三十一話目 決闘2
「さすが俺様の娘だ。なかなか強いではないか」
「私の強さは貴様の血を引いているからではない。師匠の教えのおかげだ」
マシャはバグダムドを睨みながら言い返した。
「お前を相手にするなら、俺様も剣を使った方が良さそうだな」
バグダムドの体から何やら黒いオーラが発せられる。
その後、バグダムドの目の前の地面に、魔法陣が描かれる。その魔法陣から、禍々しい形をした黒い剣が、出てきた。
バグダムドはその剣を手に取る。
「さあ、来い」
そう言って、マシャの方から攻撃するように促した。
「言われなくとも殺してやる!」
そう叫びながらマシャはバグダムドに斬りかかる。
バグダムドとマシャの斬り合いは、凄まじかった。
超高速の剣の応酬。
その様子を完璧に目で捉えられているものは、いなかった。
彼女以外には。
「ワンハンドレット・ライトニングアロー!」
その魔法を唱えたのは、バラシアだ。彼女は、ある程度、二人の動きを目で捉え、バグダムドに狙いを定めて、魔法で攻撃した。
横から雷撃の槍が100本がバグダムドに向かって飛んでいく。
バグダムドに何本か矢が命中。
「ぐっ!」
何本も当たったが、それほどバグダムドにダメージはない。
しかし、電撃に当たったことで、痺れてわずかに隙ができる。
マシャはその隙を逃さず、バグダムドの首を斬りにいく。
なんとかバグダムドが避けるが、無理に避けたせいで体制が崩れる。そこに狙いを定め、バグダムドを斬る。
鮮血が舞い散る。斬ったのはバグダムドの肩。
斬られて血が舞い散った瞬間、観客がざわめき始める。
「暴虐王が血を流しているところ初めて見た」「これはもしかしていけるのか?」「あの雷撃を放った子、あの子もドラゴンじゃないか」
バグダムドの死を期待する観客にとって、ついに殺してくれる者が現れてくれたと、期待感が膨れ上がっていた。
「あなたは……」
マシャないきなり現れた自分と同じドラゴンハーフの登場に驚いた。
「一緒にあの男を倒しましょう。私たちの目的は同じです」
「それはどういう意味だ?」
「私も母親であるメレサ・サーナルドを助けてに来たのです」
「母親……? まさか」
「はい、私の名は、バラシア・サーナルド。おそらくあなたの姉です」
「あ、姉!?」
マシャがそう驚いた時、
「飛び入りか?」
肩から血を流しながらも、平然そうにしているバグダムドがそう尋ねた。
「ダメでしたか?」
「いいや、ダメじゃないさ。しかし、お前もあの女の娘か。お前は俺様の血を引いているわけではなさそうだな。くっくっく、かなり綺麗な顔をしているじゃないか。お前の方を犯してやろう」
下卑た表情でそういうバグダムドを、バラシアはゴミを見るかのような目で見る。
「とりあえず詳しく話すのは、アレを殺してからにしましょう」
「そうだな」
「私は魔法を使うのが得意なので、後衛から援護をします」
「了解。前衛は任せて」
2対1での決闘が始まる。
「あのー、私たちただ見てるだけでいいの?」
決闘様子を見ていた、ミナが、アイシャとレミに尋ねた。
「でも、アレに入って行けって言われても」
「……無理だよな」
レミとアイシャはそう返答した。
はっきりいって、あまりにも常人離れしている速さだ。
彼女たちは結構実力を持ってはいるのだが、それでもあれは無理だとぱっと見で判断することができた。
「でも、見てるだけってのもなー。ペレスさん探しにいくとかした方がいいんじゃない?」
「どこまで飛ばされたのかわからないのにか」
「正直、無駄足になる可能性、大よねー」
「じゃあ、本当に見るだけなの?」
「ミナお前、色々回復魔法が使えたよな。傷を治すものからマナを回復させたり、スタミナを回復させたりする魔法だ」
「それで支援すればいいのわね」
「そっかー。……あれ? そのあいだ二人は何しているの? どっちとも近接戦闘専門だよね」
「わ、私はお前を目の前でガードしておく。攻撃が飛んできたりしたら危ないからな」
「アタシも、それ。ミナちゃんはこのアタシが守るわ!」
「……あの……何もしない体のいい言い訳に聞こえるんだけど……気のせいかな」
「「気のせい!」」
「そう……わかった。私は回復魔法でバラシアさんと妹さんを援護するわ」
こうして、3人はバラシアとマシャの援護をしに行こうとする。
「我はここで見ておくかのう」
とメオンはかなり余裕の態度で観戦していた。
「あ、メオンちゃんも戦おうよ」
ミナがそのメオンのようすに気付き声をかけた。
「まっぴらごめんじゃ」
「えーなんでー」
「面倒だからじゃ」
「本当は怖いんじゃないの?」
ミナは挑発するようにそう言った。
(おいおいミナ。さすがにそんな手に引っかかるわけないだろ)
とレミは呆れたような表情を浮かべながら、そう思っていたが、
「なんじゃと? 誰が怖がっていると?」
メオンがそうミナを睨みつけながら言った。
(ええ!? 意外に乗ってきた!?)
「メオンちゃんだと。暴虐王があまりにも強くてビビっているんでしょ」
「我は千年に一度の天才だぞ。たしかに奴は多少はできるようだが、この我の敵ではないわい」
「本当かなー怪しいなー」
「本当じゃ! 証拠を見せてやる!」
メオンはそう言って戦いに参加することを決めた。
意外とちょろいんだなーと、レミ、アイシャ、ミナは思った。




