上田にて
途中、いざこざがあったりしたが、それほど厄介な事にならなかった。
1つは小夏の服のおかげだ。袴を着、髪を結い、男の格好をしていたため、女が3人いても手出しをする奴らはあまりいなくなった。ただ、頭の悪い馬鹿もいて、悉くしてやったが。
そして、とうとう上田に来た。
堺ほどではなかったが、城下町は賑やかで活気があった。
4姉妹はこぢんまりした宿をとり、作戦を考えた。
「さぁ。どうする?」
「とりあえず、状況を見てきましょ。皆で行く?」
小春の提案に全員でのって、森の中から城を見ることにした。
「おぉー、大っきい…。」
小秋はあっけらかんとしながら、城を見ていた。そのときである。小夏が人の気配を感じた。
「しっ。隠れて、誰か来る。」
4人はハッとして、それぞれ木に隠れた。森の中の小道から現れたのは、3人の男だった。鹿狩りに来たような出で立ちだから、小夏は、奴らは武士だろうと検討をつけた。
気配を消していれば捕まることもないだろう。その後、ゆっくり視界から消えていけばいい。そう思っていた矢先…、
「あがっ…!?」
うめき声が聞こえた。眼と鼻の先から。見れば、小秋が腕を掴まれ、小冬は縄で腕を縛られ、小春は体を地面押さえつけられていた。そして、それを実行していたのは、3人の武士のうちの1人と、武士ではない―忍びのような出で立ちの男―先程見た時にはいなかった筈の男が取り押さえていた。
「ハァ ハァ…。っ、こなっ…」
『駄目よ。呼んだら捕まる!』
小冬は小春に小声で諭されて口をとじたが、相手もそう甘くはなかった。
「もう1人いるのか。お前の身体でも曝け出せば出てくる相手か?」
無表情の男が小春を見下しながらそう言った。小春は、真っ青になっていた。
「……!!」
一瞬、殺気を抑えきれなくなったのが誤りだった。その一瞬で、火縄銃を持っていた男がこちらに発砲してきた。
(嘘だろ…!一瞬の殺気で場所が分かったのか!?とにかく、次の銃を避けながら、姉さん達を解放しないと。どこの誰か知らない奴らに渡すかよ!!)
2度目が発砲された瞬間に首を斬るつもりでいた。そして、2度目が、発砲されてから走っていったが、誤算が招じた。小夏は、ある思い込みをしていた。
鉄砲を撃つことができるのは1人だと。
本命がいるなどということは頭になかったということ。
3度目の発砲音がなったあと小夏はその場に倒れ伏した。
「小夏お姉ちゃん!!」
小冬が叫んで小夏の元へ駆け寄って行った。小夏は脇腹から血が溢れ出ている。脈が弱く、息も荒い。今、命の火が消えてもおかしくなかった。
「其奴は女なのか?」
「…ああ、そうだよ。小夏が女で何が悪い。」
問いかけた男は小春に怯えることなくそう言った。
「うちで治療しよう。付いてこい。」
「…貴方の言ったこと、信用出来る?」
小春が問うと、1人が銃を小春の頭に押し付けた。
「六郎、やめよ。」
六郎といわれた男は不機嫌ながら、銃を離した。
「とにかく急ぐぞ。ついて来い。」




