分と違うものを滅ぼそうとする」
「事実、私達の先祖であるホモ・サピエンスは他の類人猿を滅ぼしながら生き残ったわけだしな。まぁご察しの通り、私達は君を危険視している。何のいわれもないわけではあるまい?君は少々特殊らしいからな」
僕の暴走のことを言っているのだろうか。確かに、今まで暴走したのは僕と茶倉だけだが…
「まさか茶倉も標的にされているのか?」
「いや、今回の任務は君の討伐、茶倉光はターゲットには入っていはいない」
「ならいい。僕が死ぬとあの荘の住民は飢え死にしてしまうからね、嫌でも生きなきゃいけないから全力で抵抗させてもらうよ?」
「いい覚悟だ、少年。では行くぞ」
コートの中に手を突っ込み、背中から二つの銃を取り出した謎の男。僕も戦闘形態に姿を変える
「龍の怒り(アンガー・オブ・ドラゴン)!!」
連続で拳を突き出し、殺気の砲弾を打ち出す。出力調整というものをできるようになったので、低威力ながら連射が出来るように僕はなっていた。
「やるな、青年よ!だがまだ甘い!」
二つの銃から閃光が走る。殺気の塊と銃から吐き出された鉛の玉が空中で衝突する。狙い通りだ。衝突した瞬間に軽い爆発が起きるように気を込めたので、その爆発によって土が舞い上がり、僕と相手の姿を隠す。
「煙幕か?!」
「龍の吐息!!」
僕の口から吐き出された吐息が空気に触れた瞬間凄まじい温度で発火する。男の周りに炎を展開し、殺さないようにする。こんなときでも僕は他者を殺めたりはしない。殺めてしまえば、僕の中の龍が喜んでしまうから。こいつの喜ぶことはしたくない。
「ソロモン72柱・ゲアブ!わが身体を他所へ!!」
炎の中に揺らめいていた男の影が一瞬にして消えた。
「なっ?!」
「なかなかの腕だな青年よ。だが殺さずして私を倒そうなどと思わないことだ」
僕の背後にその男はいた。二つある銃のうち、金の銃をまっすぐ、僕の頭に向けて。格が違う。
「おとなしく殺されてくれ、青年よ。君が死ねば当分の間世界は均衡を保てるのだ。君の大切な人も平穏に過ごすことが出来るのだぞ?」
「成る程。貴様はこうやって何人の人間を殺してきた?その不快に甘い言動で、一体何人の心を惑わせて、撃ち殺してきたんだ?!」
「嫌な質問だな。本来ならば闇討ちで君は殺される予定だった。だが闇討ちなど人間のすることではない。だから私が直々に君を抹殺しに来たんだ」
「それは貴様の恐れだろう?」
「なに?」
「人殺しである自分が唯一できる贖罪だとか勝手な解釈を付けて、自分に逃げ道を作ってんだろうが。人を殺した時点でもう貴様は下種以下に成り下がってんだ。それを認めたくないだけだろうが」
「貴様…!!」
「龍気迫・天地鳴動」
人を脅すときに使ったようなチャチなレベルではない、禍々しいオーラを展開する。大地が震え、大気が恐れおののき、空さえ僕の存在を恐れているようだった。
「始めるぞソロモン。ここからが本番だ」
拳を構える。拳の棘がかつてないほど熱い。
「業火の拳!!」
自分の身体能力の限界まで力を使い接近、男に力の有らん限りをぶつける。
「なめるなよ!」
流石特務機関とか言うところから来た男、大きく身体をそらせて僕渾身のアッパーを回避した。そのまま後ろへ新体操の選手よろしくクルクルとバックステップ。
「爆裂する龍燐!!」
拳を勢いよく横に振り、拳の頭の棘を投げつける。軽い投擲ナイフだが、とっておきの隠し技でもある
「当たらん!!その程度ではな!」
2丁の金の銃と銀の銃から大量の鉛玉を吐き出させ、龍燐を撃墜するソロモン。掛かった
ドカァァァァァァン!!
「ぬぉぉ?!」
少しの刺激で大爆発を起こす龍燐。僕の今現在最強の技。
「72柱・ゲアブ!!」
さっきの瞬間移動か。これは厄介だ。
「思ったより楽しめそうだな、青年よ。だが私も負けられぬのだ。存分に語り合おうではないか!!どちらが相手のエゴを上回るか!」
「「行くぞ!!」」