第5話:告白、そしてポンコツ失敗
放課後の教室は、夕陽に染まり静まり返っていた。
悠真東雲は、いつも通り淡々と机に座る。
学校では地味で目立たない普通の高校生――それが彼の日常だ。
偶然、廊下で二人きりになる瞬間が訪れる。
東雲はそのチャンスを見逃さず、自然体のまま口を開く。
「彩花…あの、俺、君のことが…好きだ」
ぎこちない言葉だが、これが恋愛ポンコツの彼にできる精一杯の告白だった。
彩花は一瞬驚き、少し距離を取る。
そして、はっきりと断った。
「ごめんなさい、悠真くん。私が好きな人は、あの作者みたいな人で…東雲みたいな普通の子はちょっと…」
東雲は理解できず、固まる。
「え…そ、そうか…」
自然体で受け止めるしかない。
恋愛ポンコツの彼にとって、この瞬間もまた空回りだった。
彩花は何事もなかったかのように歩き去る。
尊敬や好意は全くなく、現実の人物としての距離感を保ったまま。
一方の東雲は、何事もなかったかのようにその場に残り、静かに息をつく。
そして帰宅後、自宅でいつも通り創作を始める。
無自覚に天才ぶりを発揮し、次の物語が自然に生まれていく。
学校での告白失敗――そして作者バレはまだ先の話。
東雲の日常は、今日も静かに、しかし確実に物語を紡ぎ続けるのだった。




