第55話 ライバル視の悲劇 ― 桐谷海斗の嫉妬
週末。出版社の作業スタジオ。
桐谷海斗は、今日もまた“勝手にライバル視”対象である東雲悠真の動向を気にしていた。
「なんで、あいつ……また平然と作品を作ってるんだ……」
隣で姉・白鷺ゆりが軽くため息をつく。
「海斗、落ち着きなさい。
弟なのにそんなに嫉妬してどうするの」
「嫉妬じゃない……ただのライバル心だ……!」
しかしそのライバル心は、今や明確な嫉妬へと変わりつつあった。
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◆東雲の創作現場
スタジオの一角。
東雲は机に向かい、次のシーンのプロットを書き進めていた。
手を動かすだけで、まるで無意識に完成された文章が生まれていく。
「え……マジか……」
海斗は思わず息を呑む。
「目の前で……こんなにスラスラ……
俺のライバル……本当に天才すぎる……」
海斗の目はどんどん大きくなる。
「……くっ……俺も頑張ってるのに……!」
彼の心臓が、理不尽な怒りでざわつく。
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◆白鷺ゆりの観察眼
「海斗……見すぎよ。
息荒くなってるし」
ゆりは微笑みながら指摘する。
「だって……悠真さん、すごすぎるんだよ……
俺のライバルなのに、天才すぎる……!」
「……あんた、恋愛も絡むんじゃないの?」
海斗は一瞬言葉を詰まらせる。
「……そ、そんなことない……!」
しかし内心は、東雲が女子たちに囲まれる姿を想像するだけで胸が締め付けられる。
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◆東雲と彩花の距離感
その頃、東雲は彩花に向けて、軽く文章のアドバイスを送っていた。
「彩花さん、このキャラの心理描写、こういう表現もいいと思うよ」
彩花はメモを取りながら、心臓を早鐘のように打たせる。
(……どうして……
話しているだけなのに……
胸がこんなにざわつくの……?)
彩花の手が少し震える。
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◆海斗の妄想スパーク
海斗は隅で俯きながら小声でつぶやく。
「ち、違う……
俺はライバル心で見てるだけ……
でも……彩花も東雲に近づいてる……!?」
「……あんた、完全に恋心じゃん」
ゆりが指摘すると、海斗は顔を真っ赤にする。
「ち、違うっ! 俺はただ……!」
「はいはい、わかったわかった」
姉弟の小さな攻防が、静かなスタジオに密やかに繰り広げられていた。
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◆無自覚天才の追い打ち
東雲は彩花の質問に答えながら、さらりと次のシーンを完成させてしまう。
「……え、もう完成……?」
海斗は思わず机を叩いた。
「くっ……やっぱり……こいつ……!」
東雲の自然すぎる天才ぶりに、海斗のライバル心と嫉妬は最高潮に。
(……俺は……どうやったら……
あいつに勝てる……!?)
その悩みは、同時に彩花への意識の高まりともリンクしていた。




