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 次の日、風花はツールボックスの引き出し裏をみたのだが、そこには生命保険保険の証書が貼り付けてあった。

 何かあったときのために秋がかけてあったのだろう。秋が寝たきり状態になった時にでも下りるものだった。 


早速、生命保険会社に連絡をとり、なんと2000万円の保険金が下りることになった。

ーーーーーなんだよ!そういうことは、いざというときのために事故にあう前に妻に渡しておけってんだ!

...と まあ、俺は一人で憤ってはみたが、いや、まあ良かったよな。しばらくの、いや、当面の生活費は大丈夫だろう。(旦那さん、秋の治療費があるからどこまでどこかはわからんが)ーーーーー

 

 風花はさっさと教習所を出て免許をとり、車で職を探している。俺をサッサと追い抜いて...。

これもあの旦那さん秋の保険金のおかげだろう。

 秋はまだ目を覚まさない。ので、会話をしたいらしく、俺は呼ばれる。まあ、いいけど。

 

 そして、今日も俺の教習所の帰りに風花に呼ばれた。教習所の駐車場に風花の車があり、乗り込むと

ニッコリと笑って、

「拓くん、ありがとね、今日もよろしくお願いします。」

と言ってきた。

...情けないなぁ~、俺も早く免許取らなければ!

 「拓くんありがとね、毎回頭痛がきついみたいだけど、なるべく短時間で止めるようにするから、

・・・えっと、目標は5分間!のつもりなんだけど、あの・・・。」

「まあ、いいよ。10日ぶりなんだし、話したいんだろ?」

「うん、ありがとう!」


 と、いうわけでいつもの病室。

「...でね、前の書類審査通ったんで、今日は2次の面接に行ってきたんだよ。今までの作品をファイリングしたのを持って行ったんだ。小っちゃい会社だし、いきなり社長さんと対面してめっちゃ緊張したよ。」

『あ~会社が小さいからって悪いことばっかりじゃないかな、小回りきくこともあるし、上手くいけば自分で色んな事できるんじゃないか?』

「そうかな?でも私、個性的な作品ばっかり作ってきたから、町の地方紙作る会社には刺激強すぎな気もするから、大学時代の課題で出たおとなし気なものをチョイスしたんだ。採用されなきゃどうしようもないからね。」

「俺は、好きだけどな、風花の作品。最初見たときはびっくりしたけど。まあ、どこかで採用してくれるさ。気長に挑戦してればいいさ。」

「そ、だね。頑張るよ。」

『ところでさ。晃はどうしてる?元気にしてるか?』

「元気は元気だよ。秋くんが事故に合って包帯だらけで寝たきりになってから連れて来てないから、前は父ちゃんは?とか言ってたけど、私の顔見て、何かを感じ取ったのかあまり触れなくなってね。今はお仕事で遠いところで頑張ってるって言ってる。時々寂しそうにしてるけど。時々空見て歯を食いしばってる。やっぱり秋ちゃんがいないってのはでっかいんだろうね。」

『...晃には、父ちゃんがいない時は母ちゃんを守れって言っておいたから、もしかしたら相当我慢してるのかもしれないな。弱音を吐けないのかもしれない。』

「まだ3歳なのにそこまで考えるかな?」

『あ、そうか、もう3歳になったのか。』

『...なら風花、晃と一緒に小さな椅子を作ってやってくれないか?』

「椅子?」

『俺がこんなになるまでに晃と作るって約束してたんだ。俺が一緒に作れないのは残念だけどな。』

「そっか。そうだね、分かった。言ってみる。私も寂しかったけど、今は秋ちゃんといつでも会話できるから、まだ平気だよ。頑張るよ!」

ーーーーあ~お話し中なのはわかるんだけどさ~。会話筒抜けなんだよな。こんなん聞いてていいんだろうか?めっちゃプライバシー侵害な気がしてきた。あ~俺は空気、空気。ーーーーー

「・・・拓くん聞こえてるよ。」

ーーーーあ~これまた失敬ーーーーーー

『おい、拓。お前今日高速教習だったんだろ、どうだったんだ?』

ーーーー何で知っているんだよ、秋ーーーー

『何でって、風花が話してたからな。』

ーーーー俺のことなんか話してんのかよ、風花ーーーー

「え、そうだよ。拓くんはもう他人じゃないからね。秋ちゃんと私の恩人だし、家族じゃないけどさ、私達に親切にしてくれた人に無関心は有り得ないでしょ!」

ーーーー...うーいいよ、別に。それよりそろそろ頭痛が酷いんだけどーーーー

『分かった。拓、ありがとう。風花、またな。俺は何もできないが、話せて嬉しかった。元気で、晃を頼むな。』

「秋ちゃんまたね。私は明日も来るよ。」


てな感じで、今日も最高記録8分30秒、意識の接続が出来ましたとさ。

 大体、10日に1回これをして、鍛えられている。

 鍛えてる?俺は一体何に挑戦しているんだろうか??


 そんなこんなで、次の会合の時、きっかり10日後には俺も車の免許は取れて、軽の中古車を買い

、ウキウキと風花の実家へと迎えに行った。

 風花は、秋が事故に遭った時から実家に身を寄せている。元々近くに住まいがあったため、困ったときには、お互い様ということで、母親に甘えさせてもらっている。主に風花の就職活動の間に晃を見てもらっているのだ。ついでに食事を一緒にしたりしているうちに、今は一時的に同居するようになっている。あくまで一時的にだと言うが。


 あ~懐かしいな、5年ぶり位だろうか?風花の実家。と、思いながらインターホンを押す。

 ピンポーン♪  と、遠くから走ってくる音。

 ダッ ダッ ダッ ガチャッ と、戸が開いた。

目の前に人はいない。

...と、下に見えたのは小さな男の子がドアにぶら下がるように引っ付いていた。

 拓の顔を見てハッとして、それから途端に不機嫌な顔にガラッと変わった。

「おまえ、誰だよ!」

と、にらみつけられた。

 おお、この子が秋と風花の子供か。元気なのはいいけど、なんか怒ってる?

「こんにちは。晃くんかな?お母さん居る?」

 すると、その子はハッとして俺を睨み付け、ドアを乱暴に閉じた。

「お前なんて帰れ、バーカ!」

 ドアの向こうで遠ざかる声。

 ??? 何がどうなった?いきなり嫌われた!!

...どうしよう、何でだ?

 俺がドアの前でオロオロしている間に風花が半泣きしている晃をなだめながらドアを開けてくれた。

「拓くん、ごめんごめん。なんかこの子勘違いしちゃってて...こら、晃、母ちゃんと父ちゃんの友達を怒鳴ったら駄目でしょ?」

「だって。」

「あのね、この人は別に晃の父ちゃんの代わりとかじゃないのよ。父ちゃん母ちゃんの大事な友達なんだから仲良くしてほしいなぁ」

...ああ、そうか、分かったぞ、この子の気持ち。

 大好きなお父さんがいないのにお母さんが他の男と仲良くお出かけしようとしている。しかも、風花は(秋と話ができるため)ウキウキしていたんだろう。息子としたら、ちょっとどころじゃなく、凄く嫌だろうな。

 それじゃあ、

「えーと、晃くん?お父さんから聞いてたんだけど、君はお父さんがいない間、お母さんを守っていて、いい子にしてるんだってね。偉いな~。おじちゃんは別にお母さんを取ろうとしてるんじゃなくて、お父さんに頼まれて...」

...あ~何て言うか、

 俺は、風花と秋の間の電話線?...メッセンジャー?...って、どう説明すればいいのか考えて、

「...一緒に君たちの力になるように頼まれたんだ。」

 いい加減な言い方に聞こえたんだろう、晃は、怪しいと思ったのか、

「僕と母ちゃんを守るってこと?なんか怪しい!そんなこと言って家に入ってこようとしてるんじゃないの?僕は父ちゃんから聞いてないし別にお前に守ってもらわなくても、僕が守るから良いんだ!」


...やばい。これじゃこじれる気がする。

 よし、じゃあここは...俺は、大きく息を吸ってにこりと笑った。

「晃くん、実は私は君のお父さんから秘密の使命を預かっていてね、ある悪の組織からこの一家を守るよう指令を受けたんだよ。お父さんはその悪の組織をやっつけるために今潜入捜査してるから、私が、君たちの護衛を任されたんだよ。近く君にもお父さんから連絡があると思うので、それで私の事もわかるだろう。」

 どこぞの戦隊ヒーローみたいなセリフ、爽やかな顔で真面目な表情で言ってみた。三歳児ならこんなのに憧れるんじゃないかと思って。

 晃くんは、目を見開き、みるみるうちにキラキラな目になってきた。

「父ちゃん、悪い奴と戦ってるのか?だから、怪我しちゃったのか。元気なんだよね?何で帰って来ないんだ?まだ戦ってるからか?悪い奴と戦ってて帰れないのか?」

 なんか真剣な表情で、一人で言って一人で納得してる。

...どうしよう。悪の組織とか言っちゃったよ。悪い奴に狙われているっちゃいるけど...ええい、迷うな俺。内心、冷や汗たらたら流しながら、

「そうだ。だから、お父さんの身内であるお母さんと君は今とても危険なんだ。だから私が君達の力になりたいんだ。」

「...。」

 しばらくの間ジッと俺の顔を見ていたが、ちょっと考え込んでから言った。

「ま、まだお前のいう事を信じた訳じゃないけどな。本当に父ちゃんから連絡あったら信じるよ」

 ちょっと顔が赤くなって興奮しているけど目がまだ疑っている感じがした。

「ああ、それでいい。」

 その後、おれは晃を刺激してはいけないと思い、時間をおいて別の所で風花と待ち合わせして、秋の入院している病院へ行った。 

  

ーーーーーと、いう訳で、秋、お前晃にメッセージ送ってくれないか?ーーーーーー

『って、どうやってこの状態の俺が晃に伝えるんだよ!』

ーーーーあ~言わなかったっけ?俺、遠く離れている所でもメッセージ送れるんだよーーーー

 俺は自分の髪の毛で、短いメッセージをテレパシーにのせて、飛ばしたその人の言葉を送れるようになった事を教え、自分の白い髪を抜いて、秋の掌に握らせた。

『...お前...便利な奴だな~助かるわ~』


 そのまた10日後の会合の日、風花の実家のチャイム、

ピンポーン♪ 

 ダッダッダッと、走る音。

 ドアを開けると満面の笑みを浮かべた晃に顔があった。



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