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学校教育は真実を教えているのか?

1日目

「学校教育は真実を教えているのか?」

というメッセージが届く。

これ以外には、何もない。

ただこれだけのメッセージ。

馬鹿げている。

騙された。

俺はそう思った。


しかし……、

馬鹿げているとは思っても、言葉が頭から離れない。


俺は考えた。

教育とは何か?

人を幸せにするものではないか。

でも……。

俺は幸せか?

世界の人たちは幸せか?


そんな疑問が頭に浮かんだ。


そうか……。

この問いが、真実の自分の姿を映し出すんだな。

そう確信した。


最後の自分探し。

間違っているはずはない。

そう思いたかった。


もし真実を教えていないとしたら?

幸せにはなれないのでは。

そんな風に感じた。


時計を見る。午前6時30分。

父と母は朝ご飯を食べている。

肉体労働者の朝は早い。

父は7時には家を出て、現場に向かい、

8時には仕事を始める。

俺は朝9時から、

父よりはゆったりとしている。


うちでは毎朝テレビがつけっぱなし。

今朝は教育と格差の問題についての報道があった。


ある有識者はこう言った。

「裕福な家庭では、教育にかけるコストの比重が高い」

と……。


俺は再び思いだした。

「学校教育は真実を教えているのか?」


俺は仮説を立てた。


裕福な家庭では、真実を教えるために、特別にコストを加算しているのではと。


これであれば、裕福な家庭が、裕福であり続けることができる。

もしかすると、そうやると支配層が、支配し続けられるのでは。

そう思ったのだ。


しかし……

俺はここまで来て、考えるのをやめた。

考えても仕方がないからだ。

それに

「学校教育は真実を教えているのか?」

は俺の人生には関係がない。


そう判断し、テレビを消し、食器を洗い、職場に向かう事にする。

少し雨が降っていた。

この調子だと親父の仕事は休みかな。

そんな事を考えた。

雨の日のガソリンスタンドの仕事は少々きつい。

すぐに靴下がびしょびしょになる。


昼過ぎ、近所のおじいちゃんがスタンドにやってきた。

近くの会社の会長さんで、そこの会社はうちのスタンドを使ってくれているので、

適当には扱えない。

そんなわけで、暇だと話し相手になる。


「そういえば、今朝“裕福な家庭では、教育にかけるコストの比重が高い”ってテレビでやってたんですけど、そんなものですか?」

と俺は尋ねた。


「そりゃそうだよ。ワシも帝王学ってのを学んだからね」

と会長さんは言った。


「帝王学って言うと?」

と俺は言った。


「帝王学って言うのは、会社を経営していくうえで、騙されないようにとか、下の者を上手く使うための勉強だよ」

と会長さんは言った。


「そんなのがあるんですか?」

と俺は言った。


「あるある。そんなの常識だよ」

と会長さんは言った。


「そういうの学校では習わなかったですよ」

と俺は言った。


「そりゃ学校というのは、社会の歯車を育てるためのところだから、社会の脳を育てるわけじゃないからね」

と会長さんは言った。


「社会の歯車というと……」

と俺は言った。


「普通に読み書き計算。あとは社会とか理科とか、そういう表層の知識だけだよ」

と会長さんは言った。


「それのなにが悪いのですか?」

と俺は言った。


「いや悪くはない。ただね。それは単なる情報であって、その情報をどう使うか?それは教わらなかったろう」

と会長さんは言った。


「そういえば」

と俺は言った。


「そういうことだよ」

と会長さんは言った。


いつもは30分ほど話し込んで帰る会長さんが、なぜかその日は、それだけで帰った。

俺が確信に触れてしまったためなのか。

単に忙しかったのかはわからない。

ただいつも30分くらい話し込む会長さんが、数分話しただけで帰った。


その事実が、触れてはいけないものに、触れた事を感じさせた。


「学校教育は真実を教えているのか?」

「普通に読み書き計算。あとは社会とか理科とか、そういう表層の知識だけだよ」

真実というのは、情報の使い方のことなのだろうか?

少なくとも、帝王学というのは、情報の使い方に踏み込んでいるような気がする。


情報を使う。

これはどういうことなのか。


いつもは30分ほど話す会長。

今日は数分で帰る。

今日は帝王学について話した。


これが情報だ。

いやまだある。

会長はこの地域で商売をしている。

会社はこのスタンドに仕事を回している。


こういう情報から、会長さんがなにを考えているのか読み取れるということなのだろうか。

名探偵みたいだな。


そう考えると、

少しだけ胸が高鳴った。


……


俺は学校教育について、詳細に考えだした。


歴史:これは歴史上の事実を述べたものである。これが正確な答えだ。ただ勝てば官軍という言葉があるし、歴史は為政者により、書き換えられると言われている。

もし歴史認識をいじったらどうなるのだろうか?

本当は善人だった歴史上の人物を貶めることだってできる。

そうなればどうなる?

その子孫を貶める事だってできる。

これは政治的に使えるのではないか?

そう考えると恐ろしくなった。

そうか……。歴史など、本当に事実かどうかは検証じたい不可能なんだ。

そうだ。

今、歴史の改変を行ってなかったとしても、昔に書かれた歴史書の時点で改変があれば、

もう真実なんてどこにあるのかすらわからないんだ。


だから……


「学校教育は真実を教えているのか?」


という事なのか。


……

18時過ぎ、俺は家に帰る。

家では父と母が食事をしていた。

俺も服を着替え、飯を食う。


俺はふと父に聞きたくなった。


「父さん。学校というのは本当の事を教えてるのかな?」

と俺は言った。


「そりゃそうだ。1足す1は2だ。間違ってねぇだろう」

と父は言った。


「いや……そういうことじゃなくって、歴史とか」

と俺は言った。


「あぁそういや……あったな。遺跡を捏造したとか、何とかって」

と父は言った。


「そういうの。そういうの」

と俺は言った。


「まぁ。中にはそんな事もあるかもしれないけど、全部がウソってことはないんだろうな。それじゃあ世界は回らないし」

と父は言った。


「そっか……」

と俺は納得した。


「まぁ。あんまり思いつめんなよ。まだ若いんだし」

と父は笑った。



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