十話目 司祭
「こんにちは、私が司祭のグラハムです。何かお悩みという事ですね。私がお話を聞きましょう」
グラハム司祭のもとへ俺は案内されて、第一声そう言われた。
さっそく呪いについて相談したい所だが、一つ気になる事がある。
「何で壁越し?」
何故かグラハム司祭の顔が見えないよう、壁越しになっていた。
壁の下に小さなが穴が空いているので、会話はしやすいようになっている。
「壁越しの方が相談しやすいと思っているのでこうしておりますが……」
「そうか? 直接の方が話しやすいと思うのだが。別にいいけど」
壁の前に椅子がおいてあったので、それに座りながらそう言った。
「では、悩みをお話ください」
悩み? 呪いを言えという事か?
「死にたいけど、死ねないのだ」
「……それは、何かお辛い事でもあったのでしょうか?」
「えーと、死ねない事が辛いんだけど」
「はい? 何かお辛い事があって自殺したいけど、出来なくて辛いと言う事ですよね? ですので、その自殺したい理由を教えてほしいのです」
「いや、違う違う。死ねない事そのものが辛いのだが」
「……??」
うーん、この司祭、話の分からんやつだな。
あのシスターは俺の意図をすぐに読み取ってくれたのに。
伝え方が悪いような気もするから、もう少し分かりやすく説明するか。
と俺がそう思って、いい直そうとすると、
「とにかく自殺はいけません。やめるべきです。いいですか、トルギャン教の創始者、我らが父、レスペ・トルギャンもおっしゃっておりました。命は神より賜りしものだと。それを蔑ろにするものは、神から裁きを受け地獄に落ちることになると。自分の命は大事にしてください。辛い事があっても、いつか笑い飛ばせる日が来るはずです」
そのレスペ・トルギャンっての俺! 適当に本名を並び替えて名乗った名前!
しかし、そんな教えを言っていたのか。実にけしからん教えだな。
今からでも自分がトルギャンだと名乗り出て、不老不死になったら大変だから、皆、50くらいになったら自殺する事って教えに変えようかな。
今更無理か。とりあえずこの司祭の誤解を解かないと。
「司祭、お前は誤解をしている」
「誤解?」
「詳しく話すとだな。俺は不老不死になり死ぬ事の出来ない呪いをかけられたんだ。どうしてもその呪いを解きたくてな」
「はい? 不老不死になる呪い?」
「聞いた事あるか?」
「いや……ちょっとないですねー……」
「そうなのか」
「あの、解呪が目的が来たのですか? ここは相談や懺悔を聞く場所で、解呪はまた違う場所で請け負うのですが……」
「そうなのか? シスターにここに通されたのだが」
「少し手違いがあったようですね。一旦この部屋から出てしばらくお待ちください」
「分かった」
言われた通り俺は部屋から出る。そして、1分ほど待った。
すると、司祭服を着た者がこちらに向かって歩いてきた。
「こんにちは、改めまして司祭のエルダ・グラハムです。あなたが解呪を目的で来た人でいいんですよね」
「そうだ」
俺は答える。この司祭がグラハムか。
青色の長い髪、背は低い。胸がないため恐らく男。顔は(ry。
「お名前はなんと言うのでしょうか?」
「ペレス・ギャントルだ」
「ギャントルさんですね。すみません手違いがあったみたいで」
「別に構わない」
「それでは、解呪をお望みと言うことで、私についてきてください」
グラハムはそう言って、歩き出す。俺は付いていく。
「女性の司祭は珍しいと思われたかもしれませんが、私は呪いには結構詳しいので安心してください」
「女性? お前、男ではないのか?」
「え? あのー女性ですけど……すみません初めて間違えられて物凄く驚いております。何故、私が男性だと思われたのですか?」
「胸がないからだ」
「なんですと?」
「胸がない奴は男だと判断しているから間違えてもしかたない。むしろ胸がないお前が悪い」
「とんでもないこと言ってますねこの人。あのー、私は司祭ですのでその程度で怒りはしませんけど、ほかの人にそう言った発言はやめたほうがいいですよー?」
笑顔を引きつらせながら、グラハム司祭は言ってきた。
「しかし俺の目では胸で判断するしかない。そもそも女は胸があって当然だろう。むしろないものはどうなんだ? 女と名乗る資格があるのか? ないものはこれから男と名乗ったほうがいいのでは?」
「またまたとんでもないこと言い出しましたよー。さすがの私もイラついてきましたよー」
「まあ、今のは冗談だ。とにかくお前が女だという事は分かった。胸のない女だな」
「一言余計です。あなたには人をイラつかせる才能があるみたいですね」
グラハム司祭は眉をピクピクとさせている。
しばらく歩いて、解呪するための部屋に辿りつく。
その部屋の中に入る。
部屋の中には色々な魔道具や本が置いてあった。これらで解呪を行うのだろうか。
「ここで解呪を行います。まず解呪料金として金貨2枚いただきます」
「金を取るのか」
「ええ。相談や懺悔は無料ですが、解呪は有料です。収入がなければ大聖堂もやっていけませんので」
「失敗したらどうする?」
「失敗したら半分お返しします」
金貨1枚は確実に取られるのか。
いっぱいあるからいいか。
俺は金貨袋から2枚金貨を取り出して、グラハムに渡した。
「では、解呪を始めますが、知らない呪いなのでまずは詳しく調べてみる必要があります。……先ほど不老不死になる呪いをかけらとおっしゃってましたが、不老不死とは一聞すると悪い事のように聞こえないのですが、それは本当に呪いなのですか?」
「間違いない。悪く聞こえないのは、お前が不老不死についてよく知らないからに過ぎない」
「そうですか。どういう状況でかけられたのですか?」
俺は呪いをかけられら状況を詳しく説明した。
「魔女……ですか……なるほど……その呪いをかけられたのはいつになりますか?」
「1万年前だ」
「もう一度おっしゃっていただけますか?」
「1万年前だ」
「……つまりあなたは1万年生きていると?」
「そうだ」
「……な、なるほど」
グラハム司祭は引いているという感じだ。たぶん俺の言う事を信じてないな?
「ま、まあ、とりあえず、これを使って呪いについて調べてみましょう」
「これ?」
グラハム司祭は、部屋に会った棚から何かを取り出す。
水晶玉みたいだ。
「呪いの種類、強さがこの水晶玉を使うことで調べる事ができます。初めての呪いは解くのが難しいかもしれないので、追加料金として金貨2枚ほど頂く事になりますがよろしいですか?」
「構わない」
「では調べます」
グラハム司祭は水晶玉に手をかざして、呪いについて調べ始めた。