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23.お塩を大量に所望です




「二十五を過ぎても相手を探さないアイツに、ヤツを好いていた王女との縁談を調えてやったのに、『誰も愛する気はない』とか言って断ったんだよ。アンタもその台詞言われただろ?」

「…………」

「政略結婚だと愛のない結婚はザラにあるが、アイツは特別だな。本当に誰に対しても愛さない姿勢を貫いてたもんな。アンタも虚しい結婚生活で、今までの縁談相手みたいに泣いて逃げ出すのって時間の問題じゃないか?」



 王子はニヤニヤしながら言葉を続ける。

 レスカさんが下を向き、唇を強く噛み締めて震えている横で、私は涼しげに微笑んでみせた。



「私は伯爵閣下を心から愛しておりますので。閣下に愛されるまではいかなくとも、好かれるように精一杯努力いたします。御心配下さりありがとうございます」



 フンだ、そんなやっすい煽り台詞、私が家族から受けた数々の暴言に比べたらへっちゃら屁の河童だわ!

 そんな泥に塗れた台詞、しっかり磨き直してから一昨日きやがれバーカバーカッ!!


 ……おっといけない、言葉がお下品に……オホホ。


 

「……へぇ? 大抵の女は、これだけ言われると泣いたり喚いたりするのに……」



 王子は意外そうに私を見つめると、口の端を大きく持ち上げた。



「あんなすげぇ魔法も使えるし、アンタ気に入ったよ。俺の愛妾にしてやる。俺はアイツと違って、アンタを愛してやれるぜ? 愛される人生を送れるんだ、俺の所に来た方が絶対に幸せになれるぜ?」



 至近距離で顔を覗き込まれ、頬を撫でられながらそんな台詞を言われる。

 再び鳥肌がブワッと立つも、心の中でアッカンベーをしながら小さく笑みを返し、頭を下げた。



「勿体無いお言葉、恐縮でございます。しかし申し訳ございませんが、私は結婚をしている身ですので……。お心遣いありがとうございます」

「結婚してても関係ねぇよ。俺も妃いるし? 向こうも何人か愛人作って遊んでるみたいだけど、俺には関係ねぇし」



 いやいや十分関係あるでしょ!!

 こんなんが次期国王と王妃なんて、本当大丈夫なのこの国は!?



「アンタが出て行っても、アイツは屁とも思わんだろうよ。アンタをこれっぽっちも愛してないんだしさ。さっさと出て俺んとこに来いよ。たっぷりと可愛がってやるからさ?」

「…………」



 ぐぅっ、コイツは……っ!


 ――っといけないいけない、相手は王族、王子。

 冷静に冷静に……。



 私は心底申し訳無さそうな顔をして王子に言った。



「恐れながら申し上げますが、あの魔法を使用したのは私ではございません。先程まで、偶然ここを訪れていた魔導師様がいらっしゃったのです。彼は魔物を倒すと、先を急ぐからとすぐに飛んで行ってしまわれました。町の者達を助けてくれたお礼もしたかったですのに、残念です」



 フワは、王子が私を支えてくれた時、『ついさっきまではいなかった』と言った。ということは、彼は私が魔法を使う場面を見ていない筈だ。魔物が倒された直後辺りにやってきたのだろう。

 なら、いくらでも虚偽が出来る! 証拠が無いからね!

 旦那様の約束を守る為なら、私は王族にでも堂々と嘘をつく! 勿論バレないように!



「……ふぅん、そうなのか……? イマイチ納得いかねぇが、嘘をついてる感じじゃねぇな……。俺は顔を見ると、嘘ついてるかついてねぇか大体分かるんだよ」



 フフン! 常に姉の顔色窺って、機嫌を損ねないように姉の望む喜怒哀楽の表情を本気で作ってたからね! 表情の演技には自信があるのよ!



 ――って、さっきから家族にやられた手酷い数々が役に立っている……。

 そう考えると、今までの辛さや苦しみも無意味じゃなかったってことかな……。



 どんなに思い出したくない出来事でも、自分が生きていく故で決して無駄にはならないんだ――



「――やれやれ、今は何を言っても平行線か。今回は大人しく引き下がってやるが、近い内にまた会おうぜ、“お嬢さん”?」



 王子はそう言って私に笑みを向け手をヒラリと振ると、朱い髪を翻して去って行った。



 貴方にはもう二度と会いたくありません!!

 それに“お嬢さん”ではなく“ウルグレイン夫人”だバーカッ!

 もうここには来るなーーっ!!



 彼の消え行く背中に、心の中で罵倒し大量の塩をパッパと撒いていると、レスカさんが勢い良く謝ってきた。



「すまない、ユーシア! 魔法を使わせてしまって……。父さんにも口を酸っぱくして言われていたのに……。だがお蔭で親子は怪我も何もなく無事だったし、私もあのままだったら多勢に無勢でやられていた。本当にありがとう……!」

「そんな、謝らないで下さい。レスカさんとあの親子が無事で何よりですよ。ヴォルターさんには、私から『レスカさんは私と町の人達を守る為に精一杯頑張った』って伝えます。本当のことですから」



 私がニッコリ笑って言うと、レスカさんは目を潤ませて唇を噛み締め、私の身体をギュッと抱きしめてくれた。





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