悪夢のプレゼント
ラグナロクの在庫が少なくなってきたので、前に書き溜めといた物を投稿します
シリアスな前書きですが、実はそうでもなかったりしますww
ドラゴノイド 龍化病
僕の名前は赤羽龍斗。孤児。18歳である。少し前まで孤児院に居たが、18歳の誕生日をきっかけに施設を卒業した。いや、せざるを得なかった・・・というべきかな?そして今の僕はといえば・・・
「りゅーとさーん、ごはーんごーはーんー!!」
・・現在とある荘にてハウスキーパー、家政夫として働いている。まぁ、ここまできたのは一言では語りつくせない、本当に色々あって、色々あったんだけれど・・・
もうちょっと待ってて、飢えたあいつらのの昼ご飯、作っとかないとね。
え~っと、どこまで話したっけ・・・そうそう、施設を卒業直前からだったかな?
そして今更だけど伝えておかないといけないことがあるんだ。
僕は普通の人間ではない。
頭に角、背中に羽、皮膚の一部には鱗が付いてる。そして圧倒的なまでに強い力、つまり怪力。竜人、ドラゴノイド。
18歳の誕生日にその悪夢のプレゼントは届いた。
「龍ちゃんももう卒業間近ねぇ・・・おばちゃん寂しいわ~施設出てもおばちゃんのこと忘れんといてな」
「はい、おばさんのことはいつまでも忘れませんよ。」
やわらかい笑顔(と、本人はそう思っている)に建前の笑顔で答える。結局のところ・・・ウソである。この手のおばさんは下手に反抗すると納豆のネバネバ並みにうっとうしい。
ここは自己流・世渡り術で乗り切る。また他のおばさんたちに絡まれないうちに自室へと帰り、大きなヘッドフォンをつけ、携帯に接続し、音楽を流す。
ちなみに携帯とヘッドフォンはなけなしのバイト代をはたいて買ったものである。好きな時間だった。暮れなずむ町を窓から眺めながらゆっくりと音楽に耳を傾け、たそがれる。心が落ち着く時間だった。
(聴いているのはマ○シマム○ホル○ンだったりする。)
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ふと目を覚ます。寝てしまっていたらしい。もうすっかり暗くなり、肌寒い。窓を閉め、食堂へ行こうとしたその瞬間、悪夢が始まった。
激痛。耐え難いほどの激痛。そのときは喩えようもなかったけれど、いまならわかる。頭と背中を重点的に(?)、全身に赤くなるまで熱した鉄の剣を突き刺され、そのままえぐられている様な痛みが走った。
しかし下手に騒いで面倒なことになるのはごめんだ。ベッドにある枕を噛んで必死に声を殺した。なぜか確信があった、絶対にこの痛みでは死なないという奇妙な確信が脳裏に浮かんだからだ。そうしてまた僕は意識を失った。
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音がする。チュンチュンというわかりやすい朝が来たという知らせだ。どうやらそのまま眠ってしまったらしい。本能的にかどうかはわからないが、ベッドの上にあったはずの毛布をかぶっていた。肌寒い。
激痛の余韻は全くなく、むしろ普段より体が軽く感じた。ゆっくりと起きだす。違和感を覚えた。毛布が一向にずり落ちない。何かに引っかかっているようだ。ふと後頭部に触れてみる。
本当なら髪の毛に触れたはずだが、そこに生えていたのは髪の毛では無かった。代わりにもっと硬いものに手が触れた。
骨ばった、カルシウム質の、硬い、紛れもない角。真っ直ぐには伸びておらず、喩えていうなら波線(~)のように曲がりくねっている。十センチほどの角。
愕然とした。反射的に顔に手を触れる。ふと手を見ると鱗が付いていた。魚のような薄いものではなく、爬虫類を彷彿させる硬いしっかりした鱗。
手首から拳の頭にかけてびっしりと。うっすら赤いその鱗は朝日に照らされて桜色に輝いた。部屋に備え付けの大きめの鏡の前に立つ。少し離れれば全身が写るほどの大きさの鏡だ。
愕然二回目。シャツを突き破って、僕の背中には大きなコウモリのような翼が、まるで最初からそこにあったかのように、生えていたのである。
信じられない。それはそうだろう。いきなり何の脈絡もなくこんなことになれば誰だって気が動転するだろう。しかし不思議と僕の心は落ち着いていた。
ああやっぱこうなったか、という諦めにも似た感情を覚えていた。激痛を味わっていたとき、絶対に自分は死なないと感じていたときのように。
数十分後、気分を落ち着かせるため歯磨きの後のモーニングカフェオレ(最近のマイブームである)を飲み、ストックしておいた菓子パンを胃袋に流し込む。
そして少し早いが、施設を抜けることにした。この姿を誰にも見られてはいけない、というのがこういう話のセオリーだろう。幸いにも早朝で誰も起きてはいないようだ。
ふとある考えが浮かんだ。
今までお世話になったベッドに歩み寄り、普段ならできないということが解っているにもかかわらず、片手でベッドの端をつかみ、持ち上げてみた。
持ち上がった。簡単に。まるで爪楊枝を持つかのごとく、敷布団もろもろあわせて重量およそ百キロの鉄製のベッドが簡単に持ち上がった。ここ最近掃除していなかったツケの埃が舞う。
これほどの力なら、背中の翼を使って飛べるだろうか。翼に力をこめてみる。多少ぎこちないが、翼は力強く羽ばたいた。よし、いける。荷物をボストンバッグに詰める。
大して持っていくものは無かったのが幸いだった。少し迷ったのがゲームである。持っていって売却して生活費にでもしようかと思ったが、未成年がゲームを売るのは色々面倒なことが起きるので(保護者の確認とか)放置しておく。さよなら、僕のP○2。
冬も近くなり、最近開けることの無かった窓を全開にする。ボストンバッグを一応念のためベルトで自分の体と固定し、申し訳程度の足場に乗り出す。僕の部屋は3階だ。転落防止用の策を乗り越え、15センチに満たない足場に出る。
こういうときというのはカッコいい言い回しを言いながら飛び立つのもいいだろう。今僕を厨二病とか思ったやつ、前出ろ、前だ。
次の瞬間、僕は翼を広げて自由の空に飛び立った。
・・・・・寒い。空を飛ぶことがこんなに寒いと思わなかった。余り喋らず、物静かで冷静沈着で頭が切れると思われがちな僕だが、(あくまで他人の評価である)意外と向こう見ずでドジも多い。他人からよく「天然なんだな」とよく言われる。心外だ。
落ちそうになったら羽ばたき、ある程度上昇するとグライダーのように滑空する。やはり菓子パンだけではそうそう力は出ない。飛び始めて数十キロの地点で公園を見つけた。そこに下りることにする。
今気づいたが視力も尋常じゃなく上がっているらしい。上空四~五十メートルからアリがえさを運ぼうと奮闘する様子がはっきり見えた。そして周りに誰もいないかを確かめ、僕は公園の真ん中あたりに降り立った。次の瞬間、僕の運命の歯車が大きく動き出した。
「あ・・あの・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」
中に入れるテントウムシの形の遊具の中から少女が出てきた。ボストンバッグに付けていたキーホルダーが揺れる。盲点だった。こんな早朝に遊具の中に少女がいないとも限らないじゃないか・・・
いや、まずありえないだろ、落ち着け、これは僕が寝ぼけて見ている幻覚だ・・・つまらない現実逃避に僕が混乱していると少女が口を開いた。
「失礼を承知で聞きます、・・」
ああ、終わった・・・僕の人生・・これから僕は珍獣として売られ、世界中で引っ張りまわされるのだろう・・・もしくはマッドサイエンティストに死ぬまで研究材料にされるか・・嫌だ・・・
「そのストラップください!!!」
・・・長い沈黙が辺りに流れた。
ゼノムといい、龍斗くんといい、小生の小説の主人公はツンデレばっかですねww