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第2話：同じクラス、別の世界

朝の教室は、いつも通りのざわめきで満ちていた。

悠真東雲は静かに席に座り、ノートや教科書に目を落とす。

目立たない存在――それが彼の日常だ。友達もいるが、特別仲良くするわけではない。教師から見ても、「大人しい生徒」という印象でしかない。

彩花は少し離れた席から、悠真をちらりと見ていた。

普段はあまり話すこともないクラスメイト。

だが、彼が書いた作品の熱狂的ファンとして、心の中では大きな存在感を放っていた。

「今日も悠真くん、いつも通りだな…」

彩花の視線は自然に逸れ、ノートに目を落とす。

――この人が作品の作者だったら、どんな感じで書いているんだろう。

もちろん、彩花はまだ気づいていない。

同じクラスで顔を合わせているのに、作者としての天才ぶりは全く知らない。

それが、この物語における微妙な距離感であり、後に告白や手のひら返し伏線に繋がる重要な要素だった。

放課後、教室の片隅で彩花はスマホを取り出す。

ランキングやコメントを確認し、昨日投稿された新作を読む。

「やっぱりすごい…！」

声には出さないが、心の中で熱狂は続く。

一方の悠真は、放課後はすぐに帰宅する。

学校では創作せず、クラスでは目立たない普通の高校生。

自宅に戻ると、机に向かい、自然に物語を生み出す――それが彼の無自覚天才ぶりだった。

彩花は今日も知らないまま、彼の作品に夢中になる。

同じクラスメイトであるという事実と、作者としての存在は、まだ交わることはない。

だが、静かに、二人の物語の軸は近づき始めていた。