五十一話目 最後の試練④
俺たちは、さらに地図のカケラを集める。
約九割ぐらいカケラが集まったところで、赤い点が描かれているカケラを発見する。
「ね、ねえこれって」
「もしかして出口じゃない?」
「……その可能性が濃厚だな。もうほとんど集め終えているし、出口が書かれている地図が見つかっても不自然では無いがな」
このタイミングで、迷路の構造が変化し始めた。
体感で二十分おきに、構造変化は起きるようだ。
地図を見てみると、先程の赤い点が別の場所に移動していた。
やはり出口も別の場所に移動するのか。
しかし、今回初めて赤い点を見つけたのは、運が悪かったからなのか、それとも地図で見つけたら位置が動くようになるのか。
分からないが、とりあえず出口に向かうか。
俺たちは地図を見ながら出口がある場所へ向かう。
しかしだいぶ遠い場所だったがために、辿り着くまでに迷路の構造が変わってしまった。
しかもまた結構遠い位置にある。
「うわー面倒これ」
「俺が全力を出して走れば、間に合うんだがな。全員出口から出ないとならないから、そう言うわけにもいかんし」
「弾き車かなんか作って、それであたしたちを引っ張るってのはどう?」
「魔法で作れないこともないがな。曲がり損ねて事故ったら死ぬぞ」
「う、やっぱやめとこうか……」
とにかく普通に歩いて向かうことにした。
しかし、またも途中でダンジョンの構造が変わり、出口の場所も変わった。
またも結構現在地から遠い場所に、出口が移動した。
「ムカつくー」
「そもそもこれは本当に出口なのか」
「まあ、あくまで出口を示しているのでは無いかと言うのは、推測に過ぎないがな。しかし出口じゃなかったらなんなのだ」
「罠? わしらをおちょくるための」
「ありえないわけではなさそうだな」
仮にそうだったらまんまと引っかかってしまったことになる。
時間切れがいつになるか分からないから、なるべく急ぎたいのに、かなりの時間のロスをしてしまった。
「もしかしたら、全てカケラを集めたら、本当に出口の位置が記される仕組みなのかもしれんのう」
「それはあるかもしれないな」
メオンの考えに、俺は賛同する。
地図のカケラはほとんど集め終わっているが、あと二、三残っていた。
大量に残っている中から探すより、残り少ないものを探す方が、当然ながら時間はかかるため、ここまで集まっていれば地図の機能としては問題ないと思い集めていなかったが、全部集めないと出口の位置が分からない仕組みだというのなら、話は別である。
俺たちは残りのカケラを探した。
だいぶ時間はかかったが、とりあえず集めきった。
しかし、変わらなかった。
「誰だ集めたら変わるって言った奴は」
「お主も賛同したじゃろうが!」
「普通にこの赤い点が、出口だったみたいだね……」
「無駄な時間を過ごした」
レミの言う通り、本当に無駄な時間を使ってしまった。
幸いまだ時間は来ていない。
「近くに赤い点が来るまで、待っていた方がいいかもな。変に動くからああなったんだろう」
俺たちは一旦、この場で待機することにした。
「はーお腹減ったー」
アイシャがしゃがみこんでそう言った。
「私もだ。何も食っていないからなここに来て」
「お弁当持って来ればよかったねー」
とレミ、アイシャ、ミナの三人は腹を抑えながら空腹をアピールする。
メオンとグレースの二人は、平気そうである。
「お前ら腹減ってるのか」
「ペレスさんは減らないの?」
「俺は飯を食わなくても何ら問題ないからな。もう味覚も存在しないし、食べるということを楽しむことも出来ん」
「はー、何か寂しいねそれー」
「そうだ。お前ら腹減ってるなら、俺を食うか?」
「「「え?」」」
三人はきょとんとした表情を浮かべる。
「俺を食えば空腹をしのげるぞ」
「あの食うってのは何か比喩的な表現ではなく、そのままの意味でペレスさんの肉を食えとおっしゃっているのですか?」
「それ以外何がある。切っても再生するし遠慮しなくてもいいぞ。生が嫌なら焼いてやってもいい」
俺は自分の腕を千切ろうとする。
「ちょちょちょ!! やめ、やめて!!」
「人の肉が食えるか! いくら再生するからって!」
「おいおい、遠慮するなよ。せっかく珍しく親切にしてやってるのに。俺の肉を食べたら、元気が湧いてくるって評判なんだぞ」
「どこで評判なの!?」
「どんな効能があっても食べない! 流石にそこまでお腹減ってないから!」
三人は全力で拒み続ける。
本当に食っても何も問題ないのにな。
まあ、いらないというのに無理にやる必要はないか。
ただ普通の人間は空腹の限界が来たら、確か死ぬはずだったので、そこまでいったら無理してでも食わせないとな。死んだら試練失格になるし。
その後、迷路の構造が変化した。
地図を確認するとすぐそこに出口があった。
「よし、これなら楽に間に合う」
俺たちはそこに向かって歩き出した。




