付け焼き刃もないよりマシ?
前回のあらすじ
天使回
8:01 am 第1の町・闘技場
5日目にして、遂に闘技大会の日である。いつも通り朝ごはんをカイたちと食べ、軽い作戦会議をしてログインした。
ちなみに今俺は、闘技場にいる。昨晩いた海岸からはじまったのだが、闘技場を探そうとしたところにインフォが届いたのだ。内容はずばり、闘技大会についてである。細々としたルールを読み飛ばした後、下にあったボタンは参加承諾、またそれに付随して転移するというものだった。その場にいたカイに聞けば、参加を承諾した人は闘技場にすぐさま転移できるそうだ。方向音痴の俺にすれば、とても嬉しかった。
と言うわけで闘技場内に話は戻るが、転移した先は円形のグラウンドだった。遠くを見渡せば、観客席もきちんとある。現実で言うところの競技場だろう。
俺の周りには同じように転移してきたプレイヤーが集まってきている。全員、装備もいかにもゲーマーという感じで、とにかく強そうである。それに比べて…と、俺は自身を見下ろす。久しぶりに腕を通した装備は、ズバリ燕尾服である。さらに頭には重さをわずかに感じさせるシルクハットが鎮座している。やっぱり俺だけ浮いてないか…?
「どうした浮かない顔して。緊張でもしてるのか?」
あまりにも他と服装が違う事に嘆息しているとカイが寄ってきた。カイの装備はまさに戦士…いや騎士といった風で、いるだけで周りに威圧を与える。俺の杖ではどうあっても倒せそうにない気分になる。
「いや、俺だけ場違いな気がしてな」
おれがそう言うと、カイは心底不思議そうに首をかしげる。
「なんでだ?かっこいいじゃないか。特にシルクハットとかさ」
カイの感性はわからん…
8:10 第1の町・闘技場観客席
その後すぐに開会式が始まり、詳細な説明も行われた。
今回の大会の参加者は480名だそうだ。βテストに参加した人数は500人だったはずだから、ほぼ全員参加している計算になるな。それだけ、この初めての試みにみんな興味があるということだ。
さて、この大人数を、まずは8つの集団…ブロックに分けるそうだ。それぞれに割り当てられた呼称はAブロック、Bブロック…Hブロックだ。ちなみに俺はBである。次にこのブロック内で生き残りをかけた集団戦を行い、生き残った4人ずつ、計32人が決勝トーナメントに参加できるとか。狭すぎるにも程があるだろう。まず予選通過は無理…いや、最初からそう思っていてはダメだな。勝てるかどうかは俺の長所をいかに引き出すかにかかっている…はずだ。
昨日の夜や今日の朝、今日の為に色々考えて来たのだ。ずばり、どうすれば勝てるか。
俺の欠点を挙げるなら、ステータスが極振りしている人に劣ることか。要は、体格が大きく力の強い人にどうやって勝つかということだ。
確かに正面から殴り合った時、俺はどうやっても勝てない。しかし相手の土俵に立つ必要はないのだ。例えば受け流しながら魔法を撃つ。そうすれば、相手はダメージ覚悟で殴り続けるか、魔法に対応する為注意が逸れる。そこに俺が突きを入れれば有効打になる…はずだ。そこで出てくる問題は果たして受け流せるのかだが…後でカイたちに稽古つけてもらおうかな。
「あっあれカイじゃない?さすがカイだよねー」
ゆきの声で会場に注意を戻す。現在Aブロックの予選が行われているのだが…
「どれがカイだ?みんな似たような装備でわからないんだけど」
まだゲームを開始してそんなに日が経っていないこともあるのか、みんな似たり寄ったりの鎧を身につけていて区別がつかない。
俺が聞くと、ゆきはあれ、と一際活動的に動いている鎧を指差した。うーん、確かに言われればカイのような気がするが…
「カイってあんなに強いのか?」
その鎧はいっそ芸術的なまでに複雑な動きで四方八方へ動き、周りの相手を文字通りなぎ倒していく。あれって無双っていうのか?
「カイは優勝候補の1人なんだよ!知らなかったの?」
そう聞く間にも地上に立つ人数はどんどん減っていく。ん、優勝候補とかどうやって決めているんだろうか?
「そういう情報には疎いからなあ」
ちょうど戦闘終了を告げるブザー音が鳴る。見れば既に地上に立っているのは4人だけであった。言うまでもなくカイもそこに含まれる。
『Bブロックの選手は会場に集合してください!試合は15分後に行われます』
インフォが届く。さて、俺の番か…
俺は腰を上げ、たこ焼きの残りーー売店で買ったものだーーをゆきに預けた。
「ソバタってBブロックだったっけ?」
ゆきの問いにおう、と返す。
「いってら!」
無邪気に手を振るゆきに振り向き、手を振り返す。
「ああ。全力でやってくる」




