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22.超ヤバい男が現れた




 フードの男性は、私を抱きしめる腕の力を緩めず、痛いほど私を見つめている。

 私は何とか誤魔化す方法を考えながら、身動ぎしつつ言った。



「あ、あの。その前に離して頂けますか? もう一人で立てますので……」

「嫌だね。返答がまだだし、アンタ何だか抱き心地がいいんだよ。何ならこのままキスしてもいいんだぜ? 可愛いお嬢さん?」



 私はフードの男性のその発言に、ブワワッと鳥肌が強く立つのを感じた。しかも言葉通り、徐々に顔を近付けてくるではないか!

 初対面なのにキスとな!? 何考えてんだこの人っ!?



『わぁ、超ヤバい男が現れた』

(フワッ!? 何でそんなに冷静なの!? 確かにヤバい人だけれども!! 爪で引っ掻いて逃げていい!?)

『私が昔やってた逃げ方だね。でも大丈夫だよ』

(大丈夫って何が――)



「貴様ッ!! ユーシアから離れろッ!!」



 その時、レスカさんの怒声が聞こえたと同時に、フードの男性が私を素早く離して後ろへと跳んだ。

 間も置かず、彼がいた場所をクナイが勢い良く突っ切っていく。

 突然支えが無くなりよろめく私を、駆け付けたレスカさんがサッと抱き止めてくれた。



「大丈夫か、ユーシア! すまない、遅くなった。あの親子の安否の確認をして逃がしていたんだ」

「だ、大丈夫です。ありがとうございます、レスカさん。助かりました……」



 私はレスカさんが来てくれたことに、心から安堵の息をついて微笑んだ。



「その珍しい黒髪に、レスカと言う名前……。アンタ、ウルグレイン伯爵んとこのだろ? 美人だから覚えていたぜ」

「……! 何故貴様がそんなことを知って――?」



 レスカさんがフードの男性を睨みつけると、その顔はすぐに驚愕へと変わった。



「……ルーファ殿下っ!? 何故ここにいらっしゃるのですか!?」



 え、“殿下”っ!?

 この国の王子様ってこと!? この超ヤバい人が!?



「まぁ、お忍びの視察ってことで。さっきの俺への言葉遣いと武器を投げたことは大目に見てやるよ。俺もフードを被って怪しい男化してたしな」



 そう言うと、彼は頭に被っていたフードをバサリと取った。

 鮮やかな朱色の腰まで届く長髪で、同じく燃えるような朱の瞳。それは王族が生まれ持つ色だと、以前書物で読んだことを思い出した。



『プラス超ヤバい男化してるよね』



 フワのツッコミに、私は思わずブホッと吹き出しそうになるのを必死に堪えた。

 危ない危ない、王族への不敬罪で捕まるところだったわ……。全くフワったら!



「アンタが一緒にいるってことは、そのお嬢さんもウルグレイン伯爵んとこのか?」



 私はその問いにレスカさんから離れ王子に向き直ると、作法の先生に習った通りにカーテシーをし、口を開いた。



「御挨拶が遅れまして大変申し訳ございません。ルーファ・レダ・テオドルト殿下に御挨拶申し上げます。先程は助けて頂き誠にありがとうございました。私はユーシア・ウルグレインと申します」

「ウルグレイン……? アイツには兄弟はいなかった筈……ってことはアンタ、アイツの奥さんかっ!?」



 お辞儀をしたままの私に、王子は心底といった感じで驚きの声を上げた。



「……ははっ! そうか、縁談相手に逃げられ続けたアイツがとうとう結婚したのか!! 周りから結婚をせっつかれて縁談相手を探し始めたのはいいが、もう面倒臭くなってアンタに妥協したってことかね。――なぁアンタ、アイツに全く愛されてないんだろ? よく結婚する気になれたな? 愛されない結婚をして虚しくならないのか?」

「……っ!」



 カッとして言葉を発そうとしたレスカさんに、私は視線を投げて王子に分からないように小さく首を振る。

 レスカさんはそれに気付いてくれて、グッと口を噤んでくれた。


 王族に口答えしたり刃向かったりしたら、後々面倒なことになるからね……。





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