1年以上止まっていた長編の続きを、AIと2日で書いた話
はじめまして、環 理生と言います。
普段は、長編小説とかエッセイとかを書いています。
そのうちのファンタジーは、本編だけでだいたい100万字くらいある、そこそこ長めの長編です。本編は4年ぐらいかけて完結させました。当時はAIなんてなかったので、全部自力です。
その続きというか、番外編みたいなサイドストーリーも書いてはいたんですけど、その更新が1年3か月ぐらい止まっていました。
エタったわけじゃなくて、書くつもりはありました。大まかなプロットも完成していました。ただ、正直、文字に起こすのがめんどくさくて、書いていませんでした。
それが今回、AIをうまく使えたおかげで、2日で8話、約4万字書けました。これは結構すごいなというか、可能性を感じたので、皆さんに共有しようと思って書いています。
――
前にやった失敗
具体的な流れの前に、まずは私の過去の失敗例を紹介しておきます。
前にやったのは、自分の小説を全部AIに読ませて、続きを書かせる方法です。
ただ、AIが一度に読み込めるのは100万トークンくらいなので、私の本文はAI 1つでは読み込めないサイズ感です。そこで、複数のAIに分けて読ませて要点だけまとめさせ、まとまったものを親のAIに渡しました。
その時に、それぞれのキャラクターの話し方や特徴も拾い上げさせて、「この続きを書いて」という感じで渡しました。
結果は、キャラクターがかなり崩壊しました。
たとえば、ぶっきらぼうで男気のある男キャラがいたとします。話し方は「〜だ」と言い切ったり、体言止めだったり、短い文が多い。
それをAIが書くと、ワガママな子ども、みたいな印象の話し方になってしまいました。
これは、ちょっと使えないなという出来だったので、それ以来、AIに続きを書かせるのは難しいと思っていました。
――
今回うまくいった流れ
今回は、以下のようにしたら、かなりいい感じに出力されました。できあがった文章の7〜8割は、AIが書いたものをそのまま採用できたくらいの精度です。
1. 設定を、本文と頭の中からまとめさせる
2. 続きの話を、口述する
3. それをもとに文章にさせて、読みながら直させる
4. 最後に、自分の手で整える
――
1. 設定をまとめさせる
まず、設定です。
私はもともと、設定資料集のようなものをほとんど書いていませんでした。あったのは、スプレッドシート1枚の年表くらいです。
あとは全部本文か頭の中にあり、忘れたら自分の書いた本文を読み返していました。
一人で書くなら、これで困りません。でも、AIは私の頭の中を知らないので伝える必要があります。
読ませ方は、失敗したときと同じです。本文を複数のAIに分けて、並行して読ませました。私の場合は1時間ほどで終わりました。
違うのは、拾わせるものです。前に拾わせたのは、要点とキャラクターの話し方くらいでした。
今回は、様々な情報を項目ごとにちゃんと整理させました。具体的には、以下のものです。
人物134
場所(国・街・地域)147
物(道具・植物・食べ物・お金)223
仕組み(魔法・暦・単位など)72
文化(祭り・儀式・習わし)66
組織48
魔物・動物33
合計718
1話にしか出てこない小物や、金貨の価値のような細かい決まりも全て拾われています。
章ごとの年表や伏線も、拾えるところは拾ってもらいました。
整理の仕方は、ゲームのシナリオやキャラクター管理を参考にさせまして、これがいい感じにはまりました。
ただ、本文から拾えるのは、文章に書いたことだけです。
そこで次に、本文には無くて、私の頭の中にだけあるものを話して、足してもらいました。たとえば、こんなことです。
・世界の大きな仕組みで、まだ説明していないもの(読者に説明する予定がないものも)
・実はこのキャラはこういう人、という裏の設定
・悪役っぽく見えているけど実はそうじゃなくて、こっちが本当の黒幕、とか
・今後書く予定のシナリオ(ここはこうなる、とか)
・誰と誰がどういう関係なのか
ほかにも、こまごましたことをいろいろ足しています。
――
2. 続きを伝える
次に、続きの話をAIに伝えます。
大まかなプロットはもうできていたので、そのプロットを見ながら、もっと細かいところを順繰りに話していきます。
ここはこういう言い回しを使いたい、ここはこうなる、といった細かいところを、一個一個実況するように話す感じです。
自分で本文を書くときも、プロットを見ながら頭の中で物語を動かして、それを文字に起こしていくと思います。そこを文字に起こさずに、そのまま、AIに渡しました。
で、全ての展開を全部自分が考えるかというとそうでもなくて、こだわらない場面はAIにまかせることもしました。
たとえば、二人がデートを楽しんでいる場面。キャラクターの魅力を出すために必要な場面ですが、正直、中身は何でもいいところです。
様々なキャラの情報をAIは知っているので、「過去のエピソードを少し織り交ぜつつ、いい感じにしておいて」と言うだけで、かなり満足のいく仕上がりになりました。
他には、話していると、迷うところも出てきます。
たとえば今回の話では、キャラクターが惚れ薬を作りました。
古い本に、惚れ薬や怪しい薬の作り方が載っている。じゃあ、どんな薬があって、材料は何がいいのか。
小物の設定は、どうでもいいと言えばどうでもいいです。でも、雰囲気を出すには多少こだわりたい。
そういうところは、話しながらそのままAIに投げて、挙がった候補から良さそうなものを選びます。
また、ちゃんと情報を整理しておくと、AIは設定も、私が過去に書いた文章も、伏線も、まだ本文で明かしていない裏設定も、全部分かります。
なので、
「この展開とこの展開、どっちがいいんだろう」
「この展開、矛盾しないかな」
「あの時どうだったっけ」
と話すと、そのまま答えが返ってきます。
1人で考えるよりも、かなり考えがまとまりやすいと感じました。
――
3. 読みながら直させる
話した内容をもとに、AIに文章を書かせます。
ここで驚いたのが、以前と違ってキャラの話し方とかもかなりよかったことです。
情報のまとめ方がよかったのか、あるいは単に以前よりAIの精度が上がったからなのか分かりませんが、私にとっては充分な精度でした。
とはいえ完璧ではありません。頭から順番に読んでいくと、ちょこっと直したいところも出てきますが、それは次で話します。
ここでは、それとは別のおかしなところの話です。大きく分けて2つあります。
1つ目は、自分だったらミスしないところです。たとえば、このキャラはこの情報を知らないはず、とか、設定と矛盾している、とか。
こういうところを指摘すると、その内容が設定資料にも書き足されるので、どんどん精度が上がっていきます。
2つ目は、AIに関係なく、人間でもやることです。いらない場面を削ったり、順番を入れ替えたり。
自分で書くときも、ざっくり下書きしてから、清書で文章を組み替えると思います。その組み替えを、そのまま言葉でAIに指示するイメージです。
――
4. 最後に手で整える
最後に、ここまで直したものを、自分の手で頭から直していきます。口で指示するより、自分でやった方が早いな、となった段階です。
AIは、文章が足りないことより、書きすぎることの方が多いです。なので、直しはだいたい、いらないところを消したり、ちょこっと修正したりです。
私の場合は、全体のおよそ2割が無駄な文章だったので削りました。
削るのが中心ですが、ちょこちょこ足すところもあります。足すところには特徴があって、だいたいAIが苦手なところです。
たとえば、戦闘の場面です。
実際に書き直した例を紹介します。
(場面)
そこそこ熟練した冒険者ペアが、花の魔物に襲われる。
(AI生成)
雛の死骸をガッシリと抱え込んでいた根っこが、ほどけるみたいにゆるんでいく。深緑の蔓が、ずるり、ずるりと地面を這って、こっちに伸びてくる。
まるで、獲物を探す蛇みたいに。
まっすぐ、私の足もとへ。
「ひっ……」
悲鳴をあげて目をつぶるほど、私だって未熟じゃない。これでも金級冒険者なのだ。
でも、足が動かなかった。
棘だらけの蔓の先っぽが、靴のつま先に触れる――
その寸前、銀色の線が走った。
ラウラだ。
(直し)
雛の死骸をガッシリと抱え込んでいた根っこが、ほどけるみたいにゆるんでいく。
深緑の蔓が、蛇が首をもたげるみたいに持ち上がるのが見えた。
「えっ……」
私の呆けた声は、銀色の風切り音にかき消された。
棘の生えた蔓が足元に転がる。
いつの間にか、ラウラが私の前に出ているのを見て、ようやく自分が助けられたのだと理解した。
ラウラに斬り飛ばされた蔓は、地面の上でうねうねと身をよじっている。
私は慌ててラウラの後ろに身を隠しながら、周囲へと目を向けた。
(意図)
AIの描写だとスピード感がありませんでした。それに、熟練した冒険者ならもっと冷静に動けるはずです。
「もうちょっとスピード感を上げて、一人称の視点で見えることをちゃんと書いて」と指示すれば、多少は良くなるかもしれません。
こういう、細かい言い回しは自分で書いた方が早いので、自分で直しました。
――
音声入力を活用する
AIを使うにあたって、音声入力を活用すると捗ると思います。
自分で書くときに音声入力を使うと、誤変換が多くて逆に手間ですが、AIは前後から正しい言葉を拾ってくれます。
作品の人名などの誤変換は、辞書に自動で集めさせると、話せば話すほど、精度が上がっていきます。
今回、この話のために口で話したのは、4万3,000字ほどでした。パソコンで打つと大変ですが、話せば数時間程度です。
また、スマホの音声入力なら、パソコンの前に座る必要がありません。
設定資料を読ませるAIはパソコンにいる必要がありますが、ちゃんと設定をすればどこからでもスマホでアクセスできます。
私も、スマホを持って散歩しながら、ぼそぼそ話したりしています。
頭の中にストーリーはできているのに、面倒だったり、忙しかったりで止まっている人もいると思います。
AIをうまく使えば、頭の中を文章にするハードルは、ぐっと低くなります。そういう人にこそ、一度試してみてほしいです。
ちなみにこのエッセイも同じやり方でつくってあります。




