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召喚術師、成り損なう。α  作者: 優麗
第2章 魔道具師、召喚術師に成る?
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第29話 クラス3ハイ・サモナー:妖精姫《リリィ》個人戦1

 舞台(リング)に足を踏み入れた妖精姫は客席に一礼すると、その場でくるくると回り始めた。

 ふわりと広がるローブの端に、動きに合わせて舞う銀緑。きっと客席からは大輪の花が咲いているように見えただろう。なるほど、これが妖精姫が稀に見せると噂のフェアリーダンスか。本物の妖精が踊っているのかと錯覚してしまいそうだ。

 幻想的な舞踊を特等席で見れたのだから良い経験をしたと思わなくもないが……俺は物見遊山ではなく勝利(召喚獣)を手に入れる為に来ているんだよな。どうせなら違う機会に見たかった。



 1分近い踊りを終えた妖精姫は再度の一礼。今度は俺に向けたものだろうか。近づいて俺を視認した妖精姫はそこで僅かに表情を崩した。


「この前以来ね。 まさか対戦相手として相見えることになるとは思っていなかったけど……これも縁、かしら。」

「顔を覚えていて貰えたのは嬉しいがね。 生憎、美少女と縁を結べるほどの徳は積んじゃいないかな。」

「あら、でも今度は顔だけじゃなくて名前も覚えたわよ?」

「クラス3に顔と名を覚えて貰えるなんて光栄だよ……はぁ。」

「それなら少しは光栄そうな表情しなさいよ。」


 言葉だけならまだしも表情まで取り繕う余裕はないんだよ。妖精姫、亜都璃(あとり) 梨衣(りい)の召喚獣と言えばフェアリーが有名だが、ソロでクラス3に到達しているのだ。他にも隠し球は持っているだろう。いや、そもそも。


「まさかこんな企画にクラス3が出場してくるとはね。」

「番組側に顔見知りが居て、誘いを断れなかったと言うのもあるけど……元々魔道具師に興味があったのよ。」


 軽口のつもりだったのだけれど、それにさえ丁寧に返事してくれるのだからやはり妖精姫は律儀だ。それに、僅かに浮かべている申し訳なさそうな表情から自身(クラス3)の場違いさも分かっているのかもしれない。くそっ、そんな態度をとられたら愚痴ったこっちが罪悪感を覚えるだろ。


「ああ、いや、誤解させたのならすまない。 召喚獣と一緒に名声まで手に入るなんて随分気前が良いんだなと思ったものでね。」

「へぇ……それってもしかしてクラス3()を相手に『勝つ』って言ってる?」

「知っているかい? クラス3の召喚術師だろうと、クラス3の召喚獣さえ呼び出せなければクラス3足り得ないんだぜ。」


 だから、申し訳なさだなんだと言うのは気にしなくていい。喉元まで出かけた弱音を飲み込んで言外にそう伝えてやる。舐められたままの方が勝算があったとしても舐められっぱなしは冒険者じゃない。ただでさえ命の懸かっていない対戦なのだから、それならば精々派手にやろうじゃないか。

 そんなことを話していると、視界の隅で緑のランプが灯った。どうやらいつの間にかセーフエリアの召喚が完了していたようだ。闘争へとスイッチが切り替わったのは俺だけではない。妖精姫からもピリッと空気のヒリつきが伝わってくる。


「それなら、手加減しないわ。 クラス3を味わう前に潰してあげようじゃないの。」


 どうやら先程までの申し訳なさは吹っ切れてくれたらしい。ただ、これは少し煽りすぎたかもしれない。この様子だと、番組としての盛り上げとかも気にせず最初からクラス3の全力で挑んできそうだ。勝算、減らし過ぎたかもしれない。

 いや、それでもこれで良い。でも、そうだな……それならば、俺も言っておかなければならない事がある。


「それなら、言い訳は先に考えておいた方がいいぞ。 大言壮語を吐いちまったからなぁ!」


 赤のランプが灯る。試合開始だ。



◇◇◇



召喚(サモン)!」


 試合開始と共に駆ける俺が辿り着くより早く、妖精姫はリング中央に召喚獣を呼び出した。この闘技場は縦横共にトレーニングルームよりも格段に広いので、この展開はまだ予想の範囲内である。ただ、予想外があるとするならばそれは。


(スケルトン……だと?)


 妖精姫の初手がありきたりな召喚獣だった事だろう。スケルトンの中では珍しい両手盾装備とは言え、これには些か拍子抜けだ。

 意図は分からずとも序盤の召喚獣、とりあえずは何時ものようにサクッと戦闘不能にさせて貰おう。フェイントを含ませながら斬りかかってみるのだが……。


(さすがはクラス3召喚術師の召喚獣なだけある。 これまで戦ったどのスケルトンよりも技巧に優れている……!)


 一合、二合、三合と剣戟を重ねてみても露骨な欠点は見つからない。パッと見でも古傷の目立つスケルトンは間違いなく数多の経験を積んできたのだろう。両手盾装備という事も相まってクラス以上の崩しづらさを感じる。

 クラス1召喚獣でもクラス3召喚術師が育成すればここまで強化されるのか。クラス3召喚獣さえ召喚されなければクラス3足り得ないと言うのは、ちょっと暴論過ぎたかもしれない。


(それにしても……なんだ? 今まで戦ってきたスケルトンと、なにかが違うような。)


 技量によるものかそれとも……いいや、なんにしてもこれ以上1体目の召喚獣に時間を掛けている余裕はない。それに、両手盾装備のスケルトンは守備力に優れる一方で攻撃力は皆無。多少力任せになろうとも、ここは攻めの姿勢を見せるべきだろう。

 覚悟を決めた俺は体当たりで無理矢理にスケルトンの体勢を崩してやるべく、助走の為に距離を置いた。その俺の背をゾワリと嫌な感覚が撫でる。


(っ!?)


 慣れ親しんだ、死が近づく気配。それがなぜ、こんな序盤で?俺は何かを見落としているのだろうか。考えてみるが、判断材料の乏しい現状では分かりそうもない。


(……それならば、冒険してこその冒険者だろ!)


 感覚は何時だって俺の足元を照らしてくれるが、それだけを頼りに序盤の有利を捨てるのは下策。これぐらいでは駆け出した俺の足は止められない。





(ただ、そういえば……。)


 そういえば、何故スケルトンには()()()()()()()()()()()()


 召喚獣が受けた負傷はなんであれ魔力によって治療可能だが、召喚術師または召喚獣が望むならば傷跡のみを残した治療も可能だ。

 歴戦の古強者らしさを演出する為と言われればそれまでだけれど、果たしてクラス3がそんなハリボテを着飾るだろうか?俺の知るクラス3であれば見せ掛けだけの風格よりも万全のコンディションを心掛ける。だからこそ、傷跡を残すことへのメリットが思い浮かばなかった。


(それに、傷跡にしてはなんだか規則的すぎるな。 ……もしかして、傷跡じゃない?)


 一度気付きを得てしまえばそこからの思考は早かった。なぜなら、俺はその傷跡……いや、模様に見覚えがあったのだ。

 模様、強化……そして妖精(・・)姫。



(おい、まさか嘘だろっ!?)


 思考が真実に追い付こうとも現実と言う名の運動エネルギーまでは止められない。スケルトンが持つ両手盾との激突。本来であればその後に弾き飛ばされるのはスケルトンだっただろう。だが、実際は違う。

 妖精姫のスケルトンは俺の全力の体当たりを盾で受け切り、そのまま受け流したのだ。


「ぐぅ……ッ!?」


 スケルトンの盾の傾きにあわせて崩されていく俺の体勢。そこに飛来するのは感覚ではなく確信。死が、来る。


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