第56話 海斗の挑戦状 ― 彩花に迫る影
放課後の教室。
彩花はノートに向かって、今日の授業内容をまとめていた。
しかし、心ここにあらず。頭の中は昨日の東雲の言葉と、白鷺ゆりの熱意でいっぱいだ。
「……ああ、もう……どうしてこんなに胸がざわざわするの……」
そんな彩花の前に、突然影が差し込む。
「彩花さん、ちょっと話せる?」
振り返ると、桐谷海斗がにやりとした顔で立っていた。
「えっ、海斗くん……?」
「ちょうどいいタイミングだ。
昨日からずっと考えてたんだ、俺は――
彩花さんともっと話したいって」
彩花は思わず息を飲む。
(……え? どういうこと……?
昨日断ったのに……まさか……)
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◆海斗の熱意
海斗は彩花の前に腰をかがめるようにして、真剣な目を向けた。
「東雲悠真……
あいつのことは認める。でも、俺も負けない。
俺は彩花さんのこと、ちゃんと意識してるんだ!」
彩花は驚きと戸惑いで、顔が真っ赤になる。
「えっ……あ、あの……」
海斗は焦らせるように続ける。
「だから、これからは俺にも気を向けてほしい。
ライバルとしてだけじゃなく、友達としても、
……いや、俺としてはもっと近くにいたいんだ!」
彩花は思わず手を握りしめる。
(……ライバル……?
友達……?
でも、なんか……ドキドキする……)
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◆彩花の葛藤
彩花の心臓が早鐘のように打つ。
(どうしよう……
東雲くんのことを考えたら胸が苦しいのに……
でも海斗くんの言葉も……心に響く……)
無意識にペンを置き、机の上で手を握りしめた。
「……海斗くん……」
声は小さく、震えていた。
「……私は……ちょっと……考えたい」
海斗は頷き、少し笑った。
「わかった。
無理には言わない。
でも、俺の気持ちは伝えたかった」
その目は真剣で、揺るがない。
彩花は胸の奥で、熱くざわつくものを感じた。
(……どうして……
同じくらいドキドキするの……
でも、どっちも大事に思っちゃう……)
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◆その背後で
教室の窓の外から、東雲の存在はまだ遠い。
彩花と海斗の距離が縮まる様子は、誰も気づかない。
しかし、物語の波は確実に動き始めていた。
白鷺ゆりのSNS更新や、アフレコ現場の出来事。
すべてが彩花の心を揺らし、海斗の挑戦をさらに際立たせる。




