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かくして原因不明の青痣事件はぱったりと収束。
そも彼らの言葉を信じるのであれば、洗濯バサミが自律できるのは一度きり。怜がどうこうせずとも収束しただろうが――それはそれ。これはこれ。報酬は頂き、さらにこれ以上被害が拡大するのを防ぐため、百均の洗濯バサミの売り場だけ変えてもらうよう指示を出したところで、怜と藤原の仕事は終わった。
「それにしても洗濯バサミの逆襲とは。痛くて目が覚めるとかなかったんですかねぇ」
「……確かにそうだな。……ただまぁ、目が覚めたところで、目の前にあるのは洗濯バサミだけだしな。おおかた夢とでも思うのが妥当なとこらだろう」
「それは確かに」
ビルの一室。エセ探偵事務所。窓から差し込む日差しに左手を掲げながら、藤原はつまらなさそうに呟く。
「早く俺の指輪も喋ってくれたらいいんですけどね」
「……そのときがきたら勝手に話しだすだろうよ」
怜は言えなかった。
藤原の薬指に光る指輪。あれがずっと――聞くに耐えない藤原に対する呪詛を吐き続けていることを。
話題を変えるように咳払いをした怜に、けれど藤原は気にする様子もなく指輪を眺めている。
そんな折だった。インターホンの音が鳴り響いたのは。
「……おや。来客かな」
「多分。今日はネット通販が届く日とかでもないですし。俺がでますよ」
率先して立ち上がった藤原の背中を見つめながら――さて次は、どんな付喪未満の神の声を聞くことになるのかな、と怜は思案したのだった。




