第6話:告白の余韻と微妙な距離
翌日、教室の空気はいつもと変わらず。
悠真東雲は淡々と席に座り、教科書を開く。
昨日の告白がどう響いたのか、彩花の表情を思い出そうとするが、東雲自身は特に深く考えていない。
恋愛ポンコツゆえ、あの場の反応を正確に読み取ることはできなかった。
彩花は机に座り、心の中で昨日の出来事を反芻する。
「…ああ、やっぱり普通の人には無理ね」
好意はなく、尊敬もなく、単純に現実として東雲を恋愛対象として見られない――その現実を冷静に受け止める。
教室で目が合っても、互いにぎこちなくなることはない。
東雲は普段通りの自然体、彩花も距離感を保つ。
ただ、昨日の出来事が微妙な空気として、心の端に残るだけだった。
放課後、東雲は自宅でいつも通り創作に没頭する。
ペン先は自然に動き、頭の中に浮かぶ物語をそのまま紙に落とす。
「このキャラクターはこう動かすか…」
思考が現実よりも物語に集中する瞬間、無自覚天才ぶりが光る。
彩花は家に帰ると、スマホで東雲の作品を読み返す。
学校での東雲とは別の姿。
「この人、本当にすごい…」
尊敬は変わらず、だが学校で目の前にいる普通の彼とは切り離して考えている。
二人の間には昨日の告白が残した微妙な距離感がある。
互いに気まずさはないが、恋愛としては何も変わらない。
これこそが、後の手のひら返しや作者バレへの伏線となる、静かな日常の始まりだった。




