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18.旦那様の理性が低過ぎる件




 まずいまずい! どうやって誤魔化そう!? でも旦那様に嘘はつきたくないし……っ。


 ふ、フワッ、助けて……っ。



『何とか誤魔化して。頑張って』



 ポイッと丸投げですかぁーーーっ!?



 恐らく真っ赤になっているであろう顔でアワアワしている私をジッと見ていた旦那様は、やがてフッと吹き出した。



「あぁ……本当に可愛いな、君は。――君が何故俺の昔の愛称を知っているのかは、ヴォルターから聞いた、ということにしておこうか」



 ……ん? 何か微妙に引っかかる言い方だな……?

 でもこれ以上追求されることはなさそう……?


 ホッとしている私に旦那様はもう一度笑うと、またもや私の唇に自分のそれを重ねてきた。身体はずっと密着したままだ。



 ……いやスキンシップ激しいな旦那様!? ホント最初のツンケンな彼はどこへ飛んで行ったの!?

 そういうのに全く慣れていない私にとっては、嬉しさより恥ずかしさと戸惑いの割合が大きいのですが……!



「ユーシア? 照れる君も犯罪級に可愛いけどな、もっと甘えてもいいんだぞ。俺は大歓迎だからな」

「……あ、の。今まで甘えたことなくて、甘え方が分からなくて……」



 旦那様の唇を頬に受け止めながら、私が思い切って正直に言うと、彼は途端に冷気を纏う表情になった。



「チッ、あのクソ男爵一家が……っ。もっと激しく『正当防衛』すれば良かったな……」



 鋭い舌打ちと共に低く呟かれた言葉に、私はヒェッと息を呑む。

 私の家族の罪を暴いてくれたことは聞いていたが、そこで何があったかまでは具体的に訊いていなかった。

 けれど旦那様の今の一言で、何となく分かった気がする……。



「少しずつでいいから甘えてくれ、こんな風に。我が儘も遠慮無く言っていい。何かしたいことはあるか?」



 頬と頬を擦り寄せながらの旦那様の問い掛けに、私は少し考えると、一つのお願い事を伝えた。



「では、町に行ってお菓子の材料を色々見て回りたいです! 毎回レモンクッキーじゃ旦那様飽きちゃうでしょう? だから他に旦那様の食べられるものを作りたいんです! レモンゼリーなんかサッパリして食べられそうな予感がしますし! 紅茶を使ったお菓子も美味しそう! 出来れば明日にでもっ!」



 私が鼻息荒く一息にそう言うと、旦那様はポカンとした後、本当に可笑しそうに表情を崩した。



「ははっ! 君は今も変わらず、俺の為に尽くしてくれるんだな。分かった、護衛を付けるから行って来ていいぞ。俺が一緒に行きたかったが、生憎明日は外せない用事があるからな……」

「ありがとうございます! 私は大丈夫ですから、旦那様は御自分のお仕事を優先して下さいね。何なら護衛もいらな――」

「駄目だ。君は俺の妻になり、伯爵夫人になったんだ。護衛は必ず付ける。これは絶対に譲れない。君に何かあったら、俺は気が狂ってしまうからな」



 え、そんな大袈裟な……。



「あと、君の『破壊魔法』は、外では極力使わないで欲しい。万が一君の命が危なくなった時は使っていいが、それ以外は他の者達にそれを決して見せないでくれ」

「え……?」

「君の魔法は、どんなに巨大で屈強な相手でも瞬殺してしまう、恐らく全ての魔法の中で最強級の魔法だ。そんな魔法を使える者は、上に立つ偉い奴らが喉から手が出る程欲しがるに違いないからな。特に王族だ。君が会うことはまず無いだろうが、念の為十分に気を付けてくれ」



 ……確かに、考えてみればそうだ。

 この魔法は戦争で使われたらすごく危険だ――

 


 グッと気を引き締める反面、旦那様の心配する気持ちが十分伝わってきて、私は嬉しさで自然と微笑みながら頷いた。



「分かりました、十分に気を付けますね。ご心配下さり本当にありがとうございます、旦那様。今度お休みの時があったら、一緒にお出掛けしましょうね? その日を楽しみにしています!」



 旦那様はそんな私を何故かジッと見つめた後、突然身体を抱き上げてきた。



「へっ?」



 旦那様は私を抱えたままズカズカと歩き、三人掛けのソファの上に私をそっと寝かせると、そのまま覆い被さってくる。



「え? あの……だ、旦那様……?」

「君が可愛過ぎるのが悪い」



 え!? また責任転嫁ですかっ!?

 待って待って、まさかここで……!? 何がどうしてそんな展開に!?

 いやいや違うよね? ここは執務室だし仕事場だし、公私を混同するなんてこと、旦那様はしませんよね!?

 この伯爵家の主である旦那様がそんなこと――


 ……とか考えていたら口が口で塞がれたーーっ!!

 何気に器用に服脱がされてるし!! ちょっ、昨晩の今日でまだ身体が……っ。



「だ、旦――」

「あぁ、最高に綺麗で可愛いな……。愛している、ユーシア」

「…………っ」



 キラキラと光り輝く微笑みと愛の囁きで、私の制止の言葉が停止して。

 そして私は、ヴォルターさんが呼びに来る夕方頃まで鳴かされ続ける羽目になったのでした……。



 ま、まさか、今晩も……ってことは無いよね?

 無い……よね……?


 ……あぁ……明日、無事に出掛けられるのかしら……。



 ……誰か、誰でもいいから、旦那様の理性を大幅上昇させるものを持ってきてぇーーっ!!





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