三十二話目 決闘3
ミナは観客席の位置から支援を開始する。ミナの前には、レミとアイシャがかばうようにして立っていた。
「私、回復魔法以外にも、攻撃力あげたりする魔法使えたんだ。それを妹さんにかけてあげよう」
ミナは攻撃力アップの魔法をマシャにかけようとするが、
「……これ速すぎて、暴虐王に当たっちゃうかも知んない」
「それはまずいだろ!」
「じゃあ、バラシアさんの魔法攻撃力上げる魔法使っとこう。マジックアップ!」
バラシアに魔法攻撃力を上げる魔法をかけた。
魔法をかけられて少し驚いたような表情で、バラシアは3人を一瞬だけ見る。
「1つ思ったが、賢者だというのなら、ミナの使える魔法は使えるんじゃないか?自分でその魔法かけてたりするんじゃないのか?」
「支援系の魔法は自分にかけることはできないっていう、特性があるからね。多少は力になれたはずだよ」
「そうなのか」
「おい、お主。我にもその魔法をかけろ」
後ろからメオンがミナにそう頼んだ。
「奴を滅するのは少し骨が折れそうじゃしの。その魔法があれば少しは楽になるじゃろう」
「いいよー。はい、マジックアップー!」
メオンの魔法攻撃力が上昇した。
ちなみに邪術は本質的に魔法と同じなので、魔法攻撃力を上げる魔法で威力を上昇させることが可能だ。
そして、メオンは邪術を使おうとする。
「むむむ、速くて狙いが定めにくいのう」
バグダムドとマシャの戦いは、メオンもまともに目に追えていない。
「まあよいか、どちらも蹴散らせば」
「ええ!? 何とんでもないこと言ってんの!?」
「別にあやつは死んでもいいじゃろ」
「ダメに決まってんでしょ!?」
「ふん、お主らの意見なんぞ最初から聞いておらんわ」
メオンはそう言い放った後、
「ヘルバスター!」
自分が使える最強の攻撃邪術ヘルバスターを放った。
漆黒の闇が一直線にマシャとバグダムドに向かっていく。
その攻撃に一瞬早くマシャは気づいた。
即座にこれは食らってはいけない攻撃であると判断する。
彼女は全力で回避する。
一方、バグダムドは回避が遅れて、ヘルバスターの直撃を受けた。
「ぐはあ!」
ヘルバスターを受けて、苦しそうに呻くバグダムド。
「くっくっく。直撃しよった。ヘルバスターを受けて生きているものはあやつ以外いまい」
メオンはそう豪語したが、
「今のは久し振りにダメージらしいダメージを受けたぞ……」
バグダムドは、結構ダメージは食らっているようだが、平気そうだった。
「なんと」
さすがのメオンも驚く。
「あの攻撃、奴も一度は粉々にした攻撃なんじゃがの。単純な防御力はアレの方が上なのか」
「でも、結構ダメージ喰らわせれたよ。この調子で……」
「ああ、これなら倒せるかも……」
「いや、我は退散する」
「「「え!? 何で!?」」」
「今のでたぶん標的にされる恐れがある。流石にアレに標的にされるのは面倒だ。後は頼んだぞ」
そう言ってメオンは決闘場から立ち去っていった。
「標的にされるって……」
「それって……」
三人は恐る恐るバグダムドを見てみる。
「さっきの攻撃を放ったのは貴様らかぁ?」
バグダムドは怒りの形相を浮かべて、三人の方を見ていた。
「いや、あの違います。全然違います。そんな強くないです私たち」
「魔法使ったやつは出て行きました」
「無実ですアタシたちは!」
三人は身の潔白を訴えるが、
「死にやがれ!!」
暴虐王は大声で叫び、三人の方へと突撃してきた。
「「「ひぃ!」」」
殺されるかと思ったが、その直前、マシャがバグダムドの攻撃を受け止めて、
「貴様の相手は私だ」
そう言った。
三人はなんとか死なずに済んだ。
「……や、やっぱ私達も退散しよう」
「そうだな」
「……う、うん」
心臓が縮むような思いをした三人は、決闘場を出ることにした。




