表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/20

伝わる想い

私はその場にうずくまった。

最後のページにまぁるい雫が落ちる。

それは…

「雪か…」

長塚はそう言って持っていた傘をさした。

私はただうずくまりハルキの本を胸に押し付ける。

「ハ…ル…」

ズルイよ…、こんなの…。

私、最初に読めなかったよ…

ごめん…

「ごめ…ん、ハル…」

私はそのときやっと涙を流すことができた。

ハルキの気持ちがわかって、ハルキの存在がどれほど大切だったかわかって…

「なが…つ…かさん、わたし…ハルが…好き…、大好き…」

長塚の方を見上げて言うと、長塚は苦笑していた。

「やっと気付いたか…」

あきれた口調、でも、長塚の目には小さく光るものがあった。

「ごめ……、ハル…。」

私が泣き続けると長塚は傘を置き、両腕を開いて私を見つめた。

『俺の胸で泣いていいよ』

長塚のやさしさ。

でも私は首を横にふる。

今私が会いたいのは、頼りたいのはハルキだけ…

なんで、なんでハルキは居ないの…


「ハル…、ハル…」


長塚はそっと私を立たせ、後ろを向く。

「背中くらい貸させろ…」

真っ黒な背中…。

ハルキを想って泣く私に向けられる優しさ…。


気付くと私は長塚の背中に顔を押し当てた…



ハルキ…

私は何度もハルキの名前を呼んだ。

心の中で、口に出して、何度も何度も…


でも、返ってくる言葉はない。

もう二度と私はハルキに名前を呼んでもらえない。


「逝か…な…いで…、ハル…。私、言ってな…い、好きって…、…ハル…好き…」

ハルキはズルイよ、自分だけ言って…

答えたかったよ、ハルキの気持ち…



ハルキの声で聞きたかったよ…


「バ…カ」



雪はその間、降り続けた…






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ