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事故の真相

 程なくして、入間新次郎はやって来た。でも1人ではなかった。奥さんと娘とみられる人物と高級そうな車に乗ってだ。

 作戦変更。夕食を部屋でとりつつ壁越しに探るつもりだったが、ホテルのレストランで3人で食事する様なので、俺も食事をとりつつ、3人まとめて探ってやる事にする。

 宿泊の部屋が別々だと困るからだ。


 3人は、窓ぎわのテーブル席で東京タワーが一望できる所でディナーを取っていた。俺は、カウンター席で、軽〜い食事をとる。宿泊費は河口さんに借りていたが、手元の金額が、少々心許ないからだ。

 大体、現在無職中の俺が贅沢なんて出来るはずもないじゃないか。後で部屋に帰ったらコンビニ弁当食ってやるんだから良いのだ。

 早速、ピアスを押し、まとめて3人分の情報を読む。

その瞬間、酒を呑んでもいないのにグラグラと目が回り、その情報量に頭を支えられなくて、おでこからカウンター席に強打した。痛い。

・・・しまったな。まとめて3人分は、無茶だった様だ。

顔を顰めつつ、頭を抱えて起き上がりながら、つぶやいた。

 「当たりだ・・・。コイツらがやったんだ。」


 それから、さっさとレストランを出た。部屋にたどり着くと、ベットにうつ伏せで突っ伏して考える。

ーーーどうやって、風花の家族を守ってやれるんだ?ーー

そう考えながら、気絶するように眠りに落ちた。


 入間新次郎には、財閥の娘を妻にした。

政治家はお金がかかる。その夢の為に風花の母親を捨て、その妻を政略結婚したのだ。

 食事をしていた人物の2人目が、その妻で里美。

3人目が、子である瑠未だ。

瑠未は既婚者である。だが夫は、その子供と共に事故で1年前に亡くなっている。その子供は風花の子供と、1歳年上だだ。

 瑠未の夫も政治家で、跡継ぎはその男の子だった。突然の夫と子供の死。

 当然、悲しみに気が叫び狂わんばかりだった瑠未だったが、母親の里美にある時囁かれた。入間の血を引く子が居ると。その子が、風花の子供である、晃だ。

 母親は、風花の母を知っていて良く思っていなかった。自分が結婚する前に付き合っていた女と、その入間の血を受け継いだ子供の風花。それはそれはねちっこく知り尽くしていた。

 娘の瑠未がこんな目に遭っているのに、あいつの子は幸せそうに暮らしている。許せなかった。

 こうして夫、入間議員の知らない所で、2人の計画が進行する。

 事故に見せかけた殺人未遂計画。風花の旦那が大怪我で、生活に困窮した所で、養子縁組を持ち掛ける。そうして、可愛い我が子の代わりを手にすることができる。

ーーーと、いうシナリオだ。

 そして今、風花は案の定、生活が逼迫している。子育てだけならまだしも、旦那の病状が深刻だ。近い将来決断しなければいけない時が来るだろう。

 瑠未が、計画の成功に期待し、気持ちが持ち直して来ているのだろう。何も知らない新次郎はホッとして、家族で食事でも・・・と言う事で、今夜の食事会を計画したのだった。

 

 明け方早く目が覚めた。朝日を背に東京タワーが黒いシルエットになっていた。それを眺めながらギリっと、歯軋りした。俺は無力だ。多少特殊な能力を持っていても、無職だし、金も無い。

ーーーそれでも考える。

 例えば、入間新次郎にこの事を暴露したらどうか?

今まで、風花側に口封じとしてのお金は渡していただろうが、ただそれだけだ。俺が今バラしたとしても、妻や娘に辞めろと言うだろうか?かえって事態を悪化させる気がする。入間新次郎自身が進んで風花の子を取り上げようとしてきたら、最悪だ。

 がーっと、頭を掻きむしる。と、ぶちぶちと何本か毛が抜けた。それをハラリと落としながら、呟いた。

「風花・・・。」

ーーー君を守りたい。切実にそうおもった。ーーー

 落ちた髪の一本は、あの白い毛髪だった。

その白髪はフワッと舞って、風に溶け込んで消えた。


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