四十二話目 力の試練
『ようこそ力の間へ』
扉を開けて中に入ったら、いきなり声が聞こえてきた。
『今から試練を受けてもらう。ルートビアの塔に入る資格があるかどうかを確認するための試練だ。力の間で行う力の試練は、強さが試される試練である。魔法生物を次々と召喚するので、それを全て倒したら試練クリアだ』
声は試練の説明をする。
「試練をクリアしたら、合言葉を教えてくれるのか?」
答えてくれるかわからないが、俺は質問してみた。
『力の試練をクリアした後は、知恵の間に転送される。そこでは知恵の試練を受けてもらう』
「知恵の試練……」
「力の試練ならペレスさんが入ればできそうだけど、ペレスさんって頭いいの?」
「長く生きているから、知識は豊富だぞ」
……まあ、知識量でどうにもならないような問題が出たら弱いけどな。
「お主ら、無駄話をするな。ここの敵は強敵だぞ」
とグレースは警告する。
「強敵は強敵かもしれないけどねー」
「ペレスさんがいれば、なんの問題もなく終わりそうよね」
かなり気を抜いている、アイシャとミナ。そのようすを見たレミが、
「お前ら気を抜くんじゃない! そうやってすべてペレス殿に任せるから、役立たずだのと言われるのだぞ!」
「う……」
「そ、その通りね……」
レミの叱咤で二人はやる気を出す。
『それではあと10秒後、魔法生物が召喚する。ちなみに魔法生物は召喚されるごとに、強くなっていくので、最初に召喚するのは1番弱い魔法生物だ。真ん中に召喚されるので、端っこの方にいた方がいいぞ』
と声が聞こえてきた。
真ん中あたりにいた、レミとアイシャが急いで、端っこに移動した。
声が聞こえてから10秒後、部屋の真ん中に白く光る魔法陣が描かれる。
描かれた直後、目玉が浮いているという感じの外見の生物が10体召喚された。
「これが魔法生物か」
「初めて見るわね」
ちなみに魔法生物とはその名の通り、魔法で作成した生物だ。ハイレベルの魔法使いだと、それぞれ独自の魔法生物を作成するため、どんな名前でどんな動きをする魔法生物か、わからないことが多い。
この目玉の魔法生物も、青の賢者が独自に作成したものだろうから、俺も初めて見るものだ。
とりあえず、最初に召喚されたこいつは1番弱いという話だし、さっさと倒すか。
俺がそう思って倒そうとした時、
「はぁ!」
「やぁ!」
「ファイアボール!」
とレミ、ミナ、アイシャの3人がやる気を出して、魔法生物を倒しにいく。
グレースも魔法を使って、魔法生物を倒す。メオンは偶然近くに出てきた奴を、ゴミを払うかのような感じで、簡単に倒していた。
思ったより弱かったのか、俺は何もしない間に全魔法生物が倒された。
「どう! 見直した!」
「我々も結構修行を積んでいるからな。この程度は楽に倒せるのだ」
「私たちは役立たずじゃないのだー」
なんか妙に勝ち誇ったような表情で、レミとアイシャとミナが言ってきた。
「いや、あの目玉1番雑魚らしいし、そいつら倒したくらいで、勝ち誇られても……」
「む、むむむ!」
「じゃあ、次のやつも倒してやる!」
再びやる気を出し始める。
『お見事。それでは10秒後、次の魔法生物を召喚する』
10秒後召喚されたのは……
かなり巨大な虎のような魔法生物だった。
人間の何十倍の大きさだ。頭に大きなツノがある。
「「「……」」」
この虎の魔法生物を見た瞬間、3人は凍りついた。
そして、
「無理無理無理!」
「た、助けてー」
「ひぃ!」
同時に叫びながら俺の背中に隠れた。
どうやら魔法生物の外見に思いっきりびびったみたいだ。
「なんで最初のがあの目玉で、次はあんな化け物なんだ!?」
「おかしいよね!? 難易度調整間違ってない!?」
いや、知らんがな。相変わらずヘタレな奴らだ。
「相変わらず情けない奴らじゃのう」
と近くで見ていたメオンが、呆れたような表情でいう。
すると、メオンに向かって虎が飛びかかってきた。
メオンは一瞬で呪文を唱え終え、邪術で虎を攻撃。一撃で倒した。
「ほう、あれを一撃で倒すとは」
その様子を見ていたグレースが感心したように呟く。
「この程度、余裕じゃろ」
メオンは毅然とした態度で言い放った。
その後、色々出てきた。
2体目までは何もしなかった俺だが、3体目からは、俺がとどめを刺すようになった。
7体目で最後。ドラゴンっぽい魔法生物が出てきたが、それも難なく倒した。
「……お、お主……強そうだと思っていたが、ここまで強いとは……常識を大きく逸脱しておるな」
あっさりと敵を倒していく俺を見て、グレースが驚いたように呟いた。
『お見事。試練クリアだ。早速、次の試練、知恵の試練を行う知恵の間まで転送しよう』
その声が聞こえた後、俺たちは地面から発生した光に包まれた。




