第3話:微かな接点
朝のチャイムが鳴り、教室に光が差し込む。
悠真東雲は机に座り、教科書に目を落としていた。
彼にとって、学校は物語の舞台ではない。日常は静かで、特別な出来事はほとんど起こらない。
彩花は、少し離れた席から悠真を観察していた。
彼女は熱狂的ファンとして、作品に夢中になっている。
「昨日の展開、本当にすごかった…」
心の中で作品の感動を反芻するが、作者が目の前にいるとはまだ気づかない。
今日の小さな接点は、クラスでのグループワークだった。
悠真は、無理に目立とうとはせず、淡々と作業を進める。
彩花はグループメンバーとして話しかける機会を得たものの、自然体の東雲に戸惑う。
「なんだか普通の子…でも、どこか空気が違う」
その感覚は、読者には伏線として映る。
天才であることは、まだ明かされていないが、微かに存在感が滲む瞬間だった。
放課後、彩花はスマホで東雲の作品を読み返す。
「やっぱり、この人…すごい…」
胸の高鳴りと尊敬が入り混じり、心理の揺れが生まれる。
同じクラスの男子である現実と、作品の天才の存在が頭の中で交差する瞬間だ。
一方、悠真は帰宅後、いつも通り机に向かう。
無自覚に物語を生み出すペン先。
学校では目立たない普通の生徒だが、ここでは誰もが驚く才能が静かに発揮される。
小さな接点と微かな心理の揺れ。
告白への伏線は、まだ直接的には何も起きていない。
しかし、この日常の中で、二人の物語の軸は確実に近づいていく。




