届く想い
『セツナイ想い』
一条 ハルキ著
ハルキの名前…。
私は次のページを開いた。そして目に飛び込んだのは…
『これを最初に渡す愛しい君へ』
「ハ…ル…」
『お前に1番にやるから』
ハルキはそう言った。一番にくれるって、私に一番にくれるって。
愛しい君
それがハルキの気持ち…?
私は長塚を見た。
長塚は何も言わずにただうなずいた。
私はページをめくる。
あいつと俺は幼馴染み。
それ以上でも以下でもない。
あいつにとっては…
本の中の主人公は男の子だった。
幼馴染みの女の子と出会ってからの日々をつづったお話。
気付くと主人公は幼馴染みに恋をしていた。
アイツは猫みたいだ。
いつも強がって背筋をピンっとはって、でも心を許した相手には甘える。
そんなわがままな猫。
中学2年の夏休み前の放課後、俺はクラスの男友達たちと女子の話題をしていた。
「うちのクラスで一番かわいいやつって誰だと思う?」
一人が言うと口々にみんなが女子の名前を言う。
その中にあいつの名前があがった。
何故か俺はムカッとした。そして他の奴が言う。
「かわいいけど、なんか大人ぶってない?」
その言葉にはもっとムカついた。
あいつの良さなんて俺以外わかんなくていい。
俺以外があいつの名前を呼ぶのが嫌だった…
そして気付く、俺はアイツが好きなんだと…
私はそのまま本を読み続ける。
あいつと同じ高校に入って半年がすぎた。
アイツには初めて彼氏ができた。
俺は嬉しそうに報告するアイツに笑顔を見せた。
「よかったな。」
思ってもない台詞を言う。
俺はヤケになって彼女を作った。
彼女のことはそれなりに好きだった。でも、アイツが別れたときに別れた。
そうやって、何人も人をきずつけた・・・
今でもそのことを思い出すと心が苦しくなる。
でも、それが俺に課せられた罰なんだと思う
知らなかった・・・。ハルキが苦しい想いをしていたなんて・・・・。
大学に入り2年がたった。
俺は偶然アイツが黙っていた恋を知った。
それは苦しい恋だった。
アイツは平気だと言う。
でも平気なわけないから・・・・
『別れろ!』
その言葉を何度も言いそうになった。
『俺がお前を幸せにするから』
言いたかった言葉。
どちらも言えない。
幼馴染みというポジションを捨てれない俺に何も言う資格はない・・・。
でもお前は無邪気すぎて、俺に甘えてひっついてくる。
男として意識されてないのがわかる。
お前が甘えてくるのが嬉しい、そして……憎くもある
私はハルキをいっぱい傷つけていた…
なのに、ハルキはいつも笑ってくれた…
「ハル…」
謝ることもできない…
ごめん、ごめん、ごめんなさい…
俺は今の状況にどこかで満足している。
このまま続けばいいとも思ってる。
でも、それじゃあダメだから…
直接言う勇気をもてない俺をお前は笑うかな…?
かっこわるいかもしれない、でも言わせて。
俺の本当の気持ちを…
俺はお前が好きだよ、菜々穂