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8.旅の終わり ナーパム王国国有鉄道 ヨーハム線 サナタミア~ヨーハム

歓迎旅行編最終回。

帰りにも未乗路線はあるもので…

 

 ナオグラで再びスープスパの昼食をとった後、急行「ウズエア」が来るのを待ってマリエラと私は乗り込んだ。

 特急「ビヒモス」はフッキーのあとハロスカまで止まらないが、急行「ウズエア」はオグリア、オゴールと地方都市の駅を停車していく。

 そして、家が少し出てきたかと思うと、マリエラの行きたかったオノマクに到着し、半日ほど観光した。

 とはいえ、あれだけ行きたがっていたオノマクだというのに、マリエラはいまいち乗り切れていないようだ。

 後になって聞いてみると、「どうやらあなたの熱がうつってしまったようで」と頭をかきながら、鉄道に興味を持ったと話していた。

 うれしいような、恥ずかしいような…私の鉄道趣味は誰にも理解されなかったため、一緒についてきてくれる人がそう思ってくれるのはうれしかった。

 

 オノマクから乗車した急行「ウズエア」がミヤスに到着する頃には、ほぼ日が落ちており、マリエラは宿に戻る前にミヤス海岸にもう一度行きたがった。

 ハロスカ県営鉄道に乗り換えて再びあの夜景をしばらく眺めることにした。

 今回は一日券ではないので、駅から降りて海岸からハロスカの町を眺めた。

 つき始めたまばらな灯を見ながら、異世界であることを忘れるくらい、この町は美しいと思った。

 

 旅行三日目。

 朝早くに宿を出て、グレスから再び県営鉄道に乗車してハロスカに向かい、今度は特急「ビヒモス」に乗った。

 朝1本だけあるハロスカ始発の「ビヒモス」52号が空いていると思い、乗車してみるとその考えはぴったりで、かなりガラガラであった。

 数日前に乗車したカンセイ本線を東へ進む。

 行きとは逆に山側に陣取って車窓を楽しむことにする。

 

 この旅行はかなり内容の濃い旅行だった。

 ナギヤとカンセイ湖畔、ハロスカ神殿、フッキー港、オノマク。

 そしてマリエラの言葉。

 そんなことを考えながら車窓を眺める。

 ガタン!

 大きな音でポイントを越えた音がすると、ハロスカ県の東端、ビマスに到着する。

 ビマスはカンセイ県の西から続く魔法具工業地帯の西端に位置する。

 

 ナーパム王国の第三の都市であるカンセイは、魔法具工業と販売で栄えた町である。

 活気としては王国第二の都市と言っても過言ではないのだが、人口ではセンディ県のセンディに抜かれてしまった。

 というのも、人口が増えているのは、このカンセイの隣の市であるビマスとキットで、この二市を足した『カンセイ都市圏』は第二の都市圏になっている。

 そしてカンセイからこのビマスまでは国鉄のほか、カンセイ急行とカンビ急行の二つの大手私鉄がつないでおり、しのぎを削っている。

 

 ビマスを出ると山側には一つの線路が離れていく。

 これがカンセイ急行で、比較的山手側を走る路線なので、地価はこちらの方が高い。

 これに対しカンビ急行は下町を走り、リーズナブルな地価と言われている。

 ビマスを過ぎると次はカンセイ、そしてキットへと向かう。

 キットを説明するには、以前存在したキット・カンセイ地区を中心にするハロスカ王国の説明が必要になる。

 ハロスカ王国は、今回の旅の目的だったハロスカ神殿を中心に作られた町で、その際国境があったのがこのキットだった。

 とはいえ、今ではキットを超えて王国首都圏のすぐ近くまでカンセイ県があるように、当時から国境などあってないようなもので、キットは「ナーパム王国とハロスカ王国の中継地点」という位置づけで発展してきた。

 そしてハロスカ王国がナーパム王国に吸収されてからも、キットは王国首都圏とハロスカの中継地点として発展した。

 しかし、産業革命で魔法具工業が盛んになると、すでに町が形成されていた場所ではなく、魔法具工業の会社はサフロ~センディ、フサイ~オエノ、そしてカンセイ~ビマス、フッキーなどの人口の少ない場所に工場を建てたため、カンセイやセンディといった新興都市が形成された。

 当然、ハロスカやキットなどすでにあった都市は従来通り人がいたため、特有の文化が形成されたが落ち着いた町として発展も衰退もしない町に代わっていった。

 しかしキットはカンセイから比較的近かったため、カンセイの衛星都市として再発展するという新旧の文化が融合する珍しい町になっていた。

 

 キットはゆっくり観光しようと思いながらカンセイ湖畔を通り、ナギヤに到着した。

 思えば今回の旅はここからスタートしたようなものだったなぁ。

 そんなことを思いながら、車窓を眺めていると、すっかりカンセイ湖畔が遠くになっていた。

 ガタン!

 そしてキット本線をひたすら走る特急「ビヒモス」52号がポイントを渡ると、サナタミアに到着。

 ここからは未乗路線・国鉄ヨーハム線である。

 

 ヨーハム線はいったんキット線がタキサカ経由でウォーミアからサナタミア、さらにナギヤ、そしてキットまで開通した後に開業した路線である。

 ターキアからキットに向かうキット本線は、センディ本線とともに最初から計画されていたものの、ルートがなかなか決定しなかった。

 案としては、①ヨーハム経由でサナタミア温泉街を経由してジツオム、ナギヤそしてキットに至るルート、②センディ本線と並行しウォーミアからタキサカを経由してサナタミアの街をかすめてジツオム、そしてナギヤ、キットに至るルート、そして③センディ本線と並行してユザイからトマ、フサイを経由して北ルートでキットに至るル―トが選定された。

 このうち、③の北ルートは将来の魔法発電による電車化を見据えた場合、ターキアからユザイまで電車化できるかどうかがかなり厳しかったことで候補から外れる。

 そして有力なのは、比較的大きな港町の①ヨーハムを経由するルートが、当初は現在のサナタミア鉄道のサナタミア温泉駅付近にサナタミア駅を設置し、その先のジツオムに向かう予定にしていた。

 このルートには決定的な欠点があり、サナタミア付近は山に囲まれる地形で、サナタミア温泉からジツオムに向かうルート上のトンネル掘削を調査したところ、数多くの湧水があることがわかり、サナタミア温泉~ジツオムは「工事不能」と判断された。

 これに対し、ウォーミア~サナタミア北部~ジツオムの区間であればトンネル掘削に問題がないと判断され、キット本線はウォーミア~サナタミア北部(現・サナタミア)~キットを経由することになった。

 最も、当時のヨーハム経由は海岸線に近すぎ、地震による津波でもあれば長期不通になる可能性があったことも舞いなすポイントとされる。

 その後、ターキアからカンセイまでの距離を短くすることを目的とし、また現在のヨーハム~サナタミアであればトンネル掘削技術も向上し、サナタミア温泉~ジツオムに比べれば湧水もそこまで激しくないため、現在のヨーハム線が開通した。

 こうしてキット本線はウォーミア~キットであるものの、ターキア~キットはヨーハム線経由という形態が生まれた。

 

 付近に湧水多いサナタミアは、温泉が湧いている以上に王国有数の湧水を持ち、紙の産地としても有名である。

 そんなサナタミアを通り過ぎ、海辺沿いを走ると、ヨーハムに到着した。

 ここからターキアの間も未乗ではあるのだが、ここで私たちは特急「ビヒモス」を降りた。

 そしてここから乗るのは、おなじみウォーミア鉄道である。

 ウォーミア鉄道を使うと、ヨーハムからウォーミアまではすぐである。

 ついでに言えば、ウォーミア鉄道のヨーハム~ウォーミアだけ未乗だったので渡りに船というルートでもある。

 

 こうしてヒルデ魔法店の新人歓迎旅行は終了した。

 最も次に新人はいつ入ってくるのか、それは謎だが。

 


  乗車録:ナーパム王国国有鉄道 ヨーハム~サナタミア

      ウォーミア鉄道本線 ウォーミア~ヨーハム

 

ようやく新人歓迎旅行が終了。

ちなみにスープスパのイメージはとんこつラーメンで、フッキーは九州・福岡、マリエラが生きたがっていたオノマクはその帰りに通る山陽本線の尾道のイメージです。

ネタはいろいろ詰め込みましたが、鉄道敷設あるあるをいろいろ入れたつもりです。

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