プロローグ
家は伊賀国にあった。もしも両親が生きていたらこうではなかったのかもしれない。
家は両親と4姉妹の6人暮らし。母は四季、父は十蔵、姉妹は、上から小春.小夏.小秋.小冬。貧しい家庭だったが、ある程度の生活は約束された家だった。―母が亡くなるまでは。
その日は大雨だった。重なって、小冬が風を引いた。さらに、運悪く、父は忍びの仕事で夜まで帰ってこない日だった。母は一人で薬草を採りに出かけ、翌日の朝にも帰ってこなかった。父は山に出向いて探しに行ったが、雨に濡れてボロボロになっている籠のみが、木の根元の部分に置いてあったという。
そして、母をなくした悲しみと、母を探しに行った途中に降った雨の影響で、父も又、床についた。もう力尽きようとしているときに、4人の娘を呼び、あることを告げた。
「実は、私の子はお前たちだけではない…。」
「どういうことですか!?父上!」小秋の声を筆頭に、4姉妹は驚いていた。
「今年十五になる息子がいるのだ…」
「じゃあ、私の二つ上ね。」
今、小春は十三.小夏は十二.小秋が十.小冬が九つになっている。
「其奴は馬鹿息子でな。母親と一緒に徳川に下りおった。其奴を討って欲しい。足掛かりが欲しいなら、信州の小県ちいさがたに行くが善い…丁重に扱ってもらえるはずだ…。頼んだぞ、我が娘たちよ…!」
十蔵はそこで事切れた。
「父上〜〜〜!!!!」
最低限の荷を持ってこの家を出る。小冬と小秋は泣いていたし、小春も涙ぐんでいたが、小夏はそうはならなかった。
(兄を見つけて、徳川に復讐してやる…伊賀の皆は徳川に恩があるとか思い込んでいるが、実際は服部半蔵が徳川に仕えていてそこの下僕になっているようなモノじゃないか。仕えるならもっと良いところに仕えてやる。見てろよ、徳川…!) 小夏も信念を胸に4姉妹は旅立って行く―。