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忍ぶどころかやっかいに

「龍化者の男女比率が圧倒的に女性に多いのはあなたの仕業ですか?」


「な…なんのことかねぇ…」


異空間に若干不穏な空気が漂う。

「どれにしろ今日ここで新たな同士が見つかったというのは決してマイナスではない。むしろいいことだ。人脈はどれだけあっても困らないかなね」


「早い話、うれしかったんですよね?もう少し言い方というものを考えたほうがいいかと思いますよ」


「俗に言うツンデレーション、ということかwww」


「今日のご飯は麻婆豆腐だったんだが、少し買いすぎてしまってな。もう一人分くらいの余裕があったんだが、そうか。それは別の人の胃袋に収まることになりそうだね?堺人?」



「マジすんませんでした本気で誤りますからご馳走してくれるとうれしいですハイ」


プライドもへったくれもない混じりっ気なしのガチ土下座。本当に悪いやつではないらしい。それにちょっとホッとしつつ、また今日もキッチンという戦場へ向かう。





キッチンで調理していると、外からぽつぽつという音がする。そういえば居間にいたときもゴロゴロといっていたし、今夜辺りは激しい雨でも降るのだろうか。停電にならないといいけど。と思った数秒後、ドジャーーー!!!と文字通りバケツをひっくり返したような大雨。局地的豪雨という言葉がよく似合う。ゲリラ豪雨、でもいいかもしれない。


更にドンガラガッシャーーーン!!という凄まじい音。近くに雷でも落ちたのだろうか。一瞬部屋の電気が消え、数秒後に復帰した。




僕もちょっとびっくりしてしまったが、居間のほうできゃーー!!という悲鳴と共にバキィ!!という誰かが殴られたような音。堺人がどさくさにまぎれてセクハラでもしたのだろうか。


調理もひと段落し、少し煮込む工程に移行したとき、ガラガラと玄関の引戸が開けられる音がした。火の用心。コンロの火を消してから、風呂場からタオルを取ってきて出迎えに行く。午前中晴れてたし、住民のほとんどは傘持って行っていないはず。風呂の準備は万端だ。




「おかえりなさ~い…ってその人は?マイナさん?」


玄関に立っていたのはずぶ濡れになったマイナさんと謎の少女。マイナさんの背中におんぶされる形である。苦しそうな息遣いが聞こえてくる。見るからに調子が悪そうだ。


「この娘ね。その辺で倒れてたのよ。早急に手当てが必要ね。手伝ってくれる?龍斗サン」


「心得た。ずぶ濡れになって帰ってくるかもしれなかったから、風呂も入れておいた。先にそっちに入ってもらうか?」


「そうね、私が付き添うから。他に誰か女の子はいるの?」


「ヒイロがいるな」


「じゃあヒイロちゃんの服を貸してもらって、なんか後温まる消化のよい美味しいもの、お願いできる?」


「問題ない。行動開始!」キリッ


「まずはそのタオルを貸してもらえるかしら?」


「ああ、ゴメンゴメン…」









江瑠弩荘2階の廊下・ヒイロの部屋の前




「ハイ、私の服です。…大丈夫でしょうか、その娘…」


「大丈夫だ。さっき風呂の前を通りがかったとき、なにか会話しているようだったよ。それくらいの体力は戻ったんだろう」


「まさか…龍斗サン…」


「ちがう。断じて違う」


「ふぅん…そうならいいんですけどぉ…?」


「さて、そろそろ冷凍うどんが解凍できてるころだろ。…卵は溶いたほうがいいか…割りいれたほうがいいのか…」


「溶き卵のほうがいいと思いますよ。うどんにも絡まりやすそうですし」


「分かった。お前らの飯はもうちょっと待ってくれな」


「はいは~い」


そのとき僕は知らなかったんだ。こんな結末を導くことになろうとは。もし過去の僕に対面して会話が出来るというなら…全力で…


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