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21.いきなりバレた!?




「馬鹿なっ! 何でここにゴブリンどもがっ!?」



 レスカさんが髪と同じ黒色の瞳を大きく見開き、数十匹はいるであろうゴブリン達を凝視する。

 彼らは棍棒やナイフ、鉄の棒等、様々な武器を持っていた。目の前にいる親子を明らかに狙っている。中にはホブゴブリンと思われる、一際大きなゴブリンもいた。

 旦那さんらしき人が、奥さんとお子さんを背中に隠し、木の棒をブンブンと振り回して威嚇している。だが襲い掛かられるのも時間の問題だろう。



「くそっ、かなり数が多いな……。助けを呼びに行っても間に合わない。私が何とかするしかないか……。――ユーシア、私はあの親子を助ける。お前はヤツらに見つからないようにこの樹の陰に隠れていろ! 動いたら絶対にヤツらに見つかるから、決して声を出さずにジッとしてるんだぞ!!」

「レスカさん! 一人じゃ危――」



 私が制止する前に、レスカさんはクナイという武器を両手に持ち、素早く飛び出して行った。

 クナイは、平らな鉄製の爪状をした小さなナイフみたいなもので、投げたり切ったりと便利なものらしい。

 野宿時にフライパン代わりにも出来るそうだ。まさに万能武器!


 レスカさんが親子の前に立ち、勇敢にゴブリン達と戦っている。

 素早い動きでクナイを振り回し、突然現れたレスカさんに憤慨して次々と襲い掛かるゴブリンの息の根を確実に止めている。見事なほど華麗な捌きだ。


 しかし、あの大量のゴブリンを相手に、親子三人を守りながらの戦いは明らかにこちらの不利だ。

 動きが鈍り、いつか必ず隙が出来てしまうだろう。それに、今はレスカさんに一匹ずつ襲い掛かっているが、一斉にまとめて来られたら――



「ど、どうしよう……! 私の『破壊魔法』は一体が対象で演唱も長いから、例え一体だけ倒していっても、いずれは絶対こっちに気付かれる! そうしたらレスカさんの守る対象が増えて更に負担を掛けちゃう……! あぁ、本当にどうしたらいいの……?」



 私が焦って小さく唸っていると、フワが話し掛けてきた。



『その魔法を魔物全体に放つイメージをしてみて。全体攻撃になるから威力は下がるけど、あんなクソザコども相手なら、威力弱くても十分に倒せるよ』



 ちょっ、『あんなクソザコども』ってフワさん!? いきなり口が悪くなってどうしたの!?

 ゴブリンに何か嫌な思い出でもあるのっ!?


 ――あぁ、突っ込んでる暇はない! 急いで魔法の演唱をしなきゃ!

 旦那様との約束に反してしまうけど、レスカさん達を守ることを優先させて貰います! ごめんなさい旦那様……!



「フワ! 周りに人の気配はない? 大丈夫?」

『……うん、人間の気配は感じないよ。大丈夫』

「ありがとう! もし気配を感じたらすぐに教えてね?」

『うん、分かった』



 私はフワにお願いすると、樹の陰に立ち、急いで演唱を開始した。



(ゴブリン全員に放つように強くイメージして……。人は避けて――よし、いける!!)




「“完全粉砕せよ(パルヴァラゼイション)”ッ!」




 私が短く叫ぶと、ゴブリン達の身体が一斉に黄金色に光り、パンッと音を立て、次々と砕け散り細かい砂になって散らばっていった。ホブゴブリンも同様だ。


 そこにいたゴブリン達全員が砂になったのを確認すると、私は深く息を吐いた。



『やったね、ユーシア。大成功だ。ザマーみろゴミクソゴブリンどもが』

「……フワ、やっぱりゴブリンに深い恨みがあるんだね……。可愛い声にその口の悪さのギャップがすごい……。だがそれもいい……」



 ……ん、あれ……?

 広範囲なんて初めてだったから、結構魔力使っちゃったみたい……。強烈な立ち眩みが――



 足に力が入らず、ガクリと膝が折れ、私はそのまま地面に倒れ――



「大丈夫かい、お嬢さん?」



 その声と共に、地面に倒れる寸前に私の身体が二本の腕に支えられ、そのままグイッと持ち上げられ抱きしめられた。



「っ!?」



 目を瞠り見上げると、フードを被った男性の顔がそこにあった。

 フードの隙間から、チラリと朱い髪が覗いている。



(えっ、何時の間にここにいたの!?)

『ついさっきまではいなかったよ』

(へ? どういうこと……? 今突然現れた……?)



 私は動揺を悟られないようにゆっくりと息を吸うと、フードの男性に微笑んで礼を言った。



「あの、ありがとうございます。何故か急に立ち眩みがきてしまって……」

「いや、いいってことさ。それにしても凄かったなぁ、あの魔法! あんなにウジャウジャ涌いていたゴブリンどもを一発で全員粉砕したんだぜ? とんでもなくヤバい魔法だなぁ。――あれさぁ、お嬢さんがやったんだろ?」


「――っ!?」



 私は息を呑み、フードの男性の顔を見た。

 その口は笑っていたが、フードから覗く朱色の瞳は酷く冷たく、私をジッと見据えていた――





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