気持ち
するとドアが開いた。
「菜々穂・・・?」
中の様子を伺いながらハルキはゆっくりドアを開ける。
そして、私に気づく。
「どうした?電気もつけずに。」
そう言って部屋の電気をつける。
そしてすぐに驚きの表情を見せる。
「どうした!?何かあったのか??」
私に駆け寄って手を差し伸べてくれるハルキ。
私は思わずハルキの胸に体をうずめた。
「ハル・・・」
「どうした?」
優しい声
私は卑怯だ・・・
自業自得のくせにハルキに頼って泣いてしまう。
「菜々穂・・・?」
心配そうに私の名前を呼ぶハルキ。
ゆっくりと私の頭を撫で、黙って胸をかしてくれる。
私はゆっくりと長塚と別れたことを話した。
「ハル・・・、わかって・・・たんだ・・・よ、ちゃん・・・と。なのに・・・悲しい・・・」
「うん。」
ハルキは私を抱きしめたまま何度もうなずく。
「わた・・・し、どうしたか・・・たのか・・・な・・・?ながつ・・・かさん・・・が・・・おくさ・・・んすて・・・て、私といっ・・・しょにな・・・・てくれれば・・・よか・・・たのか・・・な?」
「菜々穂・・・」
悲しそうなハルキの声・・・
「わから・・・な・・いの・・・、じぶ・・・んの・・・・き・・・・もち・・・。私、長塚・・・さ・・・んのこ・・・と・・・」
その後の言葉を私は言うことが出来なかった。
ハルキの唇が覆いかぶさって私の言葉を飲み込んだから。
最初、何が起こったか私にはわからなかった。
そして少しずつ唇に熱さを感じ、ハルの唇の感触がわかる。
一瞬離れたかと思うとまたすぐにハルキの唇が覆いかぶさる。
呼吸がうまく出来ず私は頭がぼーっとした。
唇からハルキの感触が消えると次は頬にハルキの唇が当たる。
「菜々穂・・・」
耳元で私の名前を呼ぶハルキの声。
ハルキの腕の力が強くなり唇が首筋をなぞる。
「ハ・・・ル・・・」
うまく声が出せずに私はハルキの名前を呼ぶ。
私はそのまま床に押し倒された
「イタッ・・・!!」
反射的に出た私の言葉でハルキは止まった。
「ハ・・・ル・・・?」
私が名前を呼ぶとハルキは私から離れる。
「ごめん!!」
後悔しているハルキの顔。
「ごめん、菜々穂・・・」
「ハル・・・」
何を言っていいかわからず私は黙った。
ハルキは急に立ち上がりテーブルの上に置いておいたハルキ用に包んだケーキを持って急いで玄関に向かう。
靴を履いて部屋を出ようとしたときハルキは背中を見せて私に言う。
「本・・・・、読んでくれな・・・」
そう言ってハルキは部屋から出て行った。