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しゃがみこんだままのハルキを私は部屋にいれた。

ハルキは黙ったまま部屋に入り、ベットにもたれて座る。

私は水をヤカンにいれてお湯をわかすことにした。

その間、私たちは言葉をかわすことはなかった。


お湯が沸き、私は自分とハルキの分の紅茶をいれ、テーブルに置いた。

ハルキはカップを持つことも、紅茶に口をつけることもなかった。

私はどうしていいかわからず、ハルキの向かいに座り黙ってカップを手にする。

どれくらい沈黙が続いたのかわからないが、最初に言葉を発したのはハルキだった。

「いつから?」

何が?なんて聞かなくてもわかる。「長塚との関係が」だ。

「4ヵ月くらい前から…」

私が答えるとハルキは再び黙った。


『ごめんなさい』


思わず言いそうになったけど、きっとハルキは何が?って聞いてくるから…。それに答えることが私にはできないから、私はそのまま黙ってカップを見続けた。

「あいつのこと、本気で好きなのか…?」

私は返事に困った。

好きか嫌いかって聞かれたら好きに決まってる。

でも、『本気か?』って言われるとわからない。

それに、もし、私が本気だったとしてもそれはいけないことだから…

お互い本気じゃないから…、本気の恋愛にしてはダメな関係だから…


「俺はさ…」

私が返事に戸惑っているとハルキは呟くように言葉を発した。

「お前は本気なんだと思う…。」

ハルキの言葉に私は驚いた。

「え…?」

泣きそうになるのをこらえてそれだけ言うとハルキはそのまま話を続ける。

「ずっとお前と一緒にいるからさ、俺はそう思うんだよな。お前は本気じゃないと、付き合ったりしないって…」

「本気じゃない!!」

私は思わず大声を出して怒鳴った。

「本気なわけないじゃん…、そんなわけな…い…」

気付くと私は泣いていた。

「そっか…」

ハルキは何かを悟ったように言う。

私はハルキの目を見てうなずいた。

(本気なんかじゃない…)

ハルキは寂しそうに笑い私の頭に手を置く。

「菜々穂、俺はさ…別れろもがんばれも言ってやれない。言う権利ないからな。」

ハルキは私の目をまっすぐ見て言う。

「でもさ、幼馴染みとしてこれだけは言わせろ。」

私は黙ってハルキを見る。

「自分の気持ちを誤魔化してまで自分を傷付つけるのだけはやめろ。」

「ハル…」

視界が歪んでハルキの顔がうまく見れない…

「俺はお前が幸せならいいよ。」

そう言ってハルキは笑ってくれた。

ハルキは何度も何度も私の頭をなでる。

少し乱暴だけど、それが暖かい。

ハルキはいつも暖かく私を見守ってくる。

優しいハルキ…


でも、ごめんね…

まだ自分を誤魔化させて…

そうしないと辛くなっちゃうから…

バカな幼馴染みで本当ごめんね…

そして

「ありがとう…」

私は声を振り絞ってそれだけ言う。




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