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拓の今後

それからは、早かった。

警察官は、あらかじめ連絡していたのもあり、直ぐにやって来た。

犯人は拘束され、女の子は、保護された。


拓は、ワゴン車の後ろ、モニター越しにその一部始終を見ていた。

そして、女子警官の人に毛布を包まれて出て来たを見て、ホッと肩をなでおろした。

座席にドサリと沈み込む。膝を抱え、ボソリと言った。

「よかった。本当に...。」

これからどうなるんだろう。あの子は元の普通の生活を送れるようになるのだろうか?


河口さんが言った。

「大丈夫。後はカウンセラーなり、心理学者が、付くじゃろ。君の仕事は終わったよ。

人1人が何でもかんでも出来る訳じゃない。それぞれの役割っちゅうもんが、あるもんだ。適材適所だな。」

拓は、眉をひそめて、

「河口さんでもそうなんですか?何でも出来るように見えるけど。」

「わしゃ、じじいだぞ。体力や筋力なんて無いし、君みたいに個人の情報なんぞわからんぞ。何となく世の中の流れっちゅうもんが判るだけだ。」

河口さんは、時間を確かめて、立ち上がった。

「さて、これで、ひと段落ついたわけだし。事件解決の祝いにいっぱい呑みにでも行かんか?」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


御徒町駅の高架下の飲み屋は、少々狭くて、

俺と河口さんの座る4人掛けのテーブルの他は、2組のグループが、座る位で一杯だった。河口さんは、ビール片手に焼鳥を食べる。

「拓はどうする?たしか、退職したばかりだったな?」

俺は考えた。...が、まだ、どうもピンとこない。

こんな能力が身につくなんて思ってもみなかったから、車の免許取りつつ、人間不振なのをリハビリがてら、バイトでもして、再就職を考えようかな?とは、思ってたのだが。


「しばらくは貯金もあるし、気の向くまま絵など描けたらなと思ってましたけどね。」

「なら、そうしたらいい。だが、また困った事があったら、相談に乗るから、連絡せい。」

...まあ、早々に何かありそうだけどな...。

そう言って、連絡先をわたされた。


結局は、俺のピアスの力はそのまま備わったままだし、たんこぶ痛いし、首、腕の痣はついたままだ。上手くその力と付き合って行けるんだろうか。

「俺の力は、このまま備わったままなんでしょうか?もしかして、他にも何か変化あるんだろうか。」

ふと、不安になって呟いた。

「まあ、その可能性もあるわな。いずれにしろ前向きに捉えて、その力を行かせていけば良いのではないか?ちと考えただけでも利用価値は高いと思うぞ。」

河口さんの言う事には、人の内面や、能力が判るのだから、詐欺や騙される事は無いしだろうし、人材発掘、トラブル回避も出来るだろうし。と、

 ...ま、小ちゃい事だな。別に手から光線が出たりとか、馬鹿力があるわけでは無い。


「 儂はな、世の中の、時代の流れが何故か判ってしまうんだ。おかげで、上手いこと金は稼げるし、好き勝手に生活出来とるが、人間一人一人の細かい事は見えん。この世界の遥か上空から眺めてる様なものなんだ。

だから、日頃から人間の中に身を置く様にしとるんだよ。個人個人の人間を忘れんようにな。

まあ、そのおかげで、今回、君にも出会うことが出来たわけだがな。」

河口さんは、そう言って寂しそうにニヤリと、笑った。

「なんか、俺と河口さんって、両極端な感じですね...。まるで、望遠鏡と、顕微鏡みたいだ。

俺なんかでよければ、いくらでも力になりますよ。」

そんな感じで話してると、救出メンバーの残り三人が入って来た。

 椅子を1つ追加して来た。

 それからは、どんちゃん騒ぎだった。

 技術者の市川さんは、粘着ボールの性能を見れた事で、気分上々。少々自慢げで。

 警備員の2人は、名前は名乗らず、タワーと、ドームと呼び合っていたのが良くわからなかったが、唯の酔っ払いだった。

「いやー、多賀君の情報、ドンピシャだったな。疑って悪かったよ。これから色々お世話になると思うから、よろしくな!」

と、言って、市川さんが、肩を叩く。

ーーーあ、この人天才だ。ちょっと変な方向性違うんじゃないの?って、感じで暴走気味で、ズレてる。

何か面白い人だな。

「って、おいおい。多賀くんは多賀くんのやりたい事があるんだよ。無理に押し付けちゃ駄目だよ。なあ、多賀くん。」

 俺が答えるより早くタワーさんが、

「えーでもー。他人のスキル読めるのは、使えますよ。我々の目的にも有効っす。」

 「別にいいんだよ。こっちの事情に付き合わせる気は無い。まだ能力に目覚めたばかりで、混乱しとるだろうに。」

俺は、何の事だか分からずに黙っていた。

ーー君は君のやりたい事をするべきだ。

と、河口さんは最後に言って、飲み会は、おひらきになった。

 今はまだこれから何をしたいのか、わからない。何かをすべきなのかも知れないが、まだ、この時には俺には判断出来なかったんだ。


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