表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

テーマ詩集:月

中秋の名月

作者: 歌川 詩季

 うどんも、そばも好きですよ。

 こいつが うどんかそばだったなら

 割った卵を (わん)へと落とせば

 中秋(ちゅうしゅう)の名月にも負けねえ 満月を(えが)けるだろうさ


 とろろが薄雲(うすぐも)みたいに まとわりついても

 白身が(かさ)をつくって

 黄身がまぁるく 浮かびあがりやがる


 濃いくち醤油(しょうゆ)のつゆが 夜空を思わせりゃ

 揚げ玉を星のように散りばめて (えつ)()るよ

 ねぎはもうしばらく わきへ寄せとこう


 なんとも 風流だぜ


 色気と食い気

 花と団子とを

 いっしょくたに楽しめる


 いかにも 風流だぜ


 天と地に

 ふたつの月を()でられるとは

 夜空と(わん)中秋(ちゅうしゅう)の名月


 こいつが うどんかそばだったなら

 そいつを小粋(こいき)(たしな)めただろうが


 あいにく このおれときたら

 (きら)ってこそは いねえものの

 うどんもそばも それほど(この)んじゃいねえ


 あいにく こいつはラーメンだ


 たとえ (わん)へと卵を落とそうと

 薄雲(うすぐも)みたいに まとわりつくとろろや

 星みたいに散りばめる 揚げ玉は似合わねえ


 似合うとしたらチャーシューだ


 そしたら まぁるい この黄身も

 中秋(ちゅうしゅう)の名月っていうより

 チャーシューの名月ってところか


 そんな馬鹿げたことを考えながら

 麺をのばしちゃいけねえと あわててすすりこむ

 こうなっちゃあ うどんでも そばでもおなじことか

 おれには 風流なんて似つかわしくねえようだ


 (わん)の月を崩してやりながら

 もうしばらくは 崩れずにいてくれそうな夜空の月に

 ありがてえと 礼を告げては

 のびねえうちにと あわてて麺をすすりこむ

 ラーメンのほうが好きですけど。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] めっちゃ良きです!! 凄く好きです!!! 目に見えてくる様子、色彩もとても綺麗で、また、美味しそうで、語り口調も楽しいです。素敵な作品を読ませていただき、有り難うございました♪
[良い点] 初めまして通りすがりの読専でございますが『ミカコン11』の主催者様の許しを得てストーカーのように後を追い、参加された著者様の作品の拝見と感想を書かせて頂いております。 [気になる点] 初め…
[一言] ニヒル ナルシスト ハードボイルド なんだかそんな 風 を感じます。 酔える自分がいる ってのは なんとも 粋でいなせな 生き様 主人公が目に浮かびます。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ