プロローグ:異世界召喚
新作です。
前作に引き続き、鉄道ネタ。
普段と変わらない会社帰り。
少し仕事がうまくいって上機嫌で歩いていた私、上条はるみ。
28歳独身、彼氏なし。
趣味は鉄道に乗ること…女子としては珍しいらしいけど、お父さんとお兄ちゃんの影響。
有休もたまってるし、一日くらい休み取って土日合わせて旅行に行くのもいいかなーとか思いながら家に向かって歩く。
「…?」
いつも通りの道、いつも通りの風景。
しかしその日、一つ変わったことがあった。
「…猫だ」
ふと前を見ると猫が歩いているのが見えた。
私はなぜかその猫が気になってついて行ってしまった。
「ニャーン♪」
その猫が鳴いた瞬間だった。
まばゆい光に私は包まれ、私の意識は暗転した。
「…ご、ごめんなさい!!」
「…?」
その一瞬のあと、私は唐突に謝られることになる。
目の前にいるのは見たこともない女の子、年齢は15歳くらい?
「試しにやってみた魔法が出来ちゃうなんて、思ってなくて…」
「ま、ほう?」
何言ってんだこの子。
「…あなたは?」
「あ、ごめんなさい、私はマリエラ・ヒルデ。
このウォーミアの街で魔法店を営んでる魔法使いです」
「…えと…つまり…」
「貴方の住んでいる世界とは異なる世界です。
私、ちょっと忙しくて助手がほしいなぁ…と思いながら魔法使ったらできちゃいました…」
「…えっと、つまり…その私がいた世界と違う…その、異世界? で、あなたが魔法使い?」
「ええ、そうです…」
マリエラと名乗った少女は申し訳なさそうに答える。
「あ、もちろん、あなたの住んでる世界にお返しすることはできます。
先ほど召喚した直後の時間に合わせて…ただ、お返しするためにこちらの世界で1年程度お待ちいただきたいんです。
貴方を戻せる程度まで魔力をためないといけないので…」
「…ふぅん…」
聞きたいことはすべて彼女が答えてしまったので、私は手持無沙汰気味に相槌を打った。
「あ、私は上条はるみ、よろしく。
まぁ…元の世界に帰れるならいいけど…で、助手って?」
「あ、ハイ…魔法店の帳簿付けとか、あとご飯作ってもらったりとか、そういうことを頼めればいいんですけど…。
もちろん、お給料お出ししますし、三食と住居は保証します。
お仕事は日に6時間程度の拘束時間です。
週に2日と、半年に5日、お休み獲ってもらえるようにしてます」
帳簿付けは一応経理をやってるので得意分野だ。
「…なるほど、まぁそのくらいなら…お給料っていくらくらい?」
なんとなく冷静でいる私は、いろいろ聞いてみることにした。
「…銀貨20枚なら出せます。
三食と住居があれば大丈夫だと思います」
さすがに異世界なので、通貨価値がわかりにくい。
しかしポッと召還した人に給料出せるんだから、この子結構儲かってるみたい。
「…いいでしょう、助手やるわ。
それ以外やることもなさそうだし」
「ありがとうございます!」
そう言ってマリエラは私の手を取った。
次回、第1話でまずは鉄道にファーストコンタクト。