第15話 距離を縮める勇気と、見え隠れする才能
放課後の教室。
机の隅で、彩花は東雲悠真を見つめていた。
昨日から胸の高鳴りが止まらない。
目の前の悠真は、いつも通り地味で控えめだ。
しかし、どこか“普通ではない匂い”を放っている。
(……やっぱり……無意識に作家の才能が出てる……
でも、学校ではただの地味男子……)
彩花は意を決して、悠真の隣の机に座った。
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◆直接の接触
「東雲くん……昨日の続きなんだけど、少しだけ相談したくて」
悠真は本から顔を上げ、自然体で微笑む。
「相談? いいけど、何の話?」
彩花は一歩だけ前に体を傾ける。
胸の奥がドキドキと高鳴る。
「えっと……その……ちょっと文章のこと、聞きたいなって」
悠真は驚いた様子もなく、軽くうなずく。
「文章のことか……いいよ。何を知りたい?」
その無防備さに、彩花の胸はさらに揺れた。
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◆手がかりの瞬間
悠真は筆箱からペンを取り出し、紙に軽く文字を書き込む。
何気ない動作のはずが、彩花には異常に輝いて見える。
(……なんで……無意識でこんなにリズムが……
自然なのに、完璧……
やっぱり……この人、普通じゃない……)
彩花は言葉を忘れ、じっと見つめてしまう。
悠真は何も気にせず、にこやかに微笑む。
「どう? こんな感じでいい?」
彩花は小さく頷く。
「うん……すごく、分かりやすい……」
胸の奥で、尊敬と、わずかな恋心が絡み合う。
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◆揺れる感情
彩花は自分でも理解できない気持ちを押さえつけようとする。
(……でも、私は振ったんだから……
好きになってはいけない……)
それでも視線は悠真から離れない。
胸のざわめきが、理性を押しのける。
(……無理……
知りたい……
この人の正体を……)
彩花は小さく息を吸い、決意を固める。
「次に話すときは……もっと近くで、
本当のことを……知るんだから……」
その決意を胸に、彩花は悠真との距離を一歩ずつ縮める覚悟をした。




