線香花火
「ハルキたちまちくたびれてないかな・・・?」
4限が終わりすぐに広場に行こうとおもってのだが、美晴が化粧を直したいと言い出し、トイレに行くことになった。そして15分後、今にいたる。
「美晴が時間かけるから~!!」
「何よ~!!塔子だって!!」
好きな人に会うためにおしゃれをする。
私も、長塚に会うときは服とか化粧とかがんばってたっけ・・・。
子供扱いされたくないから・・・。
でも、急に家に着たりするからそのままの格好で出たりして、いつのまにか頑張るのをやめた。
広場に着くとハルキたちがいた。
「ごめん、遅れた!!」
ハルキに手を合わせて謝るといつものように笑って許してくれる。
「どこ行く?いつものとこ?」
「いいんじゃない?なれたとこの方がおいしいもんとかわかるし。」
直樹が聞くと拓実が同意した。もちろんこちらも異論なし。
というわけで、学校から一駅離れた居酒屋に向かう。
「俺今日バイクだからそっちで行って先に予約しとくわ。」
そう言ってハルキはバイクを留めている場所に行った。
ちなみに車、バイク通学は禁止されている。
(ズルイ・・・)
二人には言ってないけど、拓実は塔子が、直樹は美晴が好きなのだ。
両想いの2カップルに中に置き去りにするなんて・・・
(ハルのバカ!!)
声に出して言いたいがみんながいるので心の中でハルキに文句を言う。
そして私たちは駅に向かった。
「でも、なんで急に飲み?」
美晴が直樹に聞くと、直樹と拓実は顔を合わせて笑う。
「ハルキの小説受賞と雑誌に載った祝いってとこかな?」
「あ、そうそう!!あれ何なの!?急に雑誌に載ってたりするから私びっくりしたよ!!」
飲みに行くことが嬉しくて忘れてただろう美晴が思い出し興奮をして言う。
「俺たちも今日まで知らなかったんだよね、アイツが小説とか書いてんの。ビックリだよ。」
拓実や直樹にもハルキが話していなかったことを知り、私は少し安堵した。
「菜々ちゃんは知ってた?」
拓実に聞かれ、私いは返事に戸惑った。
「知ってるに決まってるよ!だって、ハルキ君と菜々穂は幼馴染なんだもん♪」
美晴が笑顔で言うので私はまぁねっと笑って言った。
本当は最近知ったんだよ、ハルキが小説書くこと。
賞をとったこと。
雑誌のことはまだハルキから聞いてない。
他の人にハルキが言ってなかったのは嬉しい。きっと一番最初に教えてくれたのは私。
なのに寂しいって思っちゃうのはわがままだからかな・・・?
お店に着くとハルキがバイクにもたれて待っていた。
時刻は夕方の6時。店がちょうど開いたくらい。
早く来て予約する必要はなかったみたい。
「かなり待ったんじゃない?」
私が聞くとハルキは笑って否定する。
「ちょっと忘れ物取りに行ってたから平気。」
「そっか。」
特に気にもとめず私たちはそのまま店に入った。
「んじゃあ、ハルキの賞受賞を祝ってカンパーイ!!」
飲み物がみんなにいきわたり拓実が乾杯を仕切る。
「「カンパーイ♪」」
みんながそれぞれガラスをくっつけていくと、ハルキが不機嫌そうな声を出す。
「おい、お前ら俺を祝うなら少しは俺に気を使え。」
ハルキのグラスの中身だけソフトドリンクで、他のみんなはちゃっかりアルコールを頼んでいる。もちろん私も。
「仕方ねーだろ?お前バイクなんだから。」
「いや、だからそれならお前らもソフトドリンク頼めよ。」
「飲みに来て?ありえねーからそれ!!」
拓実や直樹といるときにハルキは楽しそうだった。今までずっとハルキの友達を見てきたけど、こんな楽しそうなハルキはなかなか見れなかった。
今さらだけど、いい友達もったねハルキ。
私が笑っていると塔子と美晴が嬉しそうに私を見ているのに気づいた。
「どうしたの?」
「やっと笑った。」
「へ?」
「なんか、ずーと元気なかったもん、菜々穂!!」
今日一日心配してくれていたんだ・・・
そう思うと嬉しくて私は思わす二人に抱きついた。
「ちょっ!!急になに??」
「二人とも大好き~!!」
「急になに言ってんの!?もう酔った??」
冷静に言う塔子。
「あはは、私も菜々穂すきすき~!!」
嬉しそうに笑いながら言う美晴。
二人とも私にとってかけがえのない友達。
ごめんね、大切なことを隠してて・・・
私たちを見ておもしろく思ったのか、直樹がハルキと拓実に抱きつく。
「俺もハルキや拓実すきだぞ!!」
「はっ!?まじキモイから!!」
そう言いながら拓実はまんざらでもない顔をしていた。
「そんなに好きならお前も俺と一緒にソフトドリンクにしろ!!」
ハルキが言うと直樹は抱きつくのを止めた。
「それとこれは別問題。」
そう言っておいしそうにお酒を飲む。
私たちは笑った。
ハルキはやけになりお酒を頼み、みんなで何度も乾杯した。
いったい何の祝いなのだか・・・
私は少し安心した。
ハルキは遠くないって思えたから。
今ここにいるハルキは、大きな賞をとって雑誌に載ったハルキじゃない。
ただの大学生で、私の幼馴染の男の子。
その後私たちは閉店ギリギリまでお店に居た。
時刻は午前1時。
なんだかまだ帰りたくなくて、私たちはコンビニで花火を買った。
迷惑にならないように住宅街をさけ、河原に行った。
花火の明かりがみんなを照らした。
色とりどりに光る花火。
笑ったみんなの顔。
誰かが言う
今、すっごい『青春』してない?
みんなうなずく。
20歳超えても青春って出来るものなんだ。
そう実感する。
最後はお約束で線香花火をする。
誰が最後まで残れるか対決する。
結果なんてどうでもいい。
線香花火がなくなるまで私たちは何度も続けた。