9.北の神殿町 モオーシ鉄道
「期間限定」、この言葉に弱い方、いらっしゃるのでは。
旅行から帰ってきて2か月ほど忙しい時期を過ごした。
というのも夏が近づくこの時期は、冷房魔法具の販売が劇的に伸びる時期で、ヒルデ魔法店も同じように忙しい時期を過ごすことになっていた。
そんな書き入れ時が過ぎ、残暑の厳しい時期になった。
仕事が終わった後、今月の時刻表を見るとはなしに見ていると、先月号にはなかった項目を見つけた。
『ハラキ線』と書かれたその部分は、ターキアからの直通列車を含めすべてが臨時列車。
すべての列車が今月12日~18日にしか運転しないという路線だった。
いろいろ調べてみると、モオーシ線の途中駅、ハラキの町で夏祭りが開かれ、そのメイン会場が普段は貨物線のハラキ港駅付近なので、年に1度こうして臨時列車を走らせるらしい。
忙しい時期が過ぎ、今月12日~15日は夏休みとなるのがナーパム王国では普通だった。
そして一日ゆっくりした13日の朝、私はウォーミアの駅でモオーシ線の急行「トキムイ」3号に乗り込んだ。
モオーシ線は特急「ドラゴン」と急行「トキムイ」が走っているが、特急「ドラゴン」はセンディやサフロまで行く人が多いらしく、混雑していたので、急行「トキムイ」を使うことにした。
普段は比較的すいている急行だが、三等自由席は完全に埋まっており、三等指定席も満員な上自由席の乗客が指定席の周囲にも立っておりかなり混雑、私はそれを見越して二等指定席を取ったためそこまで大混雑はしていなかったが、席は埋まっていた。
ツバイ鉄道乗り換えのトリーダを過ぎると田園地帯にまばらな住宅があるだけのいつもの車窓である。
そして先日行ったナータムを発車し、次のハトールに停車する。
普通列車をここで追い抜いたが、普通列車もかなり混雑していた。
そして目的地のハラキに到着すると、いつも使われていないらしい0番線に列車が止まっていた。
すでに、祭りは始まっており、一番列車はターキア始発の急行「トキムイ」81号がハラキ港行き臨時列車として運転しており、ターキア方面からの乗客はすでに輸送を終えている上、この列車は3本目なので少し空いていた…最も座席は埋まっていたが。
こんな時期に旅行するもんじゃないな…そんなことをもいながら、ハラキ港に向けて列車が発車する。
何もないローカルな路線…ナギヤ湖畔のほうが車窓にはいろいろあったぞ。
沿線には『ハラキ港線を旅客路線に!』という看板がみられたりもした。
5分ほどで終点のハラキ港に到着すると、10分後に列車が折り返す。
こちらは打って変わってガラガラの列車になる。
まだ日も高く、帰る客はいないのだろう。
ハラキに戻ると、ターキア行の特急「ドラゴン」が隣に待っており、ハラキ港線の列車から降りた人の多くはこれに乗った。
それを見送りながら私は、来た時と同じホームにもう一度戻り、急行「トキムイ」5号を待つ。
これもハラキのホームで見ているとかなり混雑していたが、ハラキで乗客が下り、自由席でも座ることができた。
そして、この列車でモオーシに向かう。
モオーシに着いたものの、しばらくここで接続待ちになる。
モオーシという発音しにくい町は、モオーシ線の主要駅の一つで、この駅からセンディ県に入る。
県都センディはまだ遠いが、県名の由来になったセンディ神殿はこのモオーシの近くにあり、モオーシ鉄道でセンディ神殿に向かうことができる。
この辺の名物である「小分けうどん」で昼食を済ませた後、モオーシ鉄道のホームに向かう。
すぐにローカルの電車が入ってきた。
国鉄モオーシ線の特急の混雑を知ってか知らずか、人はほとんど乗っておらず、ゆっくりと旅が出来そうだ。
猫が歩いているのも見えるようなゆっくりしたローカル私鉄は、どんどん山の奥に向かっていく。
そして終点、センディ神殿に到着した。
神殿町で30分ほど待つと、山を越えてトクリム山駅に向かう乗合馬車がある。
乗合馬車は神殿町を出た際には空いていたが、トクリム山に向かうにしたがって登山を終えた人たちで混雑するようになり、トクリム山駅に着く頃にはかなり混雑していた。
トクリム山の駅で45分ほど待つことになるが、この乗合馬車は隣のトクリムの駅まで出てしまうためほとんどの登山者はそこまで行ってしまう。
トクリムの駅まで馬車に乗れば一つ前の普通列車~ハラキから特急「ドラゴン」に乗り継げるが、もちろん、乗りつぶしをするため私はここで列車を待つ。
40分後、客車列車が蒸気機関の轟音とともに到着、5分後に発車した。
このころにはすでに日もとっぷりと暮れていた。
列車はトクリムに到着。
そして次の目的の列車すぐに表れる。
急行「オグワイ」、センディ本線のアータとターキアの間を、トクリム線、モオーシ線経由で結ぶ遠回り急行。
1日2本しかこの急行がないため、このルートで何とか回れるように時刻表を眺めたらこのルートがちょうど回れたので、最高のルートと言える。
最も、すぐに未乗区間は終わり、トーカリからモオーシ線に入る。
その後、ハラキ、ナータム、トリーダを通り、ウォーミア到着は22時を過ぎていた。
もちろん帰って今回の旅の土産話をしたマリエラから、苦笑されたのは言うまでもない。
乗車録: ナーパム王国国有鉄道 モオーシ線 ウォーミア~モオーシ
ハラキ港線 ハラキ~ハラキ港(貨物線だが、夏季数日のみ旅客営業)
トクリム線 トーカリ~トクリム、トクリム~トクリム山(山線)
モオーシ鉄道 モオーシ~センディ神殿
ハラキ港線のように毎年期間限定で営業運転する路線としてはあまり聞きませんが、JR四国・予讃線の津島ノ宮駅が1年に2度だけ営業する駅として有名です。