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召喚術師、成り損なう。α  作者: 優麗
第2章 魔道具師、召喚術師に成る?
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第31話 クラス3ハイ・サモナー:妖精姫《リリィ》個人戦3

「おいおい、解説の続きはどうしたぁ!?」

「言ってくれるわね……っ!」


 妖精姫に向かって疾走しながらも先んじて口撃を仕掛けていく。待ち構えたまま未だ動きを見せない妖精姫との距離はそれほど離れていない。これなら奇襲さえ回避出来ればダイレクトアタックに持ち込めるだろう。一目散に妖精姫へと駆ける俺にゾワリと、またあの感覚が今度は首筋を撫でてきた。

 ついに、ホーンラビットが来るのか?背後への警戒を強めるが……どうも、違和感が拭えない。





 そういえばホーンラビットは何故……()()()()()()()()()()()()()()()()

 確かに敵の背後を取るのは大切だ。だが、最良は攻撃を避けられようとも圧力を掛けて俺に攻めさせない事ではなかったか?

 今更になった疑問、その答えは妖精姫の口からすぐに知ることとなる。嫌な予感の正体と共に。


「強力な模様の悪影響(デメリット)は、数十秒での自壊消滅よ。」


 常に死角に回り込んでいたので、見えなくともホーンラビットはまだ何処からか俺を狙っているのだと思っていた。そうでないにしても、送還に魔力を使えばその分時間的余裕はできるだろうと……その前提条件が崩れていく。


「だから、使うと必ず白紙になっちゃうんだけど……送還にも召喚維持にも魔力を注ぎ込まなくて良いのよね。」


 そう呟いた後に妖精姫はトリガーを引いた。カコン、と天秤の傾く音がした。




召喚(サモン)!」

「ooooooo!!!!」


 早すぎた3体目の召喚獣、それは俺と妖精姫の間に巨大な影を落とした。召喚獣の出現位置はある程度召喚術師が操作できる。つまり、やろうと思えば空中にだって呼び出せるのだ。

 上空に出現した召喚獣(巨大質量)はこの世界への顕現とともに重力落下を始める。俺と妖精姫を隔てるように。


(スモール、ゴーレム……!?)


 よりによってクラス2の召喚獣である。何故、尚更に早すぎる。そう思ったが、その理由はすぐに分かった。ゴーレムには下半身が存在していなかったのだ。


(部分召喚で召喚に掛ける魔力を半減させたのかっ!?)


 魔道生物であるゴーレムならば下半身が無くとも死にはしない。そして、ゴーレムのサイズならば仮令(たとえ)半身だけになろうとも人を遮ることは出来る。なにせ、腕を振り回すだけでも十分に脅威なのだ。

 ホーンラビットの白紙化もそうだが、採算を度外視に出来るなら有効な戦術であることは間違いない。勿論、普通は度外視になんて出来ない。



(まるで隙が無い。 これがクラス3か。)


 駆ける足を止めれば、ゴーレムの落下に巻き込まれたりはしないだろう。しかし、それだと妖精姫へのダイレクトアタックの芽が潰されてしまう。

 これまでに何度も挑戦し、そして新たな切り札を携えてもまだ越えられない壁。だが、逆に言えば完全召喚出来ていないのだから妖精姫にとってもこれがなけなしの魔力であることは間違いない。足りなかった一手に届きつつある。



(ここが勝負どころだ……ッ!)


 刹那で決まった覚悟と共に、足を止める事無く影の下へと突入する。もう差程の猶予も残されていない。残念ながら、俺が妖精姫にたどり着くより先にゴーレムが降ってくるだろう。


「これにも、立ち向かってくるのね! いいわっ、お手並み拝見させて貰おうじゃないの。」

「ハッ! そんな余裕見せて良いのか? ここを抜かれたら後がないだろ!」

「そうかもね。 でも、だからこそドキドキするんじゃないっ!」


 妖精姫が初めて見せる満面の笑み。妖精らしからぬ野性味を兼ねた表情であったが、恐らくはこちらが妖精姫ではなく亜都璃(あとり)梨衣(りい)としての素なのだろう。その瞳は『貴方なら、乗り越えてくれるのでしょう?』とでも言うように期待の色で満ちていた。


(そこまで期待されちゃぁ、裏切る訳にはいかないよな。 今度こそ、乗り越えてみせる……ッ!)


 姿勢を低く、低く、地を這うように駆けながらも頭上のゴーレムとの距離を目算。傾いた天秤に俺の命を乗せる。ゴウッと、死の風が吹いた。


「Ooooo!!!」

「邪魔ッ、するなぁぁぁ!!!」


 目前に迫るゴーレムに対して、俺は2つ目の切り札(・・・・・・・)を発動させる。切り札の名は『白紙の召喚カード』改め……『無敵の盾(アイギス)』!



◇◇◇



「なんだこれ? 小麦がやったんじゃ、ないんだよな?」

「ボクの召喚獣は食べ残したりしないので……違うと思いますよぅ?」


 それは小麦とゴブリン集落を潰して回った後の事である。何時ものようにドロップアイテムの回収と瀕死のゴブリンに対して止めを刺していた俺と小麦の前に、これまでで見たことの無い死因のゴブリンがいたのだ。

 死因と言っても、ドロップアイテムに変化していなかったので即死ではないのだろう。


「墜落死……かなぁ?」

「1番に考えられる死因としてはそうなんだが……でも、それなら何処から落ちたって言うんだ?」


 そう、そのゴブリンは上下逆さの状態で地面に直立して瀕死になっていたのだが、ゴブリン集落は森の中でも開けた場所にある。落ちるべき高所が近くになかったのだ。


「あっ、そういえば先ほどの戦闘中、志麻先輩近くのゴブリンが吹き飛んでいるのを見たようなっ? なにか、心当たり無いですか?」

「そんな事あったか? でも、心当たりなんて……ああ、そういえばさっきの戦闘では『白紙の召喚カード』を発動してみたんだったな。」


 性能検証を終えて気軽に使用しても問題ないと分かったので、実戦でも使ってみる事にしたのだ。まあ、結果は予想通り召喚してもなにも意味は無かった、のだが……。



「それにしても吹き飛ぶ、ねぇ……最近似たような事があったような。」


 記憶を順に思い起こしていくとすぐにお目当ての出来事へと辿り着いた。それは数日前、クラス2召還術師との戦闘中の事だ。


「もしかして、そういうことなのか……っ?」

「志麻先輩、なにか分かったんですかっ?」

「ああ。」


 白紙の召喚カードは使用してもなんのエリア効果も得られない。それは召喚するエリアがないからだ。そこまでは検証済みなので間違いない。



 だが、そう。召喚はされている(・・・・・・・・)のだ。召喚されているなら……間違いなく、召喚境界を超えている(・・・・・・・・・・)。つまり……。



「このカードの本質はエリアを召喚するカードじゃない。 ()()()()()()()()()()()()だったんだ!」

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