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5.湖の恵み ナーパム王国国有鉄道 キット本線 ウォーミア~キット&ナギヤ線 ナギヤ~ナギヤ湖畔

主人公が、自分を召喚した魔法使いまで巻き込んで旅行に行くようです。

 

「改めてみると、ウォーミアって列車の行先多様ね」

「そうですよ。センディ線、モオーシ線、キット線って、三つの主要路線がありますからね」

 この世界に来てから1か月。

 ターキアに買い物に行ったり、シモディトのマッティアさんに会いに行ったり、ウォーアトの市場までは電車によく乗っているが、それ以外はあまり出かけたことがない。

 今回は、私の歓迎会を兼ねて、少し遠出をすることになった。

 目的地は、ツバイ、ウォーミアと並ぶ大きな神殿のある西のハロスカ。

 

 ハロスカに行くには、特急「ビヒモス」を使うのが一番オーソドックスであるものの、途中のサギタミアまではターキアから直線距離に近いヨーハム線を経由するためウォーミアを経由しない。

 そのため、ウォーミアを経由して途中のナギヤまで行く急行「アサム」を利用することにした。

 というのも、マリエラもハロスカやその途中のカンセイなどに行く際にはターキアやヨーハムから特急「ビヒモス」を利用していて、キット線経由で行ったことがないためでもある。

 マリエラも私に毒されて、鉄道に少し興味を持ったようだ。

 

「えと…アサムのナギヤ行き…まだ時間あるわね」

 パタパタと回転式行先表示板の表示が変わるのを見ながら、乗車予定のアサムの乗車番線を確認する。

 ウォーミアは、1~6番線がターキア方面(実際には順に1・2番線がモオーシ線・センディ本線の電車線、3,4番線がモオーシ・センディ本線の蒸気機関車列車、5,6番線がキット線系統)で、7番線がモオーシ線電車、8番線がセンディ本線電車、9,10番線がモオーシ・センディ本線の特急・急行・準急列車、11,12番線がキット線になっている。

 アサムは12番線のキット線急行ホームから発車する。

 マリエラが列車の中で食べるお弁当やお菓子を買いに行っている間、私は回転式行先表示板を眺めていた。

 7番線がウツロマーやその途中のコガイー止まり、8番線がトリーダやツクビア、そして先日行ったナータム。

 9,10番線はセンディ、サフロ、アータ、モオーシ。

 11番線はタキサカやカグハ。

 行ったことのない駅がたくさん出てくる。

 今回はタキサカやカグハは通るが、センディやモオーシに行く日はいつか来るのだろうか。

 そして、回転式行先板に急行「アサム」しか行くことのない「ナギヤ」という文字が現れた。

 

 それから10分ほど後、急行「アサム」が入線する。

 見慣れたウォーミアの街を離れ、列車はまずタキサカへ向かう。

 車窓自体は、センディ本線のウツロマーに向かう風景に似ている。

 二つ先のアギオの駅を超えると住宅の間隔があき始める。

 このアギオはキット本線がウォーミアから、ヨーハム線と合流するサギタミアの間でウォーミアの次に乗降客の多い駅である。

 急行「アサム」が止まらないのは、ナギヤ・キットまで乗り通す長距離客と、タキサカくらいまでの間の短距離客を分離する狙いもあるようだ。

 なおカグハまでしか行かない電車準急「カグハ」はアギオも停車する。

 

「だいぶ家がなくなってきたわね」

「そうですね、先ほどカグハを過ぎましたので、すでにカンセイ県に入ってますね」

 そういえばキット本線では王国首都圏はカグハの少し前のタキサカまでだった。

「カンセイ県は王国首都圏比べるとどんな感じなの?」

「そうですね…県都のカンセイは商人の町と言われていますね。

 王国首都圏よりも物価が安く、しかも首都圏やセンディ県までも列車で行ける利便性もあるので、カンセイは活気ある町ですよ」

 王国第3の都市、カンセイ。

 先日気まぐれに買った地図帳にカンセイはそんな風に書かれていた。

「まぁ、まだだいぶありますし…お弁当でも食べましょうか」

「…そうしよっか」

 

 列車は順調に西へと走る。

 カタタン、カタタン。

「…」

 久しぶりに駅前に大きなビルが見える。

「サギタミアですね。

 いい温泉あるんですけどねぇ…」

「温泉?」

「そう、温泉です。

 以前はサギタミア温泉といえば、湯治客でにぎわってたんですよ」

「…今はあんまり?」

「ええ、ヨーハム線が開通して、ターキアから簡単に来れるようになったので、日帰り客がほとんどで泊まる人が減ったらしいです」

 交通が便利になると、よくあるパターンだなぁ…。

「まぁ、日帰り温泉としては人気あるので、また別に来ましょうかね」

「…それはいいわね…」

 マリエラといつ実現するともしれない約束をする。

 サギタミアでは、ヨーハム線の電車のほか、別の線路が見えた。

「…あれがサギタミア鉄道かな?」

「ですかね。

 南に向かってますし、あれでしょうね」

 サギタミア温泉の温泉街にはサギタミア鉄道で行くというのを確認している。

 南に向かう線路は一つしかなかったため、それがサギタミア鉄道であろう。

 

 キット線はサギタミアを過ぎると基本的には住宅もまばらで、海も見えない雑木林の中か、トンネルかどちらかしかない路線である。

 例外は、この次の急行停車駅、ジツオムである。

 ジツオム周辺は紅茶の産地であるため、窓を開けて紅茶を買う。

「おいしいですねぇ…」

「…ホッとするわね…」

 マリエラと私は買った紅茶を飲んで少し和む。

「これも食べましょうか」

 出してきたのは紅茶を練りこんだクッキー。

 甘いものは私もマリエラも大好きで、しばしティータイム。

 店では毎日しているが、こうして列車の中でするティータイムは楽しかった。

 

 そして小さな神殿のあるアッタをすぎると、この列車の終点、ナギヤに着く。

 私もマリエラも、ここから特急に乗り換えたかったのだが、時間が合わなかった。

 そこで、ここでは私らしい方法で時間をつぶすことにした。

 そう、列車に乗る。

「…こういう時間のつぶし方もあるんですねぇ。

 私ここ初めて乗りますよ」

「…だろうねぇ。

 この列車ちょうど接続してたんだよねぇ…」

 ナギヤからちょっとだけ出ている国鉄線、ナギヤ線。

「湖はこの先キットやカンセイのあたりで少し見えますが、ナギヤから湖に向かうのは初めてです」

 とりあえず、ナギヤ線の発車する0番線に向かい、乗り込むとちょうどドアが閉まった。

 それから3分程度。

 列車は終点のナギヤ湖畔に着く。

 

「これ湖?」

「そうですよ。

 ナーパム王国最大の湖、カンセイ湖です」

「…大きいわねぇ…」

 島国であるナーパム王国には湖は少ないものの、その中では最も大きな湖である。

「お昼ご飯、食べましょうか」

「そうね…何か名物でもあるの?」

「ナメジですね」

「…それ、何?」

 聞いたことのない食材だ。

「長くてぬるぬるした魚?ですね。

 たれをつけて焼くのがおいしいんですよ」

 アナゴか?ウナギか?そんな感じの魚のようだ。

 

 ナギヤ湖畔でナメジのかば焼き(なんだか別の名前がついていたが、私にはウナギのかば焼きにしか見えなかった)を食べて、ナギヤ湖線のナギヤ行に乗り込む。

 この列車はナギヤで臨時急行「ハロスカ」に接続する。

 臨時列車とはいえ、休日ごとに走っている急行列車である。

「…キットでフサイ線方面の急行からの接続を図るためこの時間になったようね」

「あぁ、ターキア方面からだと、ハロスカまでは毎日運転の特急がありますからねぇ。

 フサイ線方面からの乗客のための急行なんですね」

 急行「ハロスカ」に乗り、しばらく行くとキット。

 今まで乗ってきたキット線の終点である。



 

  乗車録: ナーパム王国国有鉄道 キット本線 ウォーミア~キット

                  ナギヤ線 ナギヤ~ナギヤ湖畔

 

鉄道マニアの列車待ち時間のつぶし方、鉄道に乗る。

※9/1に修正しました。設定上「サギタミア」だったのに「サナタミア」と誤記していたので変更しました。

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