第57話 心のざわつき ― 彩花の嫉妬と東雲の無自覚
週明けの昼休み。
彩花は教室の窓際に座り、弁当を開けながらも箸が止まっていた。
(……どうしよう……
海斗くんのこともあるのに……
でも東雲くんのことを考えると……胸が……)
彩花は目を伏せ、軽くため息をつく。
その時――
「彩花さん、おはようございます!」
背後から明るい声が響いた。
振り返ると、白鷺ゆりが笑顔で立っていた。
「ゆり……さん……?」
ゆりは手に台本を持ち、キラキラした目で彩花を見つめる。
「今日は収録前にちょっと東雲先生と話したくて……
彩花さんも見学するのかな?」
彩花は急に胸がざわつく。
(……え……?
ゆりさん……東雲くんと……)
「えっと……私は見てないけど……」
と小声で答える。
ゆりは楽しそうに笑いながらも、彩花の表情に気づく。
「もしかして……嫉妬ですか?」
「っ……!?」
彩花は慌てて顔を背ける。
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◆収録スタジオ
東雲はいつも通り、自然体で台本をチェックしていた。
ゆりは隣で熱心にセリフの読みを練習する。
「このシーン、先生の文章のリズムが……
こういう間なんですよね?」
「うん、その通りだと思う」
東雲の自然体な指示に、ゆりはますます胸を高鳴らせる。
彩花は少し離れた場所からその様子を見つめる。
(……やだ……
私、見ちゃだめなのに……
なんでこんなに心がざわつくの……)
胸の奥がぎゅっと締め付けられる。
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◆彩花の心の葛藤
彩花は自分の手を握りしめ、内心でつぶやく。
(海斗くんのこともあるのに……
東雲くんを見てると……どうして……こんな気持ちになるんだろう……)
その気持ちは、昨日の海斗とのやり取りとも絡み合い、複雑に絡まる。
(……好き……なのに……
断ったのに……
なんでこんなに心が揺れるの……)
彩花は小さく深呼吸をして、自分に言い聞かせる。
(……でも、私……負けたくない……
東雲くんの隣にいるゆりさんを見ても……
心が折れないようにしないと……)
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◆スタジオ内の緊張感
東雲とゆりの距離感は、あくまで“作品を理解するための真剣なやり取り”だ。
しかし、彩花にはそれが自然と“二人の親密さ”として映る。
胸の奥がざわつき、視線がスタジオの奥に向かってしまう。
(……やだ……
胸が苦しい……
嫉妬……なの……?)
彩花は自分の気持ちを整理しようとするが、
無自覚天才の東雲の自然な優しさに、心が乱されるばかりだった。




