第16話 決定的な手がかり
週末の放課後、教室はひっそりとしていた。
彩花は机の上に置いた教科書をちらりと見て、深呼吸する。
(……今日は、昨日よりも踏み込む……
東雲くんのこと、もっと知りたい……)
彩花は胸の高鳴りを押さえながら、悠真の机のそばに近づく。
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◆偶然の発見
悠真は、いつものように文庫本を読み、ノートに軽く文字を書き込んでいた。
その仕草は、まるで息をするかのように自然で、彩花には異常に美しく見える。
ふと、机の隅に置かれた紙片が目に入る。
表紙には小さく「黎明」と書かれている――。
彩花の心臓が跳ねた。
(……えっ……これ……
“黎明先生”の……原稿……!?)
目を凝らすと、文字のリズムや表現が、SNSで見た作品と同じものに見える。
心の奥で、尊敬と動揺が入り混じる。
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◆声に出せない動揺
彩花は思わず小さく息を呑む。
悠真は何も気づかず、自然体でノートを取る。
(……やっぱり……
この人……“黎明先生”……
まさか……こんな普通の顔の人が……!?)
胸の奥が熱くなる。
理性ではまだ信じたくない。
だが、感覚はもう確信に近い。
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◆距離を縮める決意
彩花は手を小さく握りしめ、心の中で決める。
(……今日こそ……
ほんの少しだけでも……
この人のことを、知りたい……)
勇気を出して、声をかける。
「悠真くん……その……ちょっと見せてもらってもいいですか?」
悠真は顔を上げ、自然体の笑み。
「見せるって……ノートのこと? いいよ」
彩花は心臓が破裂しそうになりながら、ノートを覗き込む。
(……やっぱり……これ……
間違いない……
東雲くんは……作家なんだ……)
その瞬間、彩花の胸の中で、長く押さえ込んでいた想いが一気に揺れ動いた。




