最初の獲り合い2
「嫌だっ…!小夏!助けてっ…!!」
小春の声で我に返った小夏は大男の一人で、護衛のやつに飛び掛かった。同時に足蹴りを食らわす。
「お前等、姉さんを獲ったとなればどうなるかわかるよなぁ…?」
一人の意識がとび、その男の上に立っている小夏を見て大男らは息を呑んだ、が、頭領らしき男はちがった。
「あぁん?上等な女を獲って何が悪いんだこの野郎。女はなぁ、上等な奴ほど売れるし人気なんだよ。身体を売ってこそ、上等な女の生きる道だろ?」
見物客で町人らはしーんと静まり返ってしまった。
「そうかいそうかい。じゃあ上等な女を捕まえられない部下は要らないってことかい?」
小夏が聞くと頭領らしき男は鼻で笑って、こう言い放った。
「あぁ、そうとも。ようやく俺が言う事の分かる女が現れたか。手足を縛って獲っていこう。お前等、やれ。」
男は部下に命令をしたが、動かなかった。いや、動けなかった。まるで金縛りに遭ったように。
「ふーん。そう。じゃあ、お望み通り、能無しの部下から狩ってやるよ。」
そう言って小夏は一人一人に飛び蹴りやら腰を折ったりしていった。順調に延ばせていたが、頭領の一番近くにいた男に、腕を掴まれ、首を締められようとした。
「ぐぁっ、うぐ…」
身動きがとれなかったが、ぶん殴る機会を見ていた小秋と小冬が駆けつけて殴ったために意識がとんでいった。それの直後に小秋と小冬が、小春がいた頭領の腕に足蹴りをくらわせたため、頭領は崩れ落ち、力が一瞬抜けたため、無事小春は抜け出せた。
「さぁ〜ってと♪残りはお前一人。対するは身が軽い4人。ここで見逃してもいいのだけれど…。」
家の屋根の上にいる小夏たちをみて、
「お、俺は命令されていたんだ…!仕方なくやったんだ…!み、見逃してくれるよなぁ!」
「…。誰に?」
小春の圧のある声で大男は少し怯んだが、「こ、この町の、ぶっ、武士だっ…!」と情けなーく言ってきた。
「へー。そーなんだー。」
「お、俺は行くからな!」
へっぴり腰で道の中央を走っていく姿を見ながら、小夏は、屋根の上を走っていく。
「見逃す訳ねぇだろ。」
ゴン!!という衝撃音の下には、大男が延ばされていた。
「よしっ、完了。」
小夏の声の後にドッ!と歓声があがった。「ありがとう!」「ありがとう!」と。
「あの…。もし宜しければ我が宿に泊まってくれませんか?お代は要りません。こやつ等を抑えてくれたのですから。」
声を掛けてきたのは三十後半くらいの男だった。後ろに子供であろう五つくらいの女の子がいる。
「ありがとうございます。では、お言葉に甘えて。」
4姉妹はその宿に泊まった。
翌日、女の子が部屋にいくと、そこには誰もいなく、「ありがとうございました 目立つのをよしたいので行きます。」という文字が壁にうすく彫られていた―。
4姉妹は上田へ行く。あと少しだけ、旅は続く。