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第10話「名も無き仮面の賢者」

◎新連載です!

ご愛読と応援を何卒宜しくお願い致します。

本日2/7は、主人公シモンの大逆転ざまあ展開を含む

『第9話、第10話、第11話、第12話の都合4話』を段階的に一気更新致します。

本日以降の更新は随時です。

毎日1話更新が目標ですが、力尽きたら申しわけありません。

出来うる限り頑張ります。

引き続き、追っかけてください。

お読みになりましたら、ぜひ『ブックマーク』と『評価』をお願い致します。

 シモン・アーシュは、隣国シーニュ僻地(へきち)における遺跡探索(いせきたんさく)デビュー戦を終え……

 無事帰国し、コルボー商会へ戻った。


 持ち帰った『お宝』の鑑定額は、何と! 金貨約1,000枚余り……

 これはルーキーにしては、破格の成果である。


 しかしブグロー営業部長以下、商会側は1か月間、ず~っと休みなしで働いたシモンに対して、ねぎらいの言葉など全く無い。

 「ご苦労様」のひと言さえもなかったのだ。


 それどころか、たった1日しか休みを貰えず、シモンはすぐに出張を命じられた。

 

 ブグローからの指示書を見て、次にシモンが向かったのは、国内。

 ティーグル王国のはるか南方の小村である。

 小村の近郊に新たな迷宮が発見され……

 発掘と採取の権利をコルボー商会が獲得したのである。


 今回もシモンは単独出張である。

 最初は人寂しいと感じていた。

 だが……生来のボッチ体質。

 逆に開き直って、「ひとりで気楽だ」と思えるようになってしまった。


 何故ならば、シモンは仕事のコツを掴んだからだ。

 コルボー商会の先輩、同輩は全員がライバル。

 ねたみ、そねみに満ちている。

 下手をすれば、探索の妨害をされ、足を引っ張られる可能性だってある。


 ある程度のノルマさえこなせば、ブグローは何も言わない。

 後は自由時間となる。

 ぼっちで、のんびり。

 きままにやろうと決めたのである。


 しかし……

 シモンは、のんびりとは出来なかった。


 怪しんだ商会がシモンに監視を付けたから?

 否、そうではない。


 シモンは『ぼっち体質』と同時に、生真面目である。

 そして人が良かった。

 正義感も強く、困っている者が居たら、つい手を差し伸べたくなる性格でもあった。


 今回出張した辺境の小村は、度重なる魔物の害に悩んでいた。

 村民は襲われて殺され、喰われ、作物は荒らされ……

 絶望の淵へ沈んでいた。

 

 しかし貴族領主は、非情にも放置。

 下賤(げせん)な村民など、魔物に喰われるか、餓死して勝手に死ねと言わんばかりだった。

 たつきの道を完全に断たれた小村はとても貧しく、自前では冒険者ひとりさえも呼べなかった……

 

 小村を害する敵。

 相手はゴブリン数百……

 以前シモンが地獄の森で襲われた相手である。

 

 だが、今のシモンの実力なら、ゴブリン数百体など、容易(たやす)討伐とうばつする事が出来る。


 しかし、表立って堂々と手を貸すわけにはいかない。

 

 人づてに、王都まで話が行き……

 上司ブグロー部長の耳にでも入ったら、「仕事時間中に何やってる! しっかり稼げおらあ!」などと、 厳しく処罰されるからだ。


 それゆえ素性を明かさずに、村を助けてやらねばならない。

 シモンは用心深かった。

 身元を隠すような事態もあろうかと……

 念の為、顔をフルで覆う仮面を持参していたのだ。

 

 更に予備の革鎧に着替えれば、ぱっと見、王都から来訪したシモンと同一人物だと見抜ける者はそう居ない。

 シモンは、その小村では初見、全くのよそ者だからだ。


 まず迷宮の探索を終え、お宝をゲットしたシモンは、残った時間でゴブリン討伐に臨んだ。

 

 最初、数十のゴブリンと戦ってみて、確信した。

 かつてシモンを追い回したゴブリン数百体も、シモンの敵ではなかった。


 火属性の攻撃魔法に、数多のスキル、悪即斬の剣技、バスチアン直伝ぶちかましの格闘術等……

 ゴブリン数百体など、単なるトレーニング。

 否、遊び相手でしかない。


 こうして……

 小村周辺に跋扈ばっこしていたゴブリン数百体は、シモンの活躍により、

 あっという間に瞬殺された。

 

 仮面をつけた『名も無き謎の賢者』が、何の見返りもなく、ティーグル王国の小村を救ったのだ。


 シモンは小村へ赴き、ゴブリン討伐を報告した。

 村長以下村民達は、平和が戻った事を大いに喜んだ。


「ありがとうございますっ! ありがとうございますっ! これでようやく! 孫の仇が討てました!」


 仮面をつけたまま、別人になりすましたシモンの手を……

 しっかりと握る嬉し涙の村民老女。

 彼女に、故郷へ残した母の面影(おもかげ)を見たシモンは、

 心がほんわかと温かくなったのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 その後も、シモンは馬車馬のように働かされた。

 国内を始め、世界各地へガンガン出張を命じられた。


 しかし、いくら稼いでも稼いでも……

 『怪しい必要経費』ががっぽり引かれ、手元に残るのはいつも信じられないくらいの少額でしかなかった。


 相変わらず、ブグロー部長始め、商会側から(ねぎら)いの言葉も全く無し。


 仕事へのモチベーションが全く保てないシモンは……

 小村のゴブリン討伐と同じく、人助けのボランティアをする事で、

 何とか心の均衡(きんこう)を保っていた。

 

 また新たな魔法やスキルを習得しても、商会には一切報告せず、レベルアップのみもはかっていた。


 やがて……

 シモンが出張で行く先々で、

 『名も無き仮面の賢者』が現れ、難儀する人々を助けているという噂が立った。


 ある日の事……

 シモンが出張を終え、商会へ戻ると……

 上司のブグローが(いぶか)し気な表情で尋ねて来た。


「シモン」


「はあ、何すか、部長」


「お前の出張先でよぉ、妙な噂がいっぱい立ってるぜ」


「はあ、らしいっすね」


「お前は知ってるか? 謎めいた賢者が、何と無償で人助けしてるそうだぞ」


「いや、部長。俺……タダ働きは興味ないんで。働いたらちゃんと金は貰うべきだと……その点は部長を見習ってますから」


「がはははは! だろうな! 上司且つ師匠の俺を見習えよ! タダ働きなど厳禁だぁ! ボランティアなんて、冗談ぽいだっ!」


「ええ、部長の指示通り、出張先ではひたすら仕事してます。売り上げも月に金貨1万枚は行ってますものね」


「おお、さすが我が弟子だ! やはり俺の目に狂いはなかった。会頭にもほめられた。ブグロー、良くやった! この調子でシモンをガンガン働かせろとな」


「はあ……やっぱそういう『落ち』っすか。部長はいつも全て、確実に自分の手柄にしますね」


「当たり前だ! 部下の手柄は全て俺の手柄だぜ!」


「何すか、それ?」


「がははははは! シモンよ、聞け! 部下など、単なる駒だ! 俺が出世する為だけの使い捨ての道具なんだ。俺に嫌われたら、ウチの商会では生きて行けないと思えよ!」


「はああ、部長ったら、相変わらずっすね。はい、はい」


「ごら! はいは一回だ!」


「はい」


 というダークサイドな会話はあった。

 しかし、売上しか興味のないブグローはそれ以上追及して来なかった。


 これ幸いと思ったシモン。

 見えないところで、ぺろりと舌を出した。


 こうして……

 シモンはフルフェイスの仮面を被り、『名も無き仮面の賢者』として……

 魔物の害に苦しむ人々を、次々と救って行ったのである。

いつもご愛読頂きありがとうございます。


※当作品は皆様のご愛読と応援をモチベーションとして執筆しております。

宜しければ、下方にあるブックマーク及び、

☆☆☆☆☆による応援をお願い致します。


東導号の各作品を宜しくお願い致します。


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「迷宮下層へ置き去りにされた底辺冒険者が裏切者へざまあ!銀髪美少女に救われ、成り上がる冒険譚」


も何卒宜しくお願い致します。

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