第2の追う者
第2の追う者
当初、警察は暴力団同士の抗争と言うことで捜査を進めていたが、国会議員が同じ方法で殺害されたので、大々的な捜査本部が設置された。
6月26日
捜査員が捜査の状況を報告する
「今回の事件は、両方とも、飛んできた包丁が首や胸などに刺ささり死にいたっています。」
警視庁の佐々木係長が会議を進めていく
「包丁の出どころは」
「はい、量販店で販売されていて関東地区の多くの店舗で扱われているものです。」
「出どころから絞り込むのは難しいか。次、鑑識の結果は」
「はい、すべての包丁に犯人のものと思われる指紋は付いていませんでした。犯人は布の手袋などをしていたと思われます。あとはよほどナイフ投げの技術がなければあのように刺さらないんじゃないか とのことです。」
「サーカスなどか?そちらの関係者も当たってくれ 次」
「はい、犯行は昼間の比較的人通りの多い時間帯や、人の多く集まった場所で行われているのですが、目撃者が出てきません。」
「目撃者無しか」
「古閑 議員に関しても演説中で包丁が刺さるのは多くの人が目撃しているにも関わらず、包丁を投げた人物や怪しい人物をみたものはいませんでした。」
宮本課長が口をひらく
警視庁の捜査一課 課長 宮本俊一郎 警視
彼は若くして捜査一課の課長になった世間が言うキャリアの中でもエリート中のエリートである。
若くして捜査一課の長になった、総勢200を超す捜査員の長なのである。
「皆さん、犯人がどのような方法で殺害したかは、現状わかっていません。しかし、両方の犯行現場に足を運んでいるのは間違い無いはずです。両方の現場に赴いた人物を洗い出してください」
佐々木係長は大きな声で
「それでは犯行現場やその周りの監視カメラを確認し共通する人物を洗い出すように」
「はい!」
一斉に刑事たちが部屋を出ていく。
課長のもとへ一人の刑事が近寄った
「失礼します。ある出版社の記者から情報が寄せられたのですが?」
と言いながら、村沢が持ってきた資料を手渡した。
佐々木が口を開く
「課長、こんな馬鹿げた話がありますか?」
宮本は、もらった資料を読みながら答える。
「確かに馬鹿げた話ですが、こう考えると辻褄が合うのも確かです。しかしこの石神という男は今回の犯人ではありませんね。もう一人犯人がいますね。」
さらに宮本は話を続ける。
「推測ですが実行犯は東京に住んでいるはずです」
佐々木が眉間にしわをよせながら
「わかりました。その線で捜査させます。石神を任意で引っ張りますか?」
「いや、まだやめておきましょう。現状の捜査を進めてください。」
「はい、わかりました」
宮本はひとりで会議室に残り捜査資料を眺めていた。
犯人を逮捕するには現行犯での逮捕か、あとは状況証拠を積み重ねるしかないか。果たして状況証拠だけで立件できるのか?
6月29日
三人目の被害者が出てしまった。会議室は思い雰囲気に包まれていた。
捜査員の刑事が宮本と佐々木に報告をしていた。
「東京都 港区の路上で 暴力団組長 太田 昭宏 さん(59歳) が 殺害されました。事務所に入ろうとした時、いきなり首から血が噴き出したとのことです。」
「検視の結果、首には鋭利な刃物で切られた傷があったとのことです。おそらく出血によるショック死だと思われますが、司法解剖を行うために現在手続き中です。」
続けて佐々木が
「凶器はどうだ」
捜査員が
「いいえ、現在周辺を調査中ですがまだ見つかっていません」
「周辺の聞き込みを行いましたが、不審な人物も目撃されていません」
「近くにいた同じ組の者たちも取り調べを行いましたが凶器になるような血のついたナイフ等を所持している者はいませんでした。」
宮本が
「三件の現場に共通する人物の洗い出しをお願いします。」
佐々木係長は大きな声で
「それでは引き続きの捜査を進めるように、警察の威信にかけて早期の犯人逮捕に尽力を尽くすようにお願いします。」
「はい!」
一斉に刑事たちが部屋を出ていった。
佐々木が
「全く手掛かりがありません」
宮本が
「そうですね。殺害方法も判っていません。本当に超能力などあるのでしょうか」
佐々木が
「さあ、私は信じませんが」
7月3日
4人目の被害者が出てしまった。
「東京都 大田区の公民館で 自由民政党の井吹議員が 殺害されました。公演中、壇上でいきなり首から血が噴き出したとのことです。」
「検視の結果、首には鋭利な刃物で切られた傷があったとのことです。おそらく出血によるショック死だと思われます。前回の組長殺害と非常に犯行が似ています。」
続けて佐々木が
「凶器はどうだ」
捜査員が
「いいえ、現在周辺を調査中ですがまだ見つかっていません」
「周辺の聞き込みを行いましたが、不審な人物も目撃されてありません」
「公演を聞きに来ていた人達に聞き込みをしましたが怪しい人物の証言は得られませんでした。」
佐々木係長は大きな声で
「それでは引き続きの捜査を進めるように」
「はい!」
一斉に刑事たちが部屋を出ていった。
宮本が
「今度殺されるのは国会議員の確立が高いですね」
佐々木が
「順番から行けば組長じゃないですか?」
「もし、突然超能力を手に入れたらどうしますか?誰にも見られず人を殺せるような能力」
「はい?」
「推測ですが、組長で能力のテストをしていたのでしょう。その上で国会議員を殺害している。もしそうなら証拠品も残さずに殺害ができたわけですから、これ以上テストは必要ないはずです。」
しばらく宮本は考え込んで
「今洗い出しているリストから日曜日が休みのもので、その中に女性か男性でも比較的非力な者がいないか調べください」
佐々木が
「どうしてですか?」
「殺害方法がきれいすぎます」
7月6日
ようやく捜査に進展がみられてきた。
刑事が捜査状況を報告する
「犯行当日、太田組長が殺された現場の道を挟んだ反対側の喫茶店で確認された人物がいました。 東東新聞社 政治部の記者 川口 泰子 34歳 です。」
他の刑事が続けて報告する。
「取材で殺害された2人の国会議員の近くにいました。現在、彼女以外では条件に合う人物は見つかっていません。」
刑事が続けて報告する。
「ちょうど前日に川口の写真を持ったフリーのジャーナリストと名乗る物が川口のことを聞いていたそうです。」
宮本課長がしゃべりだすと周りは静かになった。
「ほかに条件に合うものがいないかもう一度調べてください。あと、川口 泰子が例の包丁を買っていないか洗ってください。」
宮本は少し声のトーンを落として話をした。
「今後、私からの指示があるまで川口 泰子に接触は避けてください。危険です。」
佐々木係長は大きな声で
「それでは2班に分かれて洗い出しをすすめるように」
「はい!」
刑事たちが部屋を出ていく。
佐々木が話しをする。
「犯人は 川口 泰子でほぼ間違いないですか」
宮本が
「証拠がありませんね」
「そうですね。」
宮本は捜査資料に目を通しながら考えをまとめていた。
7月9日
佐々木が
「あれほど危険だと忠告しているのに演説会はやめないそうです」
宮本が
「今回も川口 泰子はきますね。川口 泰子を重点的にマークしてください。」
佐々木が
「はい、手はずは整っています。」
警察の警護の甲斐もなく志村議員は殺害された。
しかも、川口に不審な動きは一切見られなかった。
宮本は捜査資料を見ながらこの事件の立件の仕方を考えていた。
7月13日 夕方
刑事があわてて会議室に入ってきた。
「川口泰子と 石神圭介が 公園で会っています。」
「何?」佐々木が大声を出すと
「私が向かいます。」宮本はそのまま急いで会議室をでていった。
佐々木も急いであとを追った。