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10/20

流れ星

「「誕生日、おめでとう~!!」」

教室に入るなり塔子と美晴が笑顔で私に言ってきた。

10月20日

今日は私の21歳の誕生日。

秋って季節が好きな私は自分が秋生まれなことが嬉しかったりする。

「ありがとう~♪」

私が言うと、塔子と美晴はプレゼントを渡してくれた。

「あけていい??」

私が聞くと2人とも笑顔でうなずく。

私は先に美晴がくれた淡く白い袋を開ける。

「わぁ・・・。」

中身は化粧ポーチだった。

薄い蒼に細かく雪の結晶が描かれたキレイなポーチ。

「かわいい~!!美晴、ありがとう!!」

私の反応を見て美晴は満足げにうなずいた。

「次は私のあけてよ!」

塔子に言われ、私はもう一つの箱型のプレゼントをあける。

「これは?」

中身は液体の入った小さなボトルが数種類と陶器の小さなうつわとそれを置く台のようなものだった。

「アロマテラピーセット!!」

そういえば、最近塔子がはまっているとか言っていた。

「いろいろ悩んだんだけどさ、菜々穂はなんかいろいろ溜めちゃうタイプだし、癒しが必要かな?って。」

そうやってさりげなく私を支えてくれる。塔子は大人だ…

「ありがとう~!!」

ちょっと泣きそうになったけど、私はおもいっきり笑顔でお礼を言う。

塔子は笑ってアロマテラピーの説明をし始めた。

興味をもったのか仲間はずれが嫌なのか美晴も一緒に話を聞く。一通り説明が終わると、思い出したように私に聞いてきた。

「そういえば、ハルキ君から何かもらった?」

私は首をふる。

「ハルの誕生日、明後日なの。だから、昔からお互いの誕生日の間、つまり明日にお互いの誕生日を祝うことにしてて。」

「へー、相変わらず仲良いね。」

感心したように美晴が言う。

「それだけ仲良かったら、お互い今まで恋人とかできなかったんじゃないの?」

塔子がおもしろがって聞いてくる。

「まさか、お互いちゃんと付き合ったりしたよ?でも、何故か付き合い始めるのも終わる時期とかも一緒なんだよね。」

「どんだけ仲良いのよ?」

あきれた顔で塔子が言う。

「なんかシンクロしてるってかんじだねー。いいなぁ、私もあんな幼馴染み欲しい~!!」

羨ましそうに美晴が言う。

「そういえば、2人とも直樹と拓実とはどうなの?」

私が聞くと2人は顔を見合わせ苦笑する。

「現状維持ってかんじ?」

「私も~」

(両想いのくせに?)

と言いたい気持をぐっと堪えて私はあいずちをうつ。

「なんか、今のままでまだいいかな?って。」

「そうそう、無理して今の幸せ壊さなくてもいいかなって思っちゃって…」

その気持ちがいたいほどわかり、私はそっかっとだけ言って会話を終わらせた。


でも、今の幸せっていつまで続けることができるのかな…?


長く続かないってことくらいわかってる…


それに…


私は本当に幸せなのかな…?



「な~な~ほ~、またぼーっとしてるよ~?」

塔子のちょっと怒った表情が視界に入り私ははっとする。

「ごめん…」

素直に謝ると塔子は溜め息をつく。

「まぁいいけど…。で、今日は学校のあとはヒマ?」

「ううん、バイト~」

「誕生日くらい休もうよ~!!」

美晴がつまらなそうに頬をふくらます。

「誕生日だし、ケーキバイキング行こうって思ってたのに~!」

「うそ!?ごめん…」

「まぁ、菜々穂の予定聞かなかったのも悪いんだし、後日でもいいでしょ?」

塔子が美晴に言うて美晴はしぶしぶと承諾した。

「じゃあ、明後日は?」

「私は大丈夫。美晴は?」

塔子の提案に賛成し、私は美晴を見る。

美晴はにこやかにOKサインを出した。




その日の夜、バイトが終わりさやかと健吾がプレゼントをくれた。

中身はペアのマグカップ。

「いつか菜々穂にいい人が出来たときに使ってよ!!」

嫌味か!?とも思ったが、2人とも純粋に考えて選んでくれたみたいなので、素直にお礼を言って受け取った。

さやかと健吾と一緒に店を出るときに長塚に呼び止められた。

「お前ら乗ってくか?」

車の鍵を見せて言う長塚。さやかと健吾は手をつなぎラブラブぶりをアピールして丁重に断った。

「菜々穂は乗せてもらいなよ!誕生日なんだしさ♪」

「言われなくてもそうするよ、2人の邪魔したくないしね!!」

わざと嫌味っぽく言ってみて私は笑う。

さやかと健吾はちょっと申し訳なさそうにしながらも嬉しそうに店を出て行った。

「というわけで、お願いします。」

私は長塚のほうを見て頭を下げた。

長塚は笑って喜んでと言い、私の先を歩く。2人ともが車に乗るまで私たちは店長とバイトの関係を演じる。いつ誰が見てるかわからないから。

従業員用の駐車場に行き、長塚は車の鍵を開ける。

私はいつものように助手席に座った。

「誕生日あめでとう。」

車に乗ってすぐに、長塚は私の頭に何かを置き、そう言った。

「ありがと・・・・」

長塚が頭の上に置いたものは片手に納まるほどの箱状のものだった。

「開けていい?」

私が聞くと長塚は笑顔でもちろんと言って車を動かした。

私は丁寧にリボンと包装紙をはずす。中には白いケースがあって、私はそっとそれを開く。

「キレイ・・・」

中身はシルバーのブレスレットだった。

シンプルなデザインでところどころに小さな花の形が付いている。そして真ん中には細長いプレートが付いていて裏側に文字が刻まれていた。


“meteor”


「メ・・・ティア・・?」

「ミーティアって読むんだよ。」

「ミーティア・・・?」

「そう、意味は流れ星。」

私は驚いて長塚を見る。長塚はこっちを見ることなく運転を続ける。

私はその横顔を見続けた。

「気に入らなかったか?」

何も言わない私に長塚は不安そうに聞く。私は何度も大きく首を横に振る。


気に入らないわけない・・・。


「ありがとう・・・」

私はブレスレッドを強く握り顔を下に向ける。

「・・・資格はないかもしれないけど、想うだけは自由だと思うからさ・・・」

長塚は落ち着いた声で私に言う。

私は何も言えずにブレスレットを見続けた。じっとブレスレットを見ているとブレスレットに滴が落ちちらばった。

「菜々穂、気に入ったなら笑え。」

信号で止まったのか長塚はこっちを見て言った。

私は手にこうで目をぬぐい、長塚に笑顔を見せる。長塚は笑って私の目に残った滴を指でぬぐう。

「ごめんな・・・」

初めて聞いた長塚の言葉。

私は首を横に振り笑顔でありがとうを言う。


少しずつ終わりが近づいているのがわかった・・・


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