表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/14

沼の底

ーーーー旦那(秋目線)ーーーーーーーー

沼の底に俺はいる。

沈む。沈む。手足は動かない。明るい湖面が見えている。上で人の話し声が水の中のこぽこぽと籠った雑音混じりに聞こえている。

 俺はこのまま死ぬのかな。

風花と晃を残して。

仕事場の事故でクレーン車が落ちてきたのはわかった。そこから先はまるで判らない。ずっと沼の底だ。


 時折風花の声が聞こえる。いつもの様に今日一日あった事、晃の様子なんかを聞かせてくれる。が、俺には指一本動かない。リハビリだよ。と、言って何かやっている様だが、俺には他人事の様な感じだ。

 いつまで経っても俺の声は出ない。手足も動かない。ものすごい水圧で押し潰され、バラバラに砕けているのかな。沼の底で遠くからみんなの声だけ聞くだけの毎日だった。

 ぼんやりとはしているが、思考能力は普通にあるのだから、どうしようもない。どれだけの時間がたったのか、流石にこれだけ長く病院にかかってたら、風花達は生活していけるんだろうか?すごく心配だ。

でも今の俺には何も出来ない。もどかしい。


ーーーー風花目線ーーーーーーーー

 ああ、泥沼だ。このままじゃいずれ生活が立ち行かなくなるだろう。借金地獄になるかも?

 かれこれ3ヶ月集中治療室に居る彼を毎日見つつ、やんちゃ盛りの2歳児を世話してる。見兼ねた母親が、晃の事を見ててくれる時間が出来たので、ようやく動ける時間ができたのだ。

 過去の事に囚われて病んでいた私を救ってくれた彼は、私に暖かい居場所をくれた。そしてまだ死んだ訳じゃない。まだ私のそばに居てくれる。

 たとえこのまま泥沼に足を囚われいたとしても、私の頭上からは、明るい太陽の光がさんさんと輝いている。だから私は不幸じゃない。

 大丈夫。まだ大丈夫。


ーーーーー拓目線ーーーーーーーー

あ〜頭ん中ドロドロだ。

 昨日、別れ際風花の心の中を見て愕然とした。

全然大丈夫じゃないじゃないか!

 風花の親に父親は居なかった。いや、存在はしていても、顔を合わせてはいない。大物政治家の私生児で、口封鎖という名の生活費は与えられていたが、(母親が脅したらしい。)結婚を機にそれも無くなっている。

 大学時代、俺の前ではそんなふうにみえなかったが、かなり病んでいた。その穴を埋める様に作品作りに打ち込んでいた。アンバランスな心から生み出すものは、俺には、かなりインパクトあったのだが。才能もあったのだろうが、そのストレスが絡んでいたらしい。

ったく!何で話してくれなかったんだよ!

 そんな時、その父親の支配から解放してくれたのが、今の旦那さんらしい。以降幸せに結婚生活を送っていた。子供も産まれた。

 んで、3ヶ月前の事故だ。

最悪。・・・旦那さん良く生きてたよ。手足バキバキな上、頭も打ったらしく、未だに意識が戻らない。

 このままじゃ、入院費や生活費とやらでお先真っ暗だ。


・・・何とかして助けられないか?


今、俺はこの変な力で、風花の事わかった。

 なら、このまま風花を放っておく事は出来ない。

 俺は、風花を救う方法を考え始めた。








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ