三十七話目 新たな旅へ
俺たちは母親ドラゴンのメレサの下まで案内された。
バグダムドはだいぶメレサをぞんざいに扱っていたみたいで、牢獄まで案内された。
奥の方にある一際大きな牢に翼の生えた人化したドラゴンの姿があった。
身体中に傷があり、右腕がなくなっている。さらに全身に鎖で縛られている、身動きが取れないような状態になっている。
「お、お母さん?」
バラシアが少し震えた声でそう言った。
このドラゴンがバラシアの母親のメレサみたいだ。
「……あら、バラシアじゃない。久しぶりね。どうしたのこんなところで」
なんか思ったより平気そうだな。
痛みの感じるものにとって、この状況はかなり良くないものだと思うんだけど、そうでもないのか?
「お母さん! 今、出してあげます!」
バラシアは魔法で牢の鍵を開け、さらに魔法でメレサにかけられている鎖を魔法で断ち切り、メレサを解放した。
その後、怪我を魔法で治す。全身の怪我がすぐ治り、さらになくなっていた腕も復活した。体の欠損を治す回復魔法を使えるとはなかなかやるな。
「おー、手が治った。相変わらずバラシアの魔法はすごいわね」
相変わらず飄々とした態度でメレサは言った。
「お、お母さん。あのー。ようやく牢から出られて、さらに娘に会えて、もっとこう反応はないのですか?」
「ドラゴンたるもの、いついかなる時も平常心でいる必要があるのよ」
「……あ、相変わらずですね」
メレサは結構変わっているドラゴンだったようだ。
「ところで、こちらの人たちは? えーと……そっちの子は……もしかしてマシャかい?」
「う……」
マシャはなにやら顔を赤らめて挙動不審な態度になっている。
「前にあった時はかなり小さい頃だったけど。ずいぶん大きくなったね」
「お、お母さん……お母さん!」
マシャは涙を流しなら、メレサに飛びついた。
そのまま、わんわんと泣き続ける。メレサは少し困ったような表情でマシャの頭を撫でている。
その様子を見ていると後ろから、
「なあ、ここは空気を読んで我々は一旦出た方がいいんじゃないか?」
と小声でレミが言ってきた。
「何? 今から約束を果たしてもらうつもりだったのだが」
「そ、それはさすがにダメだろう。空気を読め! 色々つもる話もあるだろうから、それが終わってから聞けばいい」
まあ、たしかに今話してくれと言っても、話してはくれなさそうだではある。
仕方ない。ここはレミの言う通りにするか。
俺たちはそのまま牢獄を出た。
退出してからしばらく経過し、
「お待たせしました。気を利かせてくださりありがとうございます」
そうバラシアが言ってきた。
「礼はいい。早速、俺にかかっている不老不死の呪いを解くための方法を教えろ」
「分かりました。教えましょう。呪いを解く方法を知っている可能性のある人物を紹介します」
「誰だ?」
「この国から近くにあるルートビアの塔におられる、青の賢者リース・ハルバート殿なら、呪いを解く方法を知っているかもしれません」
「あ、青の賢者だと? もしかしてそれが手がかりか?」
「はい」
バラシアはキョトンとし顔で頷いた。
「はいじゃねー! 青の賢者に聞きに行こうなんて発想は最初からあったつうの! これじゃあ完全に働き損じゃねーか!」
「そ、そうですか。いや、でもリース殿は少し気難しいお方なので、初めての方が簡単に会話することは不可能なのです。私が紹介状を書けば話をできるかもしれません」
「……なるほど……働き損ではないようだな」
バラシアはそのあと、城から紙を貰い書状を書いた。
「これを青の賢者に渡せば話を聞いてもらえるでしょう。青の賢者には昔かなり良くしてもらっておりました。私が嫌いではない数少ない人間の1人です」
俺はバラシアから手紙を受け取った。
「あの改めてお礼を言います。母を助けてくれてありがとうございました。母を殺してさらに酷い目に合わせた人間は、好きになれませんが、ペレスさん……あなたのことは……その……えーと……」
バラシアはそこまで言って口ごもった。
「俺のことがなんだ。はっきり言え」
「な、なんでもないです! 旅の安全を祈っております!」
少し慌てながらバラシアはそう言った。
俺たちはその後、城を出てバラシアと別れ、青の賢者に会いに行く旅を始めた。




